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じゅーさーんわめ:錬金術 黒い石

※副題更新

「......ふぅ......とりあえず、あれをどうしようか......」


 喉を潤した少女は水瓶を覗き込んだ。そこには石ころのようなものがあった。大きさはビー玉を一回り大きくした程度。色は黒。あまり、好感を持てない色だなと少女は思う。


「風よ」


 少女が言葉を発すると、その石ころは水瓶の底からふわりと浮いた。


 両手を広げて石ころを受け止める。摘んで見てみても、真っ黒な石、という評価は変わらなかった。


 感触は石そのもの。外見だけではなくその特徴すら石そのものだった。そこら辺に落ちていれば唯の石に紛れ込むだろう。


「光よ」


 指先に光の玉を作り出して石に当ててみる。これで何か起きてくれればと願ったが、その予想を裏切り変化は無い。


 他にもなにか調べようと考えた。火にくべる、水に浸す、幾らでも実験することが出来た。しかし、少女は限界だった。クラクラと頭が揺れ動き、瞼も閉じようとしている。今すぐ、肉体に休息を与えなければならなかった。


 故に思考は()()に侵され、肉体はそれに従った。


「......ええいままよ」


 パクリ、と少女はその石を口に入れた。


 モゴモゴと口を動かし、その石をどうにか出来ないかと試行する。歯で噛み砕くことは出来ない。舌で叩いてもどうしようも出来ない。


「ごっくん......まっず......」


 最終的にそのまま喉へと押し込んだ。

 

 喉を通る異物感に涙目となる少女。石は飲み込むものじゃないな、と改めて思う。


 まだ洗脳されているのだろうか。口に含んでから飲み込むまで、迷い躊躇い抵抗が殆ど無かった。そうする事が当然のように受け入れてしまっていた。


(あー、吐き出そうかな......)


 少女が喉に指を突っ込もうとした瞬間だった。


「ふっきゅうっっ!?いたいたいたいたいたいたいたいっ!!」


 ズキュゥゥゥンッ、と頭に雷が落ちたかのような衝撃が襲った。そして何かが頭の中に流れ込んでくる。この感覚は、前世の記憶を思い出した時のものと同じだ。誰か知らないものの知識が無理やり頭に押し込まれていく感覚。抵抗しようにも為す術もなく、されるがままに埋め込まれる。


「あっ......!」


 激痛に悶えていると、バランスを崩してしまった。元々不安定な椅子の上。そんな所で暴れるとどうなるか。そんな事分かりきっていただろう。


 後ろから身が投げ出される。必死に手を伸ばしたが何処にも届かない。


 ふわりと浮いた肉体。慌てて魔法を使おうとしたが頭痛で上手く発動出来ない。


 このままでは床に衝突する。どうにかしなければ。


 その思いで必死に手立てを考えるが、既に自由落下を始めた身。何も出来ることは無かった。


 やけに思考だけが早く回転する。肉体はピクリとも動かないと言うのに。無駄に無駄に回転する。


(死ぬ前に見る景色か──)


 走馬灯は流れなかった。思い出そうにも思い出が少ない。何せ、生まれ落ちてから数年で存在を無い事にされて、こんな所に押し込まれ、孤独に晒されてきたのだから。あぁ、これが走馬灯かと少女は思う。


(なんだちくしょう。転生してから踏んだり蹴ったりだな)


 少女は神を呪った。


 そして間もなく床に頭から衝突し、気絶した。



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