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よんわめ:森の中


 ガサガサと茂みを揺らしては音を立て。


 パキポキと枝を踏んで折っては音を立て。


 のっそのっそと獣は歩く。


 その獣の毛は青い。まるで空を落としたかのような青色である。全身真っ青。耳から尻尾までの体毛全てが青。森に隠れても目立ちやすそうな色をしていた。


 しかし、その不便そうな青い毛皮にはある特性がある。それは硬質化。魔力を流す事で矢をも刃をも通さぬ鎧と化すのである。


 小さく開いた口からは鋭い牙を覗かせる。小動物ならば一噛みで命を奪いそうな程、鋭利かつ凶暴な牙を生やしていた。


 その獣は四足歩行で歩く。地を踏む足の先にはこれまた鋭利な爪がある。引っ掻いただけで致命傷を齎すだろう。


 まさに天性の武器を持ち合わせた自然界に住む魔物と言えよう。彼のフィールドである森で出逢えば最期。倒す事も逃げる事も叶わない。そう謳われている森のハンターである。



 その狼は背に一人の少女を乗せていた。白いローブで身を隠した少女。顔まですっぽりとフードを被り、不審者然とした格好で狼の上に乗っていた。


「......わっ......とっ......!」


 跨る、と言うよりも座るに近い。両足を揃えて横に座り、左手で毛皮を掴んでバランスを取っていた。何故跨らないのか。それはハク揺れる狼の背で呻き声を漏らす。


 少女の名をハク。端的に言えば錬金術師である。


「......揺れるっ......!」

『くぅぅん』


 ハクが振り落とされかけて文句を言うと、狼は申し訳なさそうに声を漏らした。まるで親に叱られた子のような鳴き声だ。出会い頭と比べて随分大人しく、弱々しくなってしまった狼。ハクを主として完全に認めているようだ。


 そして、ゆっくりと歩くようにして、なるたけ揺れを少なくするように努め始めた。


 頭を下げ、耳を下げ、尾まで下げてしまった狼を見て、ハクも心苦しくなった。乗せてもらっているのに、という常識が湧いてでたのである。


「......まぁ良いよ、セイ」

『わふっ!』


 ハクが撫でながらそう言うと、青い狼──セイは嬉しそうに吠えた。そしてまたゆっらゆっらと体を揺らす。歩速も上がった。それに伴いハクも揺れる。上下左右に揺れ動く。「うっ」「わっ」と漏れ出る呻き声はセイの耳に届かないようだ。


 揺られながらに思う。自分で浮けば良かった、と。しかし、ここで降りてしまえばセイが落ち込んでしまうかもしれない。そう考えたハクは堪える事しか出来なかった。


「......うぷっ......セイ......」

『くぅぅん?』

「......ゆっくり......」

『わふっ!』

 

 乗り物への耐性が無かったハク。狼の背中というのは中々に辛いものがあったようだ。胃の奥から込み上げてくるものを予感し、口を押えながらセイに訴えた。


 速度が落ちた事で揺れが軽減される。揺れが軽減した事で気持ち悪さも随分とマシになった。


「......うん......それでいいよ、セイ」

『わふっ!』


 ハクが撫でてやるとセイは嬉しそうに吠えた。


 因みにセイという名はハクが付けたものである。「狼さん」と呼んだ時、物欲しそうな目で見られたので、この狼に相応しい名前を付けてやったのだ。ハク自身も名前の方が呼びやすいと思っており、互いに満足のいく結果となった。


「......このまま人里に、よろしくね」

『わふっ!』


 セイは自信満々に吠えて答えた。どうやら心当たりがあるようで、迷い無い足取りを見せてくれる。


 この森から出る為にどの方向へと進めば良いのか、ハクには皆目見当もつかなかった。それを考えればセイを従え、案内させている現状は良しと言えるだろう。


「......まぁ、便利と言えば、便利か......」


 この揺れさえ無ければ、とハクは胸中で呟きながら 、景色を眺めることで気を紛らわす。1秒でも早い到着を期待した。



狼がセイという名になったよ、と言うだけの話です。


※諸事情とモチベーションの関係で暫く休載します。チマチマ書いてはいるので、溜まったら出します。

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