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プロローグ
背後からすごい勢いで何かが飛んでくる。
ガッ……!
私はとっさにかわしたものの、真横には大きな斧が刺さっていた。振り返ると、身体を黒いマントで包み、グルグル巻きの包帯で顔を隠した不気味な男がそこに立っていた。
「きゃっ……!」
私は大声を上げたかったが、恐怖で上手く声が出ない。例え叫ぶことができたとしても、ここは森の中だ。誰かが助けてくれる可能性はほとんどなかった。
「助けて……助けて……」
立ち上がって反撃したい気持ちはあったが、腰が抜けて上手く立てない。私は這って逃げるしかなかった。
「うおおおおっ!」
包帯男はうめき声を上げながら、その場から離れようとする私の足を握り、木の幹にたたきつけた。強い衝撃が全身に走る。「くっ……」私が態勢を立て直すと、目の前で包帯男が再び斧を振り上げていた。絶体絶命だ。
「あれっ……」
ふと、私は身体のバランスを崩し、後ろに倒れた。いや、倒れたというより、木の根元に開いた大きな穴に吸い込まれたのだ。私を捕えようと手を伸ばす包帯男を穴の内側で見ながら、私はゆっくりと暗い穴の奥へ落ちていった。