7 伯爵家次男の絶望
これは主人公を家から追い出すために、両親にウソの報告をした弟のその後の話です
<ギイッ>
当主の父上が食堂に入ってきた
執事がイスを引く
父上がテーブルの上座に座る
給仕により料理が出される
出されたのはパンとスープと卵とベーコン
あきらかに以前よりも質が落ちているのが目に見えて判る
その朝食を父上と母上とオレが無言で食べる
まるで葬式のようだ・・・
いつまで続くんだろう
そう思いながら食べ終わる
食事が終わり、紅茶が父上と母上に出される
この後、話があるようだ
一礼して席を立ち食堂から出る
扉を閉めた所で「フッ」と息を吐く
たまらずに立ち止まり窓から外を見ていた
すると食堂から声が聞こえてきた
「貴方、これからどうします」
母上が父上に聞いている
「もうどうにもならん」
父上の声が厳しい
全部オレが招いたいことだ
自業自得なのは判っている
姉上がいるから後継ぎになれない
そう思っていた
しかし、王子の婚約者の立場というのは王妃様からの願いであって、王家からではなかった
また国王派の貴族からも反発が多かったそうだ
自分の娘が王子の正妻か側室になればどんな権力も思いのまま
そう思う貴族が多かったからだ
もちろん両親は姉が王妃になることを望んでいた
しかし、ここで弟のオレを跡取りにすると王妃争いへの野心があるとみなされる
出来るだけ慎重にタイミングをみはからわなければならない
それが真実
おれはただ聞けばよかった
しかし自分の考えが正しいと思い込み、婚約破棄された姉上のことを父上にそのまま報告した
「王子の逆鱗に触れた!
学園での非道な振る舞いで姉上はすぐにでも貴族籍を剥奪される!
うちもその被害に遭うと王子が言っている!」
半分本当で半分ウソ
しかし王子の取り巻きをしていたオレのことを両親は信じた
そして姉上が家から放逐された
その後、王妃様からの問い合わせが来た
また自分(王妃様)の直轄領にある屋敷に非難するようにとの連絡も来た
そう言われたこともあり事態は混迷した
まあ結論から言うと、王子の体目を守るためにイロイロ偽装工作をしたわけだ
しかしあれから3年後
姉上が帰ってきた
復讐者として!
「この家にいると危ないわよね?」
「私、オバのツテであたらし所に移るかも・・・」
「あらいいわね、私なんかツテがないし、この家からの紹介状なんて貰っても役に立たないどころか、ね?」
姉上による復讐のウワサが広がったせいで、屋敷のあちこちで使用人が囁いている
沈むと判っている船からは当然逃げ出すわな
逃げることが出来ないわが身を思い涙した・・・