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EXPLORER GIRLS -Children of Sandbox-  作者: 彼岸堂流
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【SB7115. Y2751】

【ニューフロンティア 中央街区】

【G.U.I.L.D管理区域 セントラルガーデン】

【G.U.I.L.D大塔支部 プライマルスクエア ???】




 深い闇が広がる中、スポットライトのように狭められた一条の光の下に、ファナとトリル、アリッサが立っている。

 三人はいずれもACSや衣服に戦闘の痕跡が残る状態であり、大塔から出てきたばかりであることが容易に見て取れた。

 しかし彼女たちは、疲弊を表に出すことなく、闇を、正確には闇の向こうにぼんやりと存在感を示すものを見つめている。

「――報告は、事前に送った通りです」

 そうファナが口にすると、ファナたちを取り囲み見下ろすようにして、中空に赤い光が九つ浮かび上がる。

 それらはいずれも、椅子に座す人間のようなシルエットであり、その正体はG.U.I.L.Dの統括者であり最高決定権を持つ元老院の面々であることを、ファナたちはよく知っていた。


 ――あの第一階層での異変の後、ファナ達は第一階層のセーフエリアに戻るなり、すぐさまG.U.I.L.Dから呼び出された。

 心当たりなど今更探すまでもない。

 ニーズホッグ、アルゴス、“片翼”、どれをとっても語るには十分すぎる特種であった。

 ファナ達はACSに最低限の応急処置をした後、オズワルドからの労いをろくに受けることもできず、重い体を引きずってニューフロンティアにまで戻り――――

 そして戻るや否や、今度はG.U.I.L.Dからのやってきた迎えのA.Eに連れられ、ニューフロンティアにおけるG.U.I.L.Dの中核であるプライマルスクエアと呼ばれる建造物に連れてこられた。


「――ファナ・アッシュライト、トリル・レッドフォート、アリッサ・イラ」

 赤いシルエットの一つが黄色いアウトラインを纏う。

「第一階層における大規模異変の原因調査。まずはご苦労だった。ニーズホッグβの発見とこれの撃退。アルゴスの第一階層出現の確認。仮称“片翼”の発見。いずれも目を見張る成果だ」

 ニーズホッグβとは、ファナ達が戦闘したG.U.I.L.Dのデータより高スペックの個体を指す名称である。

 同様に、多数現れたキマイラ達もキマイラβと呼称されることになったことをプライマルスクエアに連れてこられる前にデータベースの更新という形で伝えられた。

「その上で、G.U.I.L.Dの決定事項を通達する」

 先程までとは違う赤いシルエットが、黄線を纏う。

「我々は、本件を大塔探索史史上最大の異変と認識し、特級秘匿案件として扱う。以降、『黎明を往く者』は本件への関与及び調査と、本件に関する情報の公開を禁止する」

 ファナたちにとってそれは、寝耳に水だった。

「待ってください。ことの重大さを鑑みての緘口令は理解できますが、我々が本件に関わることを禁止するのは何故でしょうか」

 トリルは声のトーンこそ冷静であったが、意見するその姿勢からは、憤りがにじみ出ていた。

「本件の特異性に対応できるのはS級以上のA.E.のみと判断した」

 元老たちは淡々とそう述べ、ファナ達の目を見開かせる。

「――であれば、今すぐ我々をS級に昇格いただきたい。我々はそれを条件に、第一階層の異変調査を受託したのですから」

 ファナ達がわざわざG.U.I.L.Dの招集に応じたのは、昇級に対する進展があることを期待しての意図もある。

 故に、今回の件で昇級が正式に決まり、引き続き本件の調査に関わるものだと当然考えていた。誰がどう見ても、人類史を揺るがす出来事の当事者になったのだから。

 しかし実際に通達された内容は、ファナ達の想像の真逆であった。

「――『黎明を往く者』には第一階層での異変調査を命じたのみ。我々は昇級を約束してはいない」

 あくまで、淡々と、元老たちは告げる。

「ですが――」

「トリル、もうやめよう」

 ファナはトリルを制し、その後アリッサを見て、もう一度トリルを見つめる。

 その時のファナの瞳を見て、トリルはこみ上げたものをぐっと抑え込み、沈黙する。

「以上をもって査問は終了する。当面の間、君たちには第一階層の保全活動にあたってもらう。君たちの成果は必ず大塔の更なる真理究明に活用されることだろう。ご苦労だった」

 そう通告がされた後、赤いシルエットが一斉に消え、闇が晴れる。

 ファナたちは真っ白な床と天井、壁に覆われた『謁見室』に立ち尽くし、職員に促されるままにプライマルスクエアから出ることとなった。

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