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いっちわめ:監禁生活8年と数ヶ月目

第2章?です

※副題更新


 とある国に、前世の記憶を持って生まれた王女が居た。その王女は母に似て美しい銀髪を持った可愛らしく、何処と無く大人びた少女であった。


 その国は光魔法を尊う思想を持っていた。光魔法は国を豊かにし、外敵を退ける力があるとされた。故に国の頂点に立つ王族は光魔法──『黄』の魔法適正を必然的に持たねばらなかった。



 そんな国の王女は『白』の魔法適正だった。



 『黄』の適正を持たぬ少女は王族の恥とされ、見放され、存在を否定され、居ない者として扱われた。そして少女は王都から離れた街の屋敷に軟禁された。


 そこで少女は生存するための力、魔法を覚えた。自身の魔法適正を理解し始めた。魔法を使う為には魔力が必要だと知り、苦痛を代償に魔力を増やした。


 それと同時に世界の知識を得た。屋敷の中にあった書物を片っ端から読み漁った。この国の歴史、植物や動物、魔物という特殊な生物、様々な知識を本から得た。


 その中には錬金術に関するものがあった。古びたボロボロの本に少女は触れた。



 その本は、呪われていた。

 


 どういう原理か少女はその本に、錬金術に取り憑かれた。全ての優先事項が錬金術になり、日々の生活をも侵食し始めた。


 洗脳され、操られたように少女は錬金術を求めた。身を削り、血を吐いて、錬金術を求めた。



 そして少女は錬金術師になった。この国から......いや、この世界から姿を消した筈の錬金術師になった。



 少女が軟禁されてから凡そ8年が経過した。



 少女はまだ、生きている。




 ※ ※ ※




 13となった少女、歴8年の錬金術師は今、とある問題にぶち当たっていた。


 それは


「......背が......伸びない......!」


 身長だった。それはあくまで少女の体感でしかないが、いつまで経っても錬金釜に届かない事からそれは明確だ。


 事実少女の身長は8年前と殆ど変わっていない。女の子で13歳ならば身長は150センチメートル近くある筈だが、少女は100センチメートルに満たない程度。明らかな低身長だ。


「......食事に問題が......いや、栄養は摂ってる......」


 顎に手を添えぶつぶつと独り言を呟きながら、この問題の要因を考える。


 姿鏡の前に立ち、少女は己の外見を観察する。


 そこには母譲りの美しい銀髪を伸ばし過ぎた少女が居る。顔のパーツも母譲りな為、忌々しい金瞳を除けば少女自身も認める美少女だ。


 低い身長は既に分かっている。8年前から景色が一切変わっていないのだから、伸びていない事は確かなのだ。


 ばっ、と身に纏っていたローブを剥ぎ取り、下着も全て脱ぎ捨てた。


「......やっぱり......食事......か......?」


 改めて自身の肉体を見た感想は、ガリガリ。随分と貧相な体であった。それは胸部だけの話ではなく、体全体が痩せ気味であった。


 頬や腕、腹部を触れながらもう一度考える。やはり痩せ気味で骨の形が良く分かる。どう考えても栄養失調が原因だ。


 栄養キューブは完璧な食材だ。人に必要な栄養を全て補給出来る。全人類が欲するであろうコンプ食。しかし、人間の体はそう簡単なものじゃなかった、という事か。


「......と言っても食糧が無いからなぁ......」


 ならばまともな食事をしようかと改心しても無駄なのだ。ある日から食糧は配達されなくなっていた。恐らく、死んだと判断されたのだろう。


 さて、困った。どうにかしてでも身長を伸ばしたい少女は、むーんと考える。そしてキュピーンッと答えを出す。


「......薬を作る他なし......か......」


 キラン、と目を光らせて呟いた。


 新しい薬を作るのは楽しい。この8年の間で様々な薬を作ってきた少女。その数は数十種類。定番所から珍しい奇っ怪なものまで思い付いた限り作り続けた。


 新薬製薬はトライアンドエラーが当たり前で、その都度思考を変え、条件を変え、成功品に近づける。それが楽しいのだ。『不眠薬』という薬を作ってからは、3日近くぶっ続けで錬金釜を掻き回したこともある。


 そうと決まれば早速やろう、と少女は脱ぎ捨てた衣服を纏っていく。最後に純白のローブを纏い、深くフードを被った。これが少女のここ8年変化の無い私服である。

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