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EXPLORER GIRLS -Children of Sandbox-  作者: 彼岸堂流
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 【F1-15 始原ノ迷宮 セーフエリアD4】


 大塔・ストラトスⅠ内部には、A.EをサポートするためにG.U.I.L.Dによって設けられた塔内活動拠点『セーフエリア』が存在する。

 これらは強力な防壁とG.U.I.L.Dの精鋭を据え置くことでその名を担保しており、負傷したA.Eの治療や、何らかの異常事態に対処する際の前線基地として用いられている。

 特に今現在のような――ワイバーンの異常発生といった緊急事態には欠かせない場所であった。

 ファナ達三人は、セラ達含め救出した全てのパーティをセーフエリアD4へと移送した後、D4を管理するG.U.I.L.Dの兵士長に呼ばれることとなった。

 D4中央に立つ指揮統制用のテントにファナ達が入ると、メイドのような意匠のACSに身を包みバイザーで目元を隠したG.U.I.L.D直轄A.Eと、ACSに類似する武装をした大柄でスキンヘッドの男性がデスクに座ったままファナ達を出迎える。

 この男こそが、セーフエリアD4を管理し、今現在ワイバーン異変に対して前線指揮を執っているG.U.I.L.Dの兵士長・オズワルドであった。

「――さすが『庭園の寵児(チルドレン)』。死者ゼロとは恐れ入った」

 オズワルドが小さく拍手をする。

 一方のファナは、その様子にわざとらしくため息をついてみせる。

「死者が出なかったのは、あの子たちが頑張ったからだよ。あとその呼び方、止めてほしいかな。あたし達には『黎明を往く者(ドーンシーカー)』って登録名があるんだからさ」

