74 ネックホールダ―男爵の帰還(その3)~戦闘メイド登場~
男爵様が直接個人的に雇用した使用人の一人のメイドの話です
ココだけの話、主人公が送り込んだスパイだったりします
当分スパイとしての出番はなさそうですけどね
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「あの~、お湯下さい」
廚房に入ってそう言うが誰も返事をしません
廚房の人間は忙しそうにしている、わけではないです
今は仕事の合間の休憩時間です
だから自分達用の賄いを食べた後、世間話をしています
メイドも含めて、です
だから忙しくはないです
でも私のお願いを無視しています
思わずため息が出ました
男爵様が雇ったメイド(わたし)に対してその態度は如何なモノか、と思います
まあ、気持ちというか立場は判らないでもありません
前当主の妻とその娘とその孫娘のスリーペア
対して男爵家当主とはいえ入婿の夫のただのブタ
どちらが強いかなんてのは一目瞭然
勝つ方と金を払ってくれる方に尻尾を振るのは当然です
それも家出をした夫を連れ戻したとなれば力関係は一目瞭然
まあ表面的には、ですね
自分達ではどうしようもなかったから寄り親の貴族に頼みこんで男爵様を帰宅させました
それのどこが自慢できるのか
それのどこに尻尾をふる価値があるのか
ただ他人の権力に縋っただけですよね?
自分の実力ではありません
それを自分の力だと勘違いしている
ついでに自分達の主人が力があるとも勘違い
ため息しかでませんね
男爵様というのは多少抜けた所がありますがまずまずの人柄です
平民に無茶を言う訳でもないです
ましてや夜になってから身体を差し出せとか言ってもきません
金払いもいいです
ついでに貰いものの余ったお菓子をくれる気前の良さもあります
・・・次々に貴族の家から送られてくる賄賂という名の贈り物が多すぎるというのもありますが
もっとも男爵様の仕事は多すぎるためその余波で結構ハードな仕事になってますからそんなに得していないかもしれません
まあ、おおむね満足できる雇い主です
ところがそんな男爵様をないがしろにするメイドやコックや執事達
まあ、帰宅したのはいいけれど、家族と一切会話をしない男爵様ですからね
ご家族と関係がこじれて使用人達にもその余波が来るのは当然です
しかし、男爵様のお仕事に影響を及ぼすのは見過ごせません
男爵様の
「喉が渇いた」
との要望を受けて紅茶を用意しようとお湯を要求しました
・・・厨房を勝手に使うと怒られますからね
ところが完全無視です
昨日も同じことがありました
完全無視されたので勝手にお湯を沸かそうとしたら怒られました
そして渋々だけどお湯が貰えました
また同じことをやろうというのでしょう
何人かの顔が嗤っています
男爵家に来て3日もたつと大体判ってきます
今回の首謀者はメイド長でした
さすが長年勤めているだけはありますね
実に嫌がらせにも年季が入っています
・・・男の執事ならこうも上手くいってないでしょうね
まあ、実際に動くのはその腹心?のパーラーメイドです
そこそこ地位が高いところに抜擢されたからメイド長への忠誠心が高いとみました
あるいは忠誠心が高いから抜擢された、でしょうか
でも残念だったな
貴方達が敵に回したのはアタイだよ
ついでに男爵様の後ろ盾があるんだ
タダじゃおかないぜ!
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次回、メイド様無双(笑)




