ごっっわめ:薬の効果
3作品書いて疲れた怠惰人です。
※副題更新
それからハクは他の質問を考え、思い浮かばず諦めた。こんな事なら事前に質問を考えておけば良かった、と後悔する。
「ふぅ......それで、回復薬はくれるのかい?」
「......ん、魔女は嘘をつかないんだよ」
ハクが指を鳴らした。すると、レオガイアを取り囲んでいた鎖が魔法陣と共に消滅する。
拘束具が消えても尚、レオガイアは立ち上がろうとしない。やはりそれ程に辛いのだろう。そんなレオガイアの傍に寄ったハクは、回復薬を手にして口を開いた。
「......お腹、見せて」
「え、なんで?」
「......効果を見たい......これは私が作ったもの......故に権利はある」
「あんまり子供に見せるようなものじゃ無いけどね」
きっと何でも知りたい、やりたい、見たいというお年頃なのだろう、と勝手に納得した。そしてこの短時間でハクの頑固さを理解していたレオガイアは、大人しく服をまくって患部を見せる。
刺された、と言っていたが、ナイフのような小さなものではなく、剣のような太いもので抉られていた。良くこれで生きていられるな、痛みを我慢出来るな、とハクは素直に驚いた。
「グロいでしょ?」
「......ん?......いや、内蔵抉ったことあるし......」
「......は?」
痛そう、とは思うがグロいとは思えない。ハクにとって流血は日常茶飯事なものであるし、肉が出て骨が見える事も偶にある。
確か、臓腑を抉ったのは麻酔薬と回復薬の効果を調べる為の実験だったな、と振り返って懐かしく思う。治す事に成功はしたのだが、貧血になって暫く動けなくなってしまった。それもまた良い思い出だ。
「ははは......その薬で僕の傷も治りそうかい?」
「......治すだけなら、余裕?」
疑問符を浮かべながらも、確かな自信はありそうだ。
しかし、レオガイアは期待なんてしていなかった。この傷では並大抵の回復薬も焼け石に水。絶望的な致命傷であるのだ。それを、年端もいかない少女が作ったという謎の液体で治るはずが無い。そう考えていた。
これは子供のままごとに付き合うようなもの。そう、考えていた。
「......じゃ、始めるよ」
「ああ、ハクちゃんがやってくれるのね」
「......うん......間近で見るのが、一番」
と、ハクはレオガイアの開いた足の間に収まった。動けないレオガイアに被さるように、ハクは乗っかったのである。
そして露出した腹部に左手で触れた。
「......毒は無い......汚れは除去」
ブツブツと呟きながら患部の周りをぺたぺた触れていく。小さく、柔らかい手が触れる度にレオガイアは声を上げそうになっていた。
(なんだ、僕は拷問でも受けているのか......!?)
痛みよりも緊張が強くなっていた。ハクは知ってか知らずかレオガイアの大事な所に体重を掛けている。幼い肉体は軽く、愛玩動物のような心地良さがあった。そんな幼女からの無垢な攻めに心が少しだけ揺れ動いてしまった。
「......よし、掛けるよ」
「あ、あぁ......うっ!」
ハクが緑色の液体──ハク特製の回復薬を傷口に垂らした。熱を持った患部にひんやりとした液が注がれる。
すると、ジュウッと音と煙を発して細胞の再生が始まった。ハクが覆い被さっていたため、レオガイアは見る事が出来なかった。しかし、傷口はみるみると塞がっていき、やがて完全に閉じた。
ぺたぺたと傷があった所を触診してみる。その道のプロでは無いので確かとは言えないが、外見からだけなら傷は跡形もなく消滅したと言えよう。
「......うん、いいデータが取れた」
自分が作った回復薬の効果に満足していた。これで効果があるのはハクだけではない、と証明されたのである。薬にとって重要な、体質による効果の有無という壁を一枚乗り越えた気がする。そんな僅かな進歩にハクは喜んだ。
「え、本当に治ったのか......?」
「......痛みは、ある......?」
「いや、無いよ......うん。完全に治っている」
自身の肉体にあったはずの傷。致命傷であったそれは完全に無くなっていた。断続的に襲って来ていた激痛も息を潜めている。
レオガイアの命は救われたのである。たまたま逃げ込んだボロ屋敷で出会った少女に。
そこには歓喜よりも驚愕が占めていた。これ程の効果がある回復薬など聞いたことが無い。執拗に傷付けられた内蔵、骨、血管、肉、皮膚の修復。市場に出回っている上級回復薬でもそれを再現するのは難しいだろう。
(なんなんだ、この少女は......)
出会って間も無く見せた殺意。負傷していると分かった時に見せた慈悲。試験体に使えると分かり見せた歓喜。一転して見せた狂気。
幼い見た目だが大人びたしっかりとした思考をしている。と思えば幼児のような反応や行動をする。そして、自作と言った薬の効能。
レオガイアがハクに抱いた印象はチグハグ。まるで2つの、いや幾つかの人格が内在し溶け合っているようにさえ感じ取れた。
未だ傷口のあった腹部に注目し、つんつんぺたぺたと触れ続けるハクを見下ろす。
やはり幼さが最前面に出ているようだ。




