59 ネックホールダ―男爵の災難
まだづづきます
夜会に出たら絡まれました
・・・どんなに不幸なんだと言いたい
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「『旅人』を寄越せっ!」
とある夜会に出るとどこかの貴族のくそがk、ではなく、おぼっちょまが怒鳴ってきました
・・・困ったね
大体、歳が半分程度の子供相手に凄まれても困惑するしかない
叱ることはできないし
かといっておべっか使うわけにもいかない
・・・使ってもいいけどな(笑)
さあどうしたものか?
さっきから延々と罵倒してくれているがどうやって事態を収拾するつもりなんだろうな?
いや何も考えてなさそうだ
その辺も考えて発言するくらいの教育はしておいて欲しいものだ
上位の貴族の跡取り様なんだから
まるっきり考えていなさそうなが透けて見えるから困ったものだ
底が浅すぎるのも考えものだな
どんなに罵倒されようが、全然堪えない
どこまでいくのか見て見たくなってきた
神妙な顔をして聞いてみた
「もうやめなさい」
途中で声がかかった
どうやら父親の登場のようだ
困った顔をしていた
そりゃそうだ
あちらは中級貴族
こちらは下級貴族
両者には天と地ほどの差がある
だから息子君も勘違いしてやりたい放題だった
たしかに大抵のことはやっても問題ないが、だからといって何やってもいいというものではないんだよ
身分が低くても貴族には寄り親というものがいる
それでも相手との身分に差があれば、さらにその寄り親といった風に段々上流に遡る
そうして最後は同格だ
そうなると格下相手のなあなあでは済まされない
きっちり貸し借りの話になる
男爵なんて他の貴族からみるとゴミみたいなものだ
だから息子君も間違えた
だから
「迷惑をかけたようだな」
伯爵様が謝ってきた
「いえこちらこそ失礼をしたようで申し訳ありません」
もちろんかけらも思っていないが謝った
様式美というやつだ
この場は謝って穏便にすませる
その後は寄り親が出てきて貸し借りの話になる
貴族の世界のお約束の展開だ
「いや、アレが手に入らなくて困っていてな・・・」
伯爵様が言い訳というか愚痴を言ってきた
「いえ利発そうな御子息ですね、これからが楽しみでしょう」
御世辞を言う
しばらく話をしていたら昔にけんか別れした友人の寄り親の貴族だった
あ~、やっちゃった系?
友人だけでなく親類縁者から寄り親まで一蓮托生で『旅人』が渡らないようにしたからな
伯爵家の当主(父親が)『旅人』がなくて苦労しながら仕事をしているのを見て息子が怒ったというわけだ
その不満が夜会で酒を飲んで出た
「・・・申し訳ありませんでした」
素直に謝ったよ
悪いと思ったからすぐに謝った
もっとも社交辞令と言い張れば通るくらいのレベルだけどな
完全に悪いと言えばコッチが寄り親から恨まれるからな
せっかくの儲け話をふいにした、と
・・・しかしこの始末はどうすればいいんだろうな?
寄り親に丸投げでいいんだよな?




