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EXPLORER GIRLS -Children of Sandbox-  作者: 彼岸堂流
9/11

8

【SB7115. Y2751】

【ニューフロンティア 南第3街区】

【ホテル シボニ】


 あまりにも短いG.U.I.L.Dからの査問を終えたファナ達は、拠点とする宿泊施設に帰り、とにかくすぐに食事をし、風呂につかり、思いつく限りの心身が休まる行為を一通りし、もはや家同然に扱うホテルシボニの一等客室で、探索時のそれとは程遠いリラックスした部屋着で、それぞれのベッドに倒れこんでいた。

 しかしながら、誰も寝てはいなかった。

 トリルも、アリッサも、ファナも、ACSと自身遠隔で接続し、街中にいながら探索時と同じレベルでの駆動をして、周囲を警戒していたのだ。

「……うん。大丈夫そうだ」

 トリルは周辺に自分たちの会話の傍受を試みる存在がないことを念入りに確認し終え、半身を起こし、ファナのベッドの方を向く。

「で、ファナは何を隠しているの」

 トリルとアリッサは、査問の終わり近くに見せたファナの目に意味深なものを感じ取っており、こう問うた。

 するとファナは、くっくっと笑い出す。

「いやぁ、二人ほんとすごいよ。あれでちゃんと伝わるんだもんなぁ」

「付き合い長いからね~」

 そう言ってアリッサは、何も言わずワイズマンのACSによる幾重にも防護を張られたインタラクティブな回線を三者の間に繋ぐ。

 ファナは親指を立てて見せて、トリルとアリッサにあるデータを送信する。

「ほんとはすぐにでも渡したかったんだけど、ACSが思いっきりG.U.I.L.Dのサーバーと接続してて音声と映像ログ残っちゃうぽかったから機会なくてさ」

 送られてきたデータを見たトリルが訝しむ。

「……照合コマンド結果?」

「トリル言ってたでしょ、うまくいかなかったら、たまたま得た調査結果をG.U.I.L.Dに取引するだけだって――」

 アリッサとトリルがそのデータを開示した瞬間、二人は同時に息を飲んだ。

 それは、ファナが“片翼”に対して走らせたある照合コマンドの結果が、簡潔に記されたものであり――

 

 ――――照合対象:コードネーム『初めに到りし者』/ACS『サイファー』

 ――――近似率:99.7182%


 その結果はつまり、“片翼”は、ファナが憧れて止まない存在――大塔の前に存在した塔・バベルを最初に攻略した至高のA.E『初めに到りし者』――と、()()()()()()()()()()ということを示していた。

「これってさあ、どういうことなんだろうね」

 ファナのその問いにすぐ答えられるものは、その場にいなかった。



 * * *


 

 ――『初めに到りし者』。

 彼女が纏った武装は『サイファー』と言うクラス名で呼ばれている。

 この『サイファー』は、G.U.I.L.Dのデータベース上ではACSに分類されており、確かに「人型生命体が装備できるフォトン武装」であるものの、実際はACSではない。

 正体は、初めの塔・バベルにて『フォトンドライブ』と共に発見された武装。 

 転じて『サイファー』は、現存する唯一の、人類以外の技術によって作られた、外なる理を宿す装備であった。


 そもそもACSは、人類がこの『サイファー』をもとに開発したことにルーツを持つ。

 当時のACSは、『サイファー』から機能を切り取り、人類でも運用可能にするべくコンセプチュアルな形にしたものだった。

 そしてACSは独自の進化をたどり、『サイファー』にはない機能を新たにいくつも作り出すに至ったが――

 こと単純なフォトン出力量において、『サイファー』の理論限界値を超えるACSはいまだ存在しないと言われている。


 そんな唯一無二の武装である『サイファー』は、『初めに到りし者』と呼ばれた人物のみしか適合することができなかった。

 そして、彼女と共にある日突然消失した。はずだった――



 * * *



「――まさか、“片翼”が消えたはずの『初めに到りし者』だって?」

 疑うような言い方をしたものの、トリルの中で「絶対に違う」と断言できる根拠は存在していなかった。

 ただ、現れた仮説が衝撃的すぎてそう口にしただけだ。

「でも、『サイファー』に翼のようなユニットなんてあったっけ……?」

 『サイファー』はバベル攻略史に、装着者の情報が抜かれた武装のみの外見が記録として残されている。アリッサはそれをもとに真っ当な疑問を口にした。

 もちろん、これについてはファナも承知の上だった。

「見た目は確かに違かったね。でも、あの出力はサイファー独自の対消滅型フォトンドライブだからこそだと思う。ほら、波形なんてほとんど同じなんだよ。それに――」

「待った。そもそも、この『初めに到りし者』の数字はどっから引っ張り出してきたのさ。G.U.I.L.Dのサーバーから引っ張り出そうにも機密レベルが…………まさか」

 トリルがそこまで言って察する。

 ファナはトリルが察したことを察し、わざとらしい笑みを浮かべてみせた。 

「――そ。あたしの『エクスプローラー』のコンセプトは、『サイファー』の後継機。だから読み取ったんだよ、ずいぶん前に。――『エクスプローラー』のブラックボックスから」

「ブラックボックスから!? どうやって!」

「あたしの『最終固有戦術』を応用して、ちょちょいとね。ブラックボックスって、フォトンストレージ技術じゃん? だからこう、ね? 色々とやってみたわけ」

「いつの間にそんな無茶を……!」


 ――ファナのACS『エクスプローラー』は、「『サイファー』の持つ万能性を万人が使用可能にすること」をコンセプトにした、『A.Eの到達点』と言われる代物だ。

 しかしその実、『サイファー』以上のフォトン干渉力をポテンシャルとして得ることで、結果的に『エクスプローラー』も適合者を選ぶACSとなってしまい、当初のコンセプトから大きく逸脱するものになってしまっていた。

 とはいえ、現存するACSで最もサイファーを参考にし、最もサイファーに近いものであることは事実だ。

「あたしはサイファーオタクだからね~。もしかしてと思って、『エクスプローラー』内にそれっぽいの見つけて、あ、これイケるわと思ったらさ。もうすぐやっちゃったよね」

「……呆れた。完璧な越権行為でしょ、それ」

「な~に言ってんの! 自分の命預けてる武装のことを誰よりも知ろうとするのは健全な思考回路だって! まぁ、とにかく――」

 ファナが立ち上がり、トリルとアリッサを見てにっと笑ってみせる。

 その笑顔が示すものが何か、トリル達は幼馴染としてよく理解していた。

「やることはもう、決まったよね」


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