87 ネックホールダ―男爵の友との和解(その11)
寄り親貴族が友達と酒を飲んで愚痴ってます
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「なあ、なんであの子爵どもは自分の不始末の尻拭いを伯爵に押し付けるんだ?!」
酔ってせいで、つい友に愚痴を言ってしまう
「いや判る、判るぞ!」
同じ伯爵家当主の友が『我が意を得たり!』とばかりに賛同してきた
・・・お互いに寄り親として苦労するな
しみじみと思った
大体寄り子の貴族と言うのはロクな相談をしてこない
隣の領地を通るための通行税が高いのでなんとかしてくれだとか
隣の領主が自分の領地まで畑を広げているだとか、狩りをしにきているだとか
不作なので支援をして欲しいだとか
三男の見合い相手を探してくれだとか
・・・本当にロクな相談をしていこないな
自分でできることは自分でする
なぜそれができないのか?と言いたい
ちょっとの困難があるとすぐに人を頼る
そして丸投げして自分では何もしない
そのくせ、結果に文句を言うことだけは忘れない
もっと良い縁談を持ってこいだとか、金を寄越せだとか、隣の領主を叩き潰せだとか、だ
・・・人をなんだと思ってやがる
おかげで寄り親は大変だ
自分の領地の運営だけでなく、寄り子の世話までしなければならいんだ
伯爵ともなると自分の寄り親の公爵に泣きついたりはできない
だってやらせたら余計に手間がかかるだろ?
爵位が高い分プライドだけは同じように高い、それに反比例して実力は低い
まさに貴族の典型だ
一度頼ったら全然役に立たなかったな
そのくせ恩に着せることだけは人一倍
・・・この国、大丈夫だろうか?
まあそんなわけで同じ寄り親をしている伯爵と酒を飲んで愚痴大会をしているわけだ
今のつまみは『旅人(の葉)』を売っている男爵と、仲が悪い子爵との仲裁だ
なんでも子爵が暴言を吐いたそうだ
・・・学生時代の人間関係は貴重だというのに何やっているんだ?
バカなのか?
バカだろう
まあ、仲裁できない伯爵もバカなんだろうな
父上ならもっと上手くやっていただろう
どうしたものか?
イロイロと対策は思いつく
でもどれが効果があるかがわからない
考えるだけで頭が痛い
いままでこれがいいだろうとイロイロやってみたんだが失敗したらしたでストレスで体調が悪くなった
おまけに偏頭痛もするようになった
「いっそ、全部やってみたら?」
友が言った
・・・イイかもしれんな
あまりにも非常識なことはダメだろう
だがどうでもいいようなヤツならいいかもしれん
数打てばどれかが当たるだろう
あれこれ考えるよりはやってみた方が早い
そうすれば考え過ぎで頭痛もしないだろう
おまけに子爵とかも成果が出るまでただ待っているだけなんてさせない
伯爵を盾に酷使してやれば今まで迷惑をかけられたことの意趣返しにもなる
「「乾杯っ!」」
<チン>
友と祝杯をあげた
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次話は翻弄される下僕ども?




