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Milk Shakies〔ミルクシェイキーズ〕  作者: 青紙 ノエ
 気弱な男子と告白推進委員会の大人たち 
5/26

Should I stay or should I go

 

「こちら2-G組の教室前。これから4番隊組長の捜索にあたる! オーバー!」

 と心の中でつぶやく私は、砂川()()()である。


 さすがに上級生の教室は 緊張するぞ!

 組長のチェックに来たのはいいけど、誰が誰だか、わからんちんだな…。

 せめて、桐弥とうや君がいれば、助かるんだけど…。


「どうしたの?」


 ビクッ!

 突然、後ろから話しかけられ、全身で驚いてしまった私。 振り替えると、サラサラな黒髪の、美人なお姉様。良かった! この人は優しそうだ! 美人に悪い人はいない筈だ!


「あっ、あの…。桐弥君…。市谷先輩に用事があって…」

 私がお姉様にそう言うと、お姉様の表情は豹変した!


「はぁ?  桐弥に用事? 」

「えっ? おっ、お姉様? 」


 思わず声に出てしまった…。


「私は貴女のお姉さんじゃないけど? まぁいいわ。桐弥ー!  1年の女子が用事だって!」

 すると、桐弥君は 気だるそうに、教室から廊下へと、歩いて来た。


「一葉?  一葉は2年だろ?」

「ちょ! 桐弥君! 私、そんなに小さくないから!  私を視界に入れて!」


 私を視界に入れてくれた桐弥君。イェイ!


「あ?  こな? お前、ロシアに行ったんじゃねぇの?」


「ちょっと桐弥、誰? この娘は!」


 お姉様? もしかして、桐弥君の彼女さんですか? 激おこプンプン丸状態? コリャマズイ展開だな。


「この娘は 葵君の妹の、砂川こなただよ。どうした? 何か用事か? てか、佐之助も1年にいるけど、会ったか?」

「会ったけど、アイツさー! …まあいいや。それよりも、土曜日の大会頑張ってね…。っと言いに来たんだけど、その…。 あと…は別にいいや! それじゃねぇー!」


 私はとりあえず、逃げた。怖いよ…。 お姉様、怖い…。 私は 階段の踊り場まで走り抜け、息を整えた。1つ年上というだけで、あの威圧感、「美人の貫禄ってすごいな…」私は独り言をもらす。


「何か事情がありそうね?」

 振り向くと、先ほどのお姉様!


「い、いえいえ! 何も…無いです…」

 私は下を向いてしまった。


「桐弥に用事じゃ無いんでしょ?」

 見透かされている?


「お姉様!」

「いや。私、貴女のお姉さんじゃないんだけど」と言いながらも、少し照れた様子のお姉様。

「あの…。すみませんです…。何とお呼びすればいいですか?」

「私はK組の、樋口 一葉かずは。その…。桐弥とは 別に…。まだ…。あれなんだけど…。さっきは…何か嫌だっただけで…。ごめんね…」


 かっ可愛い! 一葉お姉様、カワユスです!


「いえ! こちらこそ、すみませんです!  実は胡桃ちゃん…。篠原先輩にちょっと、用事があったのですが。色々と事情がありまして…」

「あー。なるほどね。こなたちゃんが、胡桃の相談相手でしょ? 齋藤君を見に来たのかな?」


 最後を小声で言う仕草も美人だ! この人は 最高だ! きっと、桐弥君とは最高のカップルになる!


「えへへ…。胡桃ちゃんが好きになる人だから、気になってしまいまして」

「こなたちゃんは優しくて可愛いね。そうそう私ね、齋藤君とは けっこう話するよ。同じ偉人名同士で、同じ美化委員だからね」

「あっ! そうか! 一葉お姉様は 樋口一葉さんと同じ字なんですね!」

「あ、あの。お姉様って、恥ずかしいんだけど…」


 えっ? ちょっ? お姉様? 照れた様子が、本当に素敵なんですけど!


