64 ネックホールダ―男爵の家出
まだまだ続きます
男爵様大活躍
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「旦那様、お帰り願えないでしょうか」
男爵家執事が宿まで訪ねてきた
いや帰らないぜ
もう男爵家に帰る必要ないしな?
事の起こりは『旅人』の新製品の販売を任されたことだった
通常の『旅人』一人分で新製品が10個作れる
他に薬草を混ぜるためにその代金と手間賃が加算されるが『旅人』の3割程度の値段になる
それを『旅人』と同じ値段で売る
当然、ぼろ儲けだ
まあ、当然、忙しくなって朝から晩まで走り回ることになる
『旅人』と薬草を調合する所
調合する人間を募集して面談して採用不採用を決める
新製品の届け先の決定
新製品や『旅人』を寄越せという貴族のお願いという名の脅迫
そして運搬となぜだか出てくる荷物を盗もうとする盗賊からの防衛
その他イロイロ
文字通り街中を走り回ることになった
当然、仕事が終わるのが真夜中になることもある
というか真夜中にしか帰れない
そうすると家の門が閉まっているのだ
大声をあげても誰も開けてくれないなんてのもあったな
だったら無理に男爵家に帰らなくてもいいんじゃないか?
幸い金ならあるし?
そんなわけでそこそこの宿に泊まることにした
男爵家に帰るよりも近いしな
そしたら快適なんだ
宿に帰れば食堂で出来たの温かい食事が食べられる
それも朝晩
たとえ夜遅くに帰っても温かい食事が出るのには驚いた
そこそこ高い宿だからな
あと、ベッドや部屋はいつも綺麗になっている
そりゃ貴族の家の調度品よりも質は格段に落ちるだろう
でも清潔にしようとする心使いがある分、嬉しい
・・・男爵家なんて妻と義両親に虐げられているから、使用人の態度もそれなりなんだ(涙)
もうこの宿で一生終えてもいいんじゃね
そう思ったね
そうしたらある日執事が訪ねてきた
そして帰ってくるように懇願してきた
・・・何かあったのかね?




