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オートマタ召喚

強烈な光が収まると、利雨と菊池の視界に、今まで見たことのない奇妙な物体が飛び込んできた。それは、白い煙と残光がまだ漂う空中に、ゆっくりと回転しながら浮かぶ白い球体だった。

「な、なんだ、あれは…?」

利雨は、驚きと好奇心に満ちた目で、その球体をじっと見つめた。

直径1メートルほどの球体は、真っ白で滑らかで、ぼんやりと光を放ち周囲を淡く照らしている。下部からは短い丸い手足が4本、ちょこんと生え、不規則に動いていた。まるで意思を持っているかのようだった。

そして、球体の上部には、黒曜石のように光る二つの目が、利雨たちをじっと見つめている。その下には、わずかに開いたり閉じたりする横長の口らしきものがあった。

「見たこともない物体でございますな… 妖物か…?」

菊池は、警戒心を露わにし、刀に手をかけながら、球体との距離を保っていた。

「…いや、違う気がする。何か… 知性を感じる…」

利雨は、不思議と球体から視線を外すことができなかった。

「しかし、油断は禁物ですぞ、若様。 あのような怪しげなものが、この廃坑に現れたということは…」

菊池は、利雨の言葉にも、なお警戒を解かなかった。

「…ああ、わかっている。だが… 何か…話しかけてみたい気がする…」

利雨は、球体から不思議な魅力を感じ、その正体を知りたいという衝動に駆られていた。



白い球体は、短い手足を器用に使って、空中を滑るように利雨たちの前に移動してきた。その動きは、まるで無重力空間を漂うように、滑らかで静かだった。

黒曜石のように光る二つの目が、利雨たちに向けられる。その下の口がパクパクと動き、そこから機械的な合成音声が流れ出した。

「こちら、汎用型オートマタ、識別番号037です。はじめまして」

「な、なんだって…?」

利雨は、思わず声を上げた。

「話した!? あの球体が…!」

菊池もまた、驚きを隠せない様子だった。

利雨は、球体が言葉を話したことに驚きながらも、真剣な表情でその言葉に耳を傾けた。菊池は、依然として警戒を解かず、刀を握りしめたまま、球体の一挙一動を見逃さないように注視している。

「所有者を探知しました。所有者登録をお願いします」

オートマタは、機械的な声で告げた。

「所有者登録…?」

利雨は、首を傾げた。

「若様、危険です! 安易に近づいてはなりません!」

菊池は、利雨を制するように声を上げた。

「だが… 話を聞いてみないと、何もわからないだろう…」

利雨は、菊池の言葉にも、一歩も引かなかった。

「しかし…」

菊池は、なおも反対しようとしたが、利雨はそれを遮るように言った。

「大丈夫だ、菊池。何かあれば、すぐに逃げる。なあ、オートマタ、とやら。所有者登録って、一体どういうことなんだ?」

利雨は、オートマタに問いかけた。オートマタは、黒曜石の目をゆっくりと点滅させ、再び口を開いた。

「所有者登録とは、このオートマタの所有権をあなたに帰属させる手続きです。これにより、私はあなたの指示に従い、様々な作業を行います」

オートマタは、機械的な声で説明を続けた。利雨は、球体が言葉を話すことに驚きながらも、真剣な表情でその言葉に耳を傾ける。

「様々な作業って、例えばどんなことだ?」

利雨は、オートマタの能力に興味を持った。

「私は汎用型オートマタですので、家事、警護、生産活動など、多岐にわたる作業が可能です。あなたの指示に従い、あらゆる面でサポートいたします」

「へぇ、そんなに色々なことができるのか…」

利雨は、ますます興味を深めた。

「若様、本当にそんなことができるのでしょうか? 騙されているのでは…」

菊池は、依然として警戒心を解かず、オートマタを疑いの目で見ている。

「私は、所有者に危害を加えることはありません。ご安心ください」

オートマタは、菊池の言葉に反応するように、静かに告げた。

利雨は、オートマタの言葉を信じようと決めた。

「そうか。菊池、大丈夫だ。こいつは、俺たちの役に立ってくれる」

「しかし、若様…」

菊池は、まだ不安そうだったが、利雨はすでに決意を固めていた。

「決めた。俺は、こいつを所有者登録する」

利雨の言葉に、菊池は驚きながらも、それ以上反対することはできなかった。利雨は、無能の烙印を押されたこのスキルが、今や驚くべき存在を生み出したことにすっかり夢中になっていた。



「では、所有者登録を開始します。まず、所有者様のお名前を教えてください」

オートマタは、機械的な声で利雨に尋ねた。利雨は、少し緊張しながらも、はっきりと答えた。

「小騨白北小丞利雨である」

「小騨白北小丞利雨様、ですね。では次に、所有者様がお望みの呼び名をお教えください。」

オートマタは、淡々と質問を続けた。利雨は、少し考え込んでから答えた。

「呼び名か… そうだな、お前は白い球体だから…じゃあ、『シロ』と呼ぼう」

「『シロ』ですね。了解いたしました。では、シロと登録させていただきます」

菊池は、利雨がオートマタに名前をつけることに驚き、思わず口を開いた。

「失礼ですが、若様、なにも名前まで付けなくても」

「まあいいじゃないか。オートマタというより親しみが持てる。」

利雨は、菊池に笑顔を向けると、再びオートマタの方を向いた。

「シロ、他に何か質問はあるか?」

「はい、小騨白北小丞利雨様。所有者様の目的は何でしょうか?」

「いちいちすべて呼ばなくてもいいぞ。人前では役職名、そうでないときは利雨とで呼んでくれ。」

「承知しました。では、利雨様の所有目的は何でしょうか。」

「そうだな・・・未定でもいいのか?」

「未定であっても構いません。所有目的が明確になった時点で、改めてご指示いただければ、その目的に沿って最適な行動を取ることができます」

シロは、機械的な声ながらも、どこか安心させるような口調で答えた。利雨は、シロの言葉に頷いた。

「そうか。では、今は未定としておこう。何か目的が決まれば、その時は改めて伝える」

「了解いたしました。利雨様。未定ではありますが、現時点においても、警護やお手伝いなど、可能な範囲で指示に従うことができます」

「そうか、それは心強いな」

利雨は、シロの言葉に安堵した。

「しかし、若様…」

菊池は、まだ少し不安そうだった。

「本当に、その… シロとやらは、信用できるのでしょうか? 何か裏があるのでは…」

「菊池、大丈夫だ。シロは、俺のスキルが生み出した存在だ。俺を裏切るようなことはしない」

利雨は、自信に満ちた表情で言った。彼は、シロとの間に、不思議な繋がりを感じていた。それは、言葉では説明できない、確かな信頼感だった。

「それに、もしシロが役に立たなくても、何も失うものはないだろう? だが、もしシロが本当に役に立つ存在ならば、それは、我々にとって大きな力になる」

利雨の言葉に、菊池は納得したように頷いた。

「…そうですね。若様の仰る通りです」

利雨は、再びシロの方を向いた。その後、いくつかの質問に受け答えし、

「所有者登録、完了しました。これより、私はあなたの指示に従います、利雨様」

オートマタはそう言うと、短い手足を器用に使って、空中を滑るように利雨の目の前に移動してきた。そして、片手をぴょこぴょこ動かした。

「握ればよいのか?」

利雨は、少し戸惑いながらも、オートマタの小さな手を握り返した。その手は、人工物とは思えないほど温かかった。利雨は、この奇妙な球体との間に、不思議な絆のようなものを感じた。

「これから、よろしく頼むぞ、シロ」

「はい、利雨様。全力を尽くします」

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