89 ネックホールダ―男爵の友との和解(その13)
ネックホールダ―男爵の災難が続きます
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「よく来てくれた」
寄り親の伯爵様が夜会に来た客を出迎えている
男爵はその後ろに控えて立っているだけ
要は賑やかし、だ
伯爵様が一人で出迎える
伯爵様の後ろに取り巻きが控えた状態で出迎える
どちらの方が権勢をひけらかせるか?
早い話そういうこと
昔、遠くから見ていた時はきらびやかに見えた
でも今なら判る
お仕事は大変だ(苦笑)
見るとヤルとでは大違いだ
もっとも伯爵様一派だからウハウハだろう、なんて思われているだろうな
昔見て、そう思っていたからよく判る
実際は何の得もないんだけどな(涙)
寄り親というか爵位が上ならば何の苦労もないだろうと思っていた
それが勘違いだというのはよく判る
いやよく判った
伯爵様からの厚遇を得る(ように見える)立場になって身にしみた
寄り親だからといって高圧的に子爵と仲直りしろとか言うな
そう思って反発した
口では仲直りすると言っておきなながらイロイロと言い訳して『旅人(の葉)』を売らなかった
面従腹背、だな
今となってはゴメンなさい、だ
忙しすぎて男爵にまで手が回らないわな
親族から寄り子の貴族、はては商人の対応までしなければならない
あ、あと派閥関係も、だ
朝早くに起きて夜遅くに寝る
一体どこに子爵と男爵の間のトラブルを丁寧に解決する暇があるのか?
全然ないな
もっとも子爵様と男爵の間のトラブルに何の関係もない寄り親を巻き込むな、と言いたい
子爵様の親戚関係に、だな
子爵様に頭を下げさせるなり、なんなりすればいい
自分達は何の損もせず、男爵から『旅人(の葉)』を適正価格で手に入れようというのがいただけない
伯爵様は元からだが、男爵にまでそのとばっちりが来たんだ
伯爵様の好意という名のおせっかいで、だけどな
この恨みは絶対に忘れないぞ
目にモノ見せてやる
・・・伯爵様には迷惑をかけたので『旅人』を多めに渡しておいた