「桐弥君は 私のお兄ちゃんみたいなものだから、その彼女の一葉さんは 一葉お姉様ですよー!」

「そんな…。まだ…。付き合うとか…。無いし…」


 キャー! その照れ具合ストライクー! もう無理! 大好き!


「一葉お姉様!」

「キャッ!」


 私は 思わずお姉様に抱きついてしまった。「キャッ!」という声も可愛いんですけど!


「ちょっと、こなたちゃん? どうしたの?」

「あっすみません。つい、テンションが上がっちゃいました」

「えっと…。何のテンションかわからないけど、明日の放課後に、中庭で美化委員の仕事があるけど、よかったら来てみたら?」

「はい! 伺います!」

「うん。待っているね」

「それでは一葉お姉様、失礼致します!」


  階段をかけ上がる、こなたちゃん。可愛いけど、ちょっと不思議ちゃんかな?  まあ、妹みたいなものだし? な、なぁんてね、アハハ。


「一葉?」

「りっ、李依?」

「なんだ今のロリッ娘は? 抱き合っていたけど、彼女か? 今度、抱き合っているところの写真を撮らせてもらえないか?」

「やめて…」




 * *




 放課後…。


 俺は日直のため、日誌を書いていた。もう1人の奴は運動部で、今週は大会のために欠席をしているのだ。

日誌を書き終え、帰り支度をしていると、低い声で話しかけられた。

「市谷君。」

「ん? ふぉあ!」

「ふぉあ! って…」


 話しかけてきた、強面の男子。彼は神楽坂かぐらざか瑞穂みずほという。

 ゴツい体格と、北斗の拳に出てくる悪者のような顔で、下級生どころか、上級生からも一目置かれている。


「瑞穂、頼みがある。突然のお前の顔は心臓に悪い、やめてくれ」

「ああ?」

「だから! 凄むなよ! 恐いんだって!」

「アハハ! スマンスマン! それより、ちょっと話があるんだけど、いいか?」

「ああ、かまわないけど? 日誌を福田の所へ持っていってからでもいいか?」

「それじゃ、中庭で待ってるよ」


 俺は職員室に日誌を持って行き、瑞穂に言われた中庭へと行った。1人ベンチに座る瑞穂は顔のせいか、体格のせいか、悪巧みをしているようにも見える。

 俺は瑞穂の座る前のベンチに座った。


「どした?」俺の問いに、なかなか話を切り出さない瑞穂。

「何か困った事でもあるのか?」と言う俺の質問にも、モジモジとしている。綾乃が俺に言う「キモっ!」ってやつは こういうことだな。そう思う俺であった。

 だが、突然話は始まる。


「好きだ!」

「はぁ!? ノーセンキューだ!」

「お前じゃない!」

「わかっている」


 なんだ? 今のクダリは…。

 またもや、俺と瑞穂は沈黙となる。若干、めんどくさくなった俺は 言った。

「なぁ、瑞穂。好きな人がいるのか? 彼女もいねぇ俺じゃ話にならねぇぞ?」

 すると、瑞穂は 突然立ち上がった!

「お前! 樋口さんがいるじゃないか! 学年中が知っているぞ! 朝も帰りも、一緒じゃねぇか!」

「学年中が知っているの?」


 思わず、情けない声を出す俺に対して、瑞穂の攻撃は 追撃を行う。


「俺は樋口さんはタイプじゃないけど、上級生や下級生からも人気だぞ?  はっきり言って美人だと思うぞ?  俺はタイプじゃないけど!」

「はあ? お前のタイプは関係ねぇ! 一葉の事を悪く言うんじゃねぇよ!」

「別に、悪くは言ってねぇだろ?  タイプじゃねぇだけだ!」

「それが悪く言ってんだよ!」


 すると、後ろから、か細い声が。


「と、桐弥? どうしたの?」

「か! 一葉?」

「はい! 一葉です!」


 え? ちょっ! 何? その返し? 可愛いんだけど!