「失礼。だがG.U.I.L.Dじゃこっちの方が通ってるんでね」

「……で? 用件は何さ」

「新しい指令だ。それも、指令部は直接、お前達を指名した」

「わぉ。てことは――」

「――今回の原因調査が、正式にボク達に振られたってわけですね」

 ファナを遮って、トリルが先に言葉を発する。

「何故ボクらに振られたか、理由を聞くことはできますか?」

「そりゃ、アタシ達の実力が――」

「ファナは黙ってて」

「むぎゅ」

 トリルがオズワルドを見据えながらファナの口元に手を当てる。その様子にオズワルドがくっと一笑する。

「単純さ。今ここにいる中で、お前らが一番級が高いってだけだ」

「S級を呼んだほうが確実では?」

「ワイバーン如き、お前らには屁でもないだろう? 謙遜するなよ、レッドフォート」

「ですね。でも、ワイバーンが増えた原因がどんな脅威かはわからない」

「そこが引っ掛かるわけか」

「――ぷはっ! ちょっと、トリル! まさか降りるってんじゃないよね?」

「なわけない。――――オズワルド兵士長、G.U.I.L.D本部にこう伝えてもらえますか」

 トリルがわざとらしく、間を置く。

「『原因調査は受ける、その代わり昇級を約束してくれ』と」

 そのトリルの提案を聞き、ファナの表情がぱっと明るくなる。

「天才じゃん……!」

「黙ってて」

「ふぎゅ」

 オズワルドが腰かけている椅子の背もたれに自身を大きく預け、一息つく。

「相変わらず、クールぶっている割に、舌は随分とギラついてやがる」

「今回の異常は、ボクたちが知る限り初めての規模です。相応のリスクが予見される」

「見合う報酬は当然……と。だが、その態度で指名が取り消されるかもしれんぞ」

「その時は、まぁ――――たまたま通りがかったボク達が、たまたま得た調査結果をG.U.I.L.Dと取引するだけですね」

「悪いトリルだ」

「悪いトリルだね……」

 ファナとアリッサが肩を寄せて一緒につぶやく。

「二人は黙ってて」

「「うぎゅ」」

「……俺にどっちが得かを考えろってか?」

 オズワルドが先程よりも重くため息をつく。

「……まあ、一応かけあってやるよ。俺としては今回の件が解決すればそれでいい。言っておくが、フォローはしないからな」

「十分です。――――行こう、ファナ、アリッサ」

「ぷはっ――うん」

 トリルが二人の手を引き、テントから連れ出す。

「大口叩いといて、死ぬのだけは勘弁だぞ」

 ひらひらと手を振るオズワルドに、ファナは親指を立てる。

「大丈夫大丈夫。あたし達、しぶとさには自信あるから」



 * * *



 オズワルドとの対話を終えたファナ達は、第一階層最深部へと向かう準備を開始するべく、セーフエリア内でA.Eに開放されている休息用のテントを一つ陣取る。

 そこでACSの整備と探索に必要な物資の補給を行う最中――

「――あんな言い方しちゃって、大丈夫かな」

 アリッサが浮かない表情でそう口にした。

「G.U.I.L.Dからの指令の話?」

 トリルが第一階層の地図を端末で眺めつつ問い返すと、アリッサは頷いて肯定する。

 トリルは地図を閉じ、アリッサの方を向く。その表情には先程オズワルドに見せたような鋭い色はなく、温和なものが宿っていた。

「あれくらい言わないと、ボクらがG.U.I.L.Dに対して不満を覚えているのは伝わらないよ」

「そーそー、トリルが言ってくれてせーせーしたよあたしは」

 ファナが自身の左腕――義手型ACSの動作確認を終えて、胡坐をかきながらトリルに同意する。

 するとトリルは「呆れた」とため息をついた。

「最初にG.U.I.L.Dに無断で『原因調査に行こう』って言っておいて、よくもまぁ、そんなことを」

 トリルの言う「最初」とは、ワイバーンの群れからC級A.Eを救出した直後を指す。

 ファナは救出を終えた勢いそのまま、ワイバーン出現の原因を調査しに行こうと提案したのだが、それをトリルが制したのだ。

「それを言うならトリルだって! あの時からG.U.I.L.Dと取引する考えがあったのなら、言ってよ!」

「リーダーなんだから、そこは言わなくても思いついてほしいよ」

「えー、なんだよそれー」

「ま、いいじゃない。G.U.I.L.Dに吹っ掛けようとしたら、向こうからボク達を指定してくれた。渡りに船ってやつだ」

「悪いトリルだ」

 ファナがそう言うと、アリッサが「ね」と微笑む。

「それ、二人の間で流行ってるの?」

 トリルが苦笑する。

「悪いトリルがこれ以上悪くならないためにも、G.U.I.L.Dはさっさとあたし達をS級にあげてもらいたいもんだね」

 そう言ってファナが手足を伸ばし、その場に寝転ぶ。

 その瞳に、簡素な天幕の白が映る。


 ……ファナ達がG.U.I.L.Dに謀を仕掛けるのは、詰まる所、この「級問題」にあった。

 ファナたちAA級とS級は、級としては一つしか違わない。

 しかしそこには、AA級とAA級未満がそうであるように、同じA.Eとして天地の差――G.U.I.L.Dに対して許可を得ることなく未踏領域へ探索できる権利――が存在していた。

 ファナ達『黎明を往く者』は、第四階層に足を踏み入れたパーティである。

 彼の深層に到達できたA.Eは、大塔に挑む全てのA.Eの中でも1%にも満たない。

 だが、その極少数のA.Eの内、A()A()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 実績は客観的に見て十分であるはずだった。しかし何故かファナ達の昇級は認可されていないのが現状だ。

 塔の制覇を目標とするファナにとって、級問題は第四階層の攻略を開始してからずっと付きまとう、目の上の瘤に等しいものだった。


「――――でも実際のところさ、今回の騒動は何が原因だと思う?」

 ファナが今日の戦いを思い出しながら、疑問を口にする。

「……やっぱりゲートに何か問題が起きたんじゃないかなって」

「ボクもアリッサと同じ考えだよ」

 アリッサの言及した『ゲート』とは、塔の中に存在する別階層へ移動するための転移装置を指す。

 人類が作り上げたものではなく、塔に最初から存在していた、未だに謎の多い機構だ。

 これまで発見されているゲートは、総じて大塔の各階層最奥部に配置されており、未制圧のゲートには往々にして守護者たる敵性存在がいる。

 A.Eにとっては、ゲートの発見と制圧こそが各階層での最優先目標であった。

 人類は今現在、第一階層から第三階層までのゲートを制圧し、後発の探索を支えるべく補給線やセーフエリアを整えている最中である。

 今回のワイバーン騒動は、第一階層を一時的に閉鎖する事態であり、今後の大塔攻略計画を大きく狂わせるものと言えた。 

「……“何か”って、具体的にはどんなよ?」

「今の状況がそのまま示す通り、敵性生物がゲートを通過してきたとかね。実例が観測されていないだけで、あいつらがゲートを通過できないとは証明されてない」

 トリルの発言にアリッサが頷く。

「……仮にそうだった場合、今も敵性生物がゲートを自由に通過できる状況になっている、ってことだよね」

「あぁ。言い換えれば『ゲート周辺のセーフエリアが、敵性生物のゲート通過を許すような状態になっている』ってことだね」 

 ゲートはその性質から、必然的に大塔内における要衝となる。

 故にG.U.I.L.Dは、制圧したゲートの周辺にもセーフエリアを敷いて安全を維持するようにしている。

 ゲート周辺エリアを守護する者は、その他のセーフエリアに配置される者よりも更に選りすぐりの精鋭であるのが常だ。

 もしゲートを襲撃する敵性生物がいたとしても、その精鋭らによって一蹴されているはずだが――――

「――まあ、何にせよ今はまだ仮説の域。ゲートの状態を確認すれば、色々わかるはず」

 そう言ってトリルがこの話題をまとめ、ファナに視線を送る。

「ファナ、先に確認するけど……もしこれからゲートに行って“何か”と遭遇した場合は、どうする?」

 トリルの曖昧な言葉を用いた問いかけに対し、ファナはきょとんとする。

 そして、んーと斜め上に視線を送りながら少し考え、しばらくしてトリルと再び目を合わせる。

「何とかできそうなら、何とかする。ダメそうなら、逃げる」

 にっと笑うファナ。対してトリルは――――

「ま、ファナはそう言うよね」

 聞く前から答えがわかりきっていたことを明らかにする。

 そして三人は、まるで申し合わせたかのように同時に立ち上がった。


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