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50 とある悪党の親玉の日常

主人公サラの店にイヤガラセに来たゴロツキの親玉の話です


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「昨日の仕事ですが、成功が73件、失敗が1件でした」


そう言ってオレの秘書兼参謀が朝の報告をしてきた





「は?失敗した?」


親玉オレは驚いた


失敗しないようにするのがオレの仕事だ


誰がやっても ~は言い過ぎだが~ 成功するようにきちんと手配していたはずだ


人間も物も


そして各方面の賄賂も





誰だ、オレの顔、いや、一家の看板に泥を塗ったのは?


見つけ次第、落とし前をつけるぞ


ババア相手か、オトコ相手か、外道相手かのどれかの店を選ばせてやろう


全部持ち回りでもいいな


もちろん、どのルートでも数年後には身も心もボロボロになるのは確実だ


覚悟しておけや







こほん


失礼


見苦しい所をみせたな





では仕切り直しだ




あ~、はじめまして、だな


オレは一日一悪をモットーとしているグローリア一家の3代目だ


三代目か、若と呼んでくれ


ああ、親しみを込めて呼んでくれて構わないぞ


でも、あまり慣れ慣れしくすると近くの汚池に沈めるぞ?


肩なんか組んできたら重りを倍だからな


気をつけて喋れよ?





ウチの一家はスラムのど真ん中に居を構えている


当然、仕事は非合法のものばかりだ


花街、賭博、高利貸し、人材の斡旋と多岐に渡っている


『ない仕事はない』が合言葉


どんな仕事でも断らないをモットーだ





そんなウチだから、ひっきりなしに仕事が舞い込む


もちろんそれなりの人材を抱えているのでお客様には常に満足してもらっている


達成率100%、顧客満足度100%がウチの自慢だ





そんなわけで毎朝、仕事を始める前に昨日の仕事の状況を報告を受けるのが日課だ


オレの一番の楽しみでもある


失敗の件数がない、ノーミスの報告を聞いたらノリノリの気分で仕事ができる




ところが今日に限って失敗の報告がきた


それが冒頭のシーンだ




一瞬で脳みそが沸騰したな




「失敗したのはどこのどいつだ?!」


オレが吠えると、参謀兼秘書が答えた


「ダムとディーです」




ウチの中堅じゃねえか?!


新人ならいざしらず ~いや、失敗したら汚池にポチャンだけどな~ 中堅ではありえん


大抵のトラブルなら普通に処理ができる


突発事故があったとしても笑顔で口笛を吹きながら乗り越えるだろう





何が起こったんだ?


どこか ~他の組織か御貴族様とか?~ とバッティング(鉢合わせ)でもしたか?




そう聞くと秘書が1枚の紙をとりだした




説明するよりも読んだ方が早いってわけだな






え~っと


なになに?




店員に自分からぶつかりに行って難癖を付けた、だと!?


こっちが完全に悪人じゃねえかっ!





賄賂はどうしたんだよ、賄賂はっ!


隊長には結構な金額の賄賂を毎月渡していただろっ!


それでこの報告書かよっ!




読みながら思わず突っ込んだ


大体隊長の給料よりも多い金を賄賂として毎月払っているんだぞ?


たとえ犯罪くろでも無罪しろにするだろ?!


今までだってそうしてきただろうに




はっ


ウチよりも多い金が出た・・・のか?


それしか考えられん




しかしウチだって他からすると非常識なくらい高額な賄賂を贈っているんだぞ?


おまけに部下と一緒に酒場に来た折にはすべてこっち持ちの無料タダ


それなのに逆買収された?!




それともどこからか横やりでも入ったのか?


金よりも影響が大きい権力を持っているあたりから




どこが敵に回ったのか悩んでいると続きを読むように促された




え~、なになに?



小麦粉が目に入って擦ったから目が見えなくなった?


喉に入って咳をしたので呼吸ができなくて死にそう?


・・・ありえないだろう?





どうやったら小麦粉でそうなるんだ?


絶対に何か危ないもの使っただろう!?





その前に小麦粉の入って袋ってなんだよ?


普通は男が肩に担いで運ぶ大きさだろ?


小娘が持っていて投げつけた?


嘘つけっ!




それに小麦粉って何だよっ


小麦粉っ


そんなもので失明したり窒息したりするのか?!


だったら胡椒なら人が死ぬのか?






あと、一体、どれくらい賄賂を積めばここまでのことができるんだ


そう言いたい


ウチは暴力と金だけは腐るほどある


あ、あと酒と女もか





それらを使ってイロイロ取り込んでいるんだ


それにもかかわらず逆買収?


ありえんだろ・・・





敵は敵として情け容赦なくぶったたく


妥協も斟酌もない


普通そこまでやらないぞ


最後には相手が潰れるか、自分が潰れるか、の二択だからだ





ところが今回は頬を叩いたら、往復ビンタの上に足蹴りされたようなものだ


バカなのか、利口なのか




形振りをかまっていないのか、加減を知らないのか、とも邪推したくなる


それともひょっとしてこちらを怒らせようとしている?





悩んでいる所に秘書から声がかかった


小娘から『こんど一度おじゃまさせてもらいます』との伝言があったそうだ





失敗したやつら(ダムとディー)に小娘が伝言を託した、だと?


苦しんでいるにもかかわらず?




自分で地獄にたたき落としておきながら平気で伝言を頼む


その根性が判らんぞ

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