――――“それ”は、ある日突然来訪し、世界を一変させた。
それは、遥か彼方――星々の海より飛来し、大地に突き立てられた『塔』。
それは、天より与えられし試練。
それは、暗黒より訪れし災厄。
それは、神より齎されし恩寵。
かの塔は人智の及ばぬ技術により構築され、外部からの如何なる干渉によっても破壊、制御することは能わず――
その内部には、物理法則を無視した巨大な迷宮が広がり――
その迷宮には、未知の生物たちが跋扈していた。
人類は、まるでそうあることが必然のように『塔』に挑み始める。
富、知識、力、栄光。
あるいは、それら全てを求めて。
そうして人類は、数多の苦難に立ち向かいながら、徐々に、確実に『塔』を攻略していく。
その微々たる歩みが、積み重ねられ――
やがて人類は、『塔』の内部にて、究極のエネルギー炉たる『フォトンドライブ』を発見する。
これにより人類は、フォトンという力の概念を会得し、『塔』攻略の切り札となる存在を作り出すことに成功した。
その存在とは、『フォトンドライブ』を基盤にした武装を纏い、身体の一部かあるいは全てを機械化した少女達――
名を、『A.E』――――アドバンス・エクスプローラー。
彼女達の目覚ましい活躍により、『塔』はついに、その頂まで制覇されるに至った。
かくして人類は“試練”に勝利し、『塔』によって得られた資源、技術、知識は広く人類社会に還元され、この星の最後のフロンティアが失われた。
――――かに思えた。
『塔』が制覇され、十数年が経ち――
人類は、『塔』から得られた力を用いて、この星の覇権を巡り、争いを始めていた。
かつては『塔』を共に見上げ手を携えていた人類が、同じ地平に立つ者しか見なくなった、混迷の時代に――
天より再び、新たな『塔』が舞い降りた。
ただしそれは、かつての塔より更なる高みを以て、大地に穿たれる。
星々が息吹く宇宙にまで届く程の『大塔』の来訪に、人々は、世界は、震える。
『大塔』は歌い、謳う。
この大地に生きる、全ての生物に向けて。
――――【我/塔】を【陥落/踏破】せし者に与えるは
――――【望外/至高】の【権利/力】
――――【森羅万象/有象無象】を【支配/制圧】することを【許可/承認】する
人類は、その未知なる声に誘われ――
否。
恐らくは、斯様な導きなど無くとも、溢れ出る好奇と、隠し切れぬ欲望のままに、人類は再び『大塔』に挑んでいただろう。
目指すは、遥か天上。
その頂、人類の探索の果てに掴むものが何かわからぬまま、再び試練が始まった。
――そして、現在。
――――第一の塔の来訪から、百数年。
――――『大塔』の来訪から、数十年後。
『大塔』は未だ踏破されることなく屹立し、人類は今なお『大塔』――『ストラトスⅠ』に挑み続けている。
この物語は、聳え立つ塔の下に生まれ、塔を見上げ続け、憧れ、やがて挑んだ。
そんな彼女達の――――『断章』である。