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72 ネックホールダ―男爵の帰還(その1)

男爵様が帰ってきました


------------------------------------------------------------


「家族そろって食べる食事はいいものね」


義母が笑いながら言う





「本当に」


妻が追従して言う





「・・・」


娘は無言だった




まあ茶番だからな


家族ゴッコ


誰も信じていないけど明るい家庭を演じている





・・・不憫すぎで泣けるな









ことの起こりは男爵わたしの家出だった




いやナチュラルに虐待されていたからな


・・・入婿の立場というのは弱いんだよ





そこに『旅人(の葉)』の販売による収入が思いがけずに入ってきた


商売に忙しくなったこともあって家出してみた





だって金さえあれば高級宿に泊まれるんだから仕方がない


いままで可処分所得こずかいなんてものは無かったからな


あるのは婿入りの際に持ってきた貯金いままでのへそくりだけ


それでたまに、ほんとに1年に1回くらい友人と安酒を飲み行くくらいしか楽しみがなかった


・・・男爵オレ、よくガマンしていたな






好きな食事を好きな時に好きなだけ食べられる


本当に幸せをかみしめた


あと、服と酒とつまみと友との遊びも以下同文





しかしそんな幸せな時間も長くは続かなかった


執事とかが家に買えるように説得にくるくらいならば何とかなった


金さえあればどうにでもなった





でも寄り親(が遣わした使者)からの帰宅命令には逆らえない


逆らえば物理的にも爵位的にも死しかないからな


・・・どうやら妻達が手をまわしたらしい





仕方なく家に帰った


そうしたらその日の夕食からさっそく茶番が始まった


・・・今までは無視するか、イヤミを言うかのどっちかだったのに、である





そういえば『旅人(の葉)』を売り出した後もこんなんだった


入手が困難なので持っているだけで男が寄ってくる


夜会とかでチヤホヤされたいから寄越せってことで男爵オレの御機嫌取りをしていたな





大体、取り入ろうとする?


懐柔しようとする?


ならもっとやり方があるだろうと言いたい






それなのに一般的な常識を言うだけ


口で褒めるだけ


おためごかしを言うだけ





・・・底が浅すぎて声も出ない


平民でももっと上手くやるだろうに






この居心地の悪い茶番に付き合い切れない


だから無言で食事を完食した後、とっとと部屋に帰った


とりあえず家に帰れば寄り親の顔は立てたことになるからな

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