43 とある下っ端の父親の苦労
すみません、投稿をするのを忘れてました
まさか自分で前書きで謝罪するとは思いませんでした(汗)
前話の下っ端君の父親の話です
親というのは何処の世界でも大変ですね
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「静養することにして、とりあえず領地に行っておけ」
息子にそう言ったところ
「ご迷惑をおかけしてすみません」
そう言った後、頭を下げて出て行った
ここは優しく声をかける所だろう
だが案件が案件なので、判っていてもそこまで気が回らない
なにせ我が家 ~ ピリオズステート男爵家~の一大事なのだから
事の起こりは帰宅したところ、玄関で息子につかまったこと
いや、学園に入ってすぐに騎士団の次男にくっつけと言ったことか
我が家は一応、武官の家系で、騎士団に所属している
といっても主に武器調達、食料輸送の後方支援である
男爵風情は、どんなに剣の腕が良くても目立つ指揮系統には入れないのが厳しい現実
すべては家柄で決まるのがこの国の不文律というわけである
まあ、手っ取り早く言えば我が家は代々取り巻きの家系だということだ
私も団長の腰ぎんちゃくだからな
これも暮らすためだから仕方がない
この国では御機嫌とりで仕事が回る
息子も将来は私と同じ道を進むだろうというのは生まれた時から決まっている
大抵は家柄を自慢するわりには実力か人間性か常識かどれかか、あるいは複数が足りないというのは笑えない現実だ
だから付き合うだけで苦労する
できるだけ早く取り巻きになればそれだけ有利になって被害も減るというものだ
多少素行が悪いと噂されている騎士団長の次男であってもガマンして付き合っていかなければならない
ならば少しでも有利に働くように取り巻きになることを命じた
普通はそれで済むはずだった
多少の苦労の対価に普通の暮らし
私はすべてを力で押して解決する団長に振り回されているが、そのおかげで妻と息子と娘と一応は平穏な暮らしを得ている
息子も多少、いや大概の行動がオカシイ次男に付き合った対価として、家つながり、派閥つながりで利益を得る
まあ、こんなものだろう
そんな半分あきらめ、半分損得ずくの日々を過ごしていた
ところが今回は団長の次男が敵に回した相手が悪かった
おとなしい羊だと思っていたら狼どころか熊だった
いや、執念深い所を見ると蛇になるのか
アレ(パヒューム)は香水を武器に女をまとめ上げて仕返しをしてきた
女というのは美容んのためならば憎い平民の小娘であろうとも平気で利用する
敵は小娘なのではなく、同格の貴族なのだ
たとえ爵位が上だろうが下だろうが関係ない
女にとっては己のプライドのみが生きるすべて
侮られたらやり返す
下と見たらとことん見下し、上がってこようとするならば全力でたたき落とす
美醜の前には理屈も常識もない
ただ批評と批判と自慢のみ
そこをうまく突いた手並みは見事としか言いようがない
感心するよりも呆れた
その手腕だけではない
その規模の大きさにも、である
大きな変化は後になって大きな反動がある
それを無視するかのごとく次々に手を打って行く
団長の次男の騎士への昇進の妨害
王家と対立する貴族派へのみ香水を納入するという肩入れ
国王派を離れて行った筆頭のナウウエルリバーミッドアイランド家への新型の香水の横流し
薬草といった医療関係を押さえることで傷が絶えない騎士団へ圧力をかける
直接間接、有形無形、ありとあらゆる方法で嫌がらせが行われた
団長次男の憎しみは募るばかり
とうとう暴発する直前にまでなった
それに息子が巻き込まれた、というわけだ
こんなときは早急に逃げるに限る
実行犯にされて罪を押し付けられてはたまらない
だから友人知人、血縁を使い根回しをしなければ
だいぶ貸しが減り、借りが増えることになるだろう
その分団長か騎士団から貰わないといけない
仮に責任を押し付けられたとしても代わりに損失を埋めるものを貰わないとな
いや分捕る、だな
単独だと妬まれるし、少ししか利益がでない
だから他家と組んでになるだろう
考えることが多すぎる
頭が痛いものである
息子からの報告を受けてここまでできるように成長したのを誇ればよいのか
すぐにでも対策が出ないことを嘆くべきなのか
思わず家を注いでからの数十年を思い返した
完全に逃避だな・・・