「一葉?」

「はい! 一葉です!」


「お前ら、爆発しろ…」

「なんだと瑞穂!」


「ちょっと、二人ともどうしたの?」


 一葉が可愛いすぎた…。なんて、言えねぇわ…。


 その後、俺たちは 一葉も交えて、瑞穂の恋愛相談を聞くことになった。


「はぁ。それで?  その名前は言えない副部長さんに、コクりたい訳だなな?」と言う俺に、瑞穂はプチ切れ状態で返す。


「副部長なんて言ってねぇし!」


 めんどくさ…。


「副部長って、菅原さんだよな? のーんびりした感じの。 俺、家が近所でさ、小学校の時に同じ通学班で、何度も遅刻するところだったのを覚えているけど」


 俺の一言に、フフっと笑う一葉。そんな一葉に、瑞穂は嫌悪感を出している。


「まあ、小学校の時の話だからな。今はさすがに」


「あれー? 神楽坂くーん? みんな待ってるよー?」


 突然、聞こえる気だるい声。まさかの本人、菅原先輩の登場である。俺は思う、変わっていない…。

 この人は 小学校の時から、変わっていない…。

 おそらく、この人の時間は 通常の3倍、時の流れが遅い…。

 当たり前だ! 通常の3倍、他人よりも速かったら、シャアザクではないか! シャアザクの逆バージョンだ! 逆シャアだ! あっダメだ!

 「それじゃ、逆襲のシャアじゃねぇか!」


「桐弥?  どうしたの? 逆襲の何?」


 一葉さん。今のは聞こえていないフリをしてください…。


「ところでだ!  菅原先輩、 俺の事を覚えていますか?」


 菅原先輩は 俺の質問に、考え込んでいる。人差し指を顎あごにあて、右斜め上を向き。勿論、右斜め上を向いているのは 目だけだ!


「ちょっと! いのりちゃん! 俺だよ! 市谷だよ!」

「あー桐弥君ねー。演劇部に入るの?」

「入りません」

「えーショックー」

「あなた達?  楽しそうね。何の話かな? 先生もまぜてくれない?」


 ここで、美梨さんの登場である。美梨さんは 演劇部の顧問なので、なかなか顔を出さない瑞穂を探しに来たのだろう…。


「それじゃ、瑞穂。そろそろ部活だろ?  この話はまた今度」


 俺と一葉は帰ろうとしたが、美梨さんに、呼び止められてしまった。


「先生もすぐに行くから、先に部室に行ってもらえるかな? 私はこの二人にお話がありますので」


 美梨さんに言われ、菅原先輩と瑞穂は中庭を後にした。そして、一葉と俺に美梨さんから、驚くことを言われた。


「樋口さん、私は土曜日に桐弥君の応援に行くことにしました。綾乃も、お母さんも行きます。悩みましたが、行くことにしました。桐弥君は 私達に見られたくない。と言っていましたが、関係ありません。私が桐弥君の応援をしたいので、行くことにしたのです。これは決定事項です。家では なかなか、話をしてもらえないから、今、お話をしました。良かったら、樋口さんも一緒に行きませんか?」


 突然の事に、俺も一葉も驚いている。

 何なんだ? この人は! 空気読めねぇのか? ハッキリ言ってやるか?


「桐弥。私も行っていい?」

 

 不安そうに俺に聞く一葉。そんな顔をされたら、断れないだろ…。

 はぁ、まったく…。


「俺。今回、葵君に怒られると思う…。今まで、葵君と喧嘩なんてしたことなかったけど、たぶん、メチャクチャ怒られると思う…。その時は助けてくれる…かな?」


「うん任せて!  ねっ先生!」

「私も桐弥君を守ってあげるからね」

「それじゃ…。応援、お願いします…」



 あれ?

 桐弥?

 私、たぶん間違った?

いつもの桐弥じゃない…。

 桐弥の、触れちゃいけない部分に、触れたんだ…。


 どうしよう…。

 桐弥…。




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