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45 とある商会の下働き

サラのアマン商会に雇われている若者の話です


話に出てこないだけで、商売を続けています


----------------------------------------------


「いたたたたっ!」


男が突然、腕を押さえて蹲る




「おい大丈夫か?」


一緒にいた男が、介抱しながら状態を見る



そしておもむろに言った


「あ~、こりゃダメだわ、骨が折れているわ」



・・・なんなんだこの茶番?






はじめまして


オレ、いや私はアマン商会の店員のサムと言います




接客から店の掃除となんでもやるのが私の仕事です


早い話が店の店員です





ウチの商会は貴族向けの香水を作って売る仕事をしています


もっとも香水が作れるのは会長だけです


何と言っても元貴族ですから




魔法が使えるというのが貴族です


その中でもさらに特別なのがウチの会長です


なんでも世界で唯一、だとか


ちょっと自慢したくなりますね





最近でも貴族向けのバラの香水だけでなく裕福な庶民向けの香水を始めました


バラというのは御貴族様の庭にあるくらいの少なさですが、香りが良くて大量に咲いている花ならいくらでもあります


キンモクセイとか、料理に使う香草とか


それが当ったせいで店に客が大勢来るようになりました




え?


バラの香水の時から客が多いのでは?、ですが?


いえいえ、御貴族様は店に来ませんよ


呼びつけられるだけ


そして裏門から入って下っ端の召使いに渡すだけ





まあ、一度に大量の香水を運ぶので、ある意味楽かも?


なんでも恩に着せるために独占しているのだとか


・・・貴族って腐ってやがる




一方、庶民向けの香水は、裕福な商会の奥さまや娘なんかが、店に来て匂いを嗅ぎ比べて自分の好みの香水を選ぶ


おかげで大変です


騒がしい、いや姦しい上に、時間をかけて選びます


ずーっと隣で控えていないといけません


・・・香水なんて容器が小さいからやろうと思えば盗られ放題なんですよ




手くせの悪い奴っていうのは、男より女の方が多いんですよ?


捕まえると訳のわからん言い訳をしやがる、いや、されます




・・・いくら着飾っても中身が腐っていてはなんにもならないと思うのは私だけでしょうか?





仕事がなくて必死に勤め先を探していた私を雇ってくれた会長には感謝しています


タダでさえ下町育ちの人間はロクな職につけなくて ~荷運びやら汚物掃除等々~ その上賃金が安いから生活が苦しいです


いえ、職があるだけましかもしれません



多くの人が少ない職を取り合うのです


あぶれる人の方が多いです


私もそんなうちの一人でした


本当に困っていました




そこで私を拾ったのが会長です


私だけでなく他の人達も、です


おかげでなんとか暮らしていけているようになりました





「・・・え?仕事が無い?じゃあウチに来る?」


そう言ってホイホイ雇いいれた時は自分のことながら心配になりましたけどね


この人、頭大丈夫か?!


本気で疑いましたね





後で判ったことですが、会長は庶民向けの香水やら、傷薬やら次々に商品を増やしていくからと言ってはホイホイ雇っていました




手くせの悪い奴は商品を勝手に持ち出して売ったり、店の金を盗んだりします


そんなやつを雇ったら大変です


会長にはちょっとは気をつけろと言いたいです


・・・いや実際に言ったけど聞きませんでしたけどね




まあ、そんな抜けている会長を助けるのがオレの役目だと思います


・・・そう思っている店員は一杯いるのが笑えますけどね


自分の苦労というか決意が空回りしているみたいで







そんな残念な会長ではあるが、商品を増やしていっているのでかなり儲かっています


その分、敵が多くなるのも必然です




香水というのは今までになかった商品 ~高価だから御貴族様しか買わなかった~ だから売り出しても他の店と被らないと思っていました


ところが売れて儲かるとなるといろんな奴が甘い汁を吸おうと群がってきます


砂糖に群がるアリのように、です





その辺は会長がうまくやっているようです


さすが腐っても元貴族ですね


いや腐ってなくて、いい匂いがしますけど




もっとも完全ではないので、たまに、いや、けっこうな頻繁にガラの悪いヤツらが店で騒いだりします




金を渡せばどこかに行ってやる


まあ、お手軽なお仕事ですね




それが冒頭の事件です




まあそんな脅しが通用するのは他の店だけです


ウチは会長のお金をそんな無駄なことにつかいません


店員のメンツにかけて銅貨1枚たりとも渡しません


いまだに支払いをしていないのが我々店員の自慢です




言葉巧みに断りました


相手を持ち上げ、自分を卑下しつつ、でも言質はとらせない


・・・自分の才能が怖くなりますね




街の警備隊が来るまでに持ちこたえたらこちらの勝ちです


楽なゲームです





と思っていましたが、なかなか来ません


オカシイですね?


いつもならもう到着して引き渡しています




と思ったら会長が帰ってきました


「なにやっているんです?」


そう言って会話 ~怪我の治療代を払え!、いや断る!~ に入ってきました




そうしたら男たちの口元が一瞬、『二ヤリ』としました


何かがオカシイ


そう感じました





いつも通りうまくやっているはずなのに何処かが違う


でも何かが判らない


不安が徐々に広がっていきました




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すみません


長くなったのでここで切ります


次の話は視点を変えてお送りいたします

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