75 ネックホールダ―男爵の帰還(その4)~戦闘メイド無双~
男爵様の直属のメイドの話です
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「ぐっ・・・」
パーラーメイドとしてあり得ない声が出た
いや出させているのはアタイだけどな
男爵様の要望でお茶を出すために厨房に来たんだ
ところが頼んでもお湯が貰えなかった
男爵家に来てから3日目
散々嫌がらせをされた
男爵様の洋服やシーツを洗濯しようとすると邪魔された
その上、干したものが地面に落ちて泥だらけになっていた
男爵様が連れてきた個人的な使用人、つまりアタイ達の賄いがなかった
あるいは野菜くずを使った上に、味がまったくしない料理が出てきた
一応食べられるが、明らかにイジメだろうという賄い
歩いていればぶつかってきて倒される等々
地味な嫌がらせ
貴族の家ともなれば嫌がらせも優雅だ
平民の嫌がらせはこんなものではないぞ
男ならタコ殴り
女ならヤられる
・・・貴族というのはメイドに至るまで本当に優雅だな
まあだからといってそれに付き合うほどアタイは優雅じゃない
平民だからな
それに男爵様からの許可も出ている
・・・男爵様、よっぽどこの家が嫌いらしい
騒動を起こして出て行きたいみたいだ
まあ、アタイはどこにいてもヤることは一緒だけどな
つかつかと歩いて言ってパーラーメイドの前に立つ
「な、なによっ」
パーラーメイドが睨んできた
メイド長が主犯だが、こいつが実行犯達のボスだ
まずは下っ端のメイドではなくその上のボスを叩くのが下町流だ
・・・メイド長には手を出さないぜ?
手下がボコボコにされるのを見て恐怖する係だからな
座っているパーラーメイドの長い髪の毛を掴んで持ち上げる
「ぎゃあ~っ!」
なんか声が聞こえたが無視だ
<ブチブチ>
なんか抜ける音がしたがこれも無視
あまりの痛さにパーラーメイドが立ちあがる
髪の毛を掴んだままその腹にコブシを叩き込む
「ぐっ」
通常ではありえない声が聞こえてきた
う~ん
イマイチ、力が入らない
だから壁際まで髪の毛を持ったまま引きずっていった
壁に押し付けその腹にコブシを何度も入れた
・・・最後には声が出なくなっていた
髪の毛を離すと床に崩れ落ちていったのを確認してからその他御一行様の方に行く
心なしか顔が青ざめている(ような気がする)
心外だ
下町では日常茶飯事だぞ?
これでも手加減した方だし?
まあ、脅しにはなったようなので一同を見渡した後に言う
「お湯くれます?」
その願いはすぐに叶った




