タカ君と虫と私
校舎の下駄箱を出て少し歩くと撫子の花壇がある。
今日、タカ君はそこで観察をしていた。
虫だ。
クロウハ…なんたらって虫だって。
私の幼馴染は虫が好きなのだ。
タカ君にとって虫は特別な存在だ。
タカ君は目をキラキラさせて少年みたい。
凄く可愛い!
「タカ君、一緒に帰ろ」
「ん?ユキ、もう部活は終わったの?」
「うん!」
門を出てふたりで歩道を歩き
私の好きな金木犀の香りがする。幸せ。
いつもの様に私が今日の出来事を話す。
タカ君は聞き上手だ。
「あ、危ない‼︎」
タカ君が珍しく大きな声を出したと思ったら
手を引っ張られ抱きしめられた。
上から声がする。
「良かったぁ、コカマキリだ…踏まれなくて良かったね!」
やっさしーーーー!
それでこそ男ね!
タカ君の大事な子を踏むところだったわ
アセアセ。
「ユキも大丈夫?」
「うん♡」
そして凄く褒め上手。
「ユキはナナホシテントウみたいに真っ赤になるね!可愛いな。」
……。
て、てんとう虫ね。
ほ、ほらね‼︎
タカ君の最上級の褒め言葉よ‼︎
聞いた!?
タカ君は腕を解きコカマキリを木の下へ移動させた。
その横に私も並ぶ。
「またな」
ふふ、コカマキリさん
私はタカ君といっつも一緒に居られるのよ。
いーでしょ!?
ここも一生懸命勉強して入ったけど
大学も一緒に通うの!
「ね、タカ君〜」
「ん?」
「あのね…………」
私はまた話し出す。
タカ君は優しく相槌をうって
いつも話を聞いてくれる。
けど、
今はただの幼馴染。
これで良いの。
でも、いつか私も特別にしてね。