51 とある悪党の下っ端の悲哀
悪党の下っ端のお話です
前の幹部から見た話が全部ではありません
っていうか下っ端の方が酷い目にあっていました
それを知らない幹部達
管理者としてイイのか?と心配してしまいますね
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「ごきげんよう」
そういって娘が眼の間を通って行く
「「「「「「ごくろうさまです」」」」」」
仲間と一緒に即座に頭を下げて挨拶をした
え?
女相手に情けない?
おまえらはアレを知らないからそんなことが言えるんだよ!
下っ端(オレ達)、いや普通の人間では太刀打ちできない存在だ
ボスの部屋に行くって言うんだ
だったら素直に通してボスに相手をして貰おう
上司っていうのは部下ができないことをするから高給を貰っているんだからな
話は少し前に兄貴達が仕事をしたことから始まった
ダム兄貴とディー兄貴
面倒見がいい兄貴達だ
ある日、兄貴達が怪我した状態で帰ってきた
そりゃオレ達の仕事は底辺だ
決して褒められたものではない
時には失敗することもあるだろう
でも経験豊富な兄貴達がやられると思ってもみなかった
結構ヤバい仕事だった
夜中に人を送って返り討ちにあったってのは聞いていた
一体どうやったら男一人を倒せるのかと仲間達と酒を飲みながら噂した
同じ地区の他の店が繁盛しているのを妬んでイヤミを言ったら潰された
これは、貴族相手の店なんだから、その力でも使ったんだろうとのウワサだ
目があっただけで人が倒れた
いや、無理すぎてガセだろ?
どこか秘密の場所で派手に賭博をしている
これは本当
場所はどこかの御貴族様の館
スゴイ儲けているらしい
・・・本業(香水)で十分に儲けているだろうに、まだ金が欲しいんかと思った
2日くらい眠らなくても大丈夫な薬を陰で作っていて、その効果をアウトロー達で試している
・・・たまに顔を見なくなるやつがいたっけ?
アマン商会はやばいこと間違いなし
酒場での常識だ
もっとも上はそんな話を酒場での与太話としか考えていなくって信じていないんだけどな
無能な上司のせいで使い潰された兄貴達が不憫だ
ある日、そんな奴が訪ねてきた
オレはその時いなかったんだが案内した奴の話では近くにいるだけで震えが来たと言っていた
「いやいや、お前、ビビりすぎだろ」
仲間と酒を飲みながらからかった
半分はカラ元気だ
不気味な存在はたまにいる
関わるだけでなぜだか不幸になるとか、だな
たぶんそんなヤツ、いや小娘なんだろう
近くに来たら真っ先に逃げようぜ
酒を飲みながらそんなことを言っていた
まさか関わることになるとは思ってもみなかったからな
それはボス達も同じだったようだ
アレ(サラ)が毎朝、訪ねてくるようになって3日目
とうとう逃げ出した
朝、理由を付けて仕事場に来なかった
1時間も遅れれば諦めて帰るだろう
前日にそう言っていた
当日、いつものように朝一番で訪ねてきた悪魔はボスが不在と知って機嫌が悪くなった
「あらそうですの?」
言っている言葉は穏健
顔は笑顔
だが目が笑っていなかった
視線だけで人が殺せたら、そんな怨念が出ていた
おかげで目を合わせた途端、息苦しくなった
思わず喉のへんを触った
何もない
でも息苦しい
その後、身体から力が抜け、床に倒れこんだ
薄れる意識の中、仲間がオレ同様に床に倒れ込むのが見えた
後で知ったのだがアジトにいた仲間は皆、悪魔に会った途端に倒れたそうだ
御貴族様というのは産まれがただ偉いとばかり思っていた
産まれた家が貴族だっただけ
ただ幸運な人間
それが間違いだと知った
あれは人ではない
人の形をした何か、だ
関わりになっちゃいけない類の存在
ボス達が悪魔にかかわると決めたんだ
責任を持って対応してもらいたい
こっちに振らないでくれと言いたい
御機嫌を取るためだったら頭くらい下げるぜ
それくらいで済むならば安いものだ
そう思う
・・・アンタが手を出したいって言うのなら止めないぜ?
でも関係ないところでやってくれよな




