42 とある下っ端の苦悩
騎士団長次男のとりまき、その5のお話です
その5とは一番下っ端のパシリ様です
いつも「あれ買ってこい!」とか「これやっておけ!」と雑用を押し付けられた上に、代金を踏み倒される役ですね
・・・御愁傷様です
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「女狐には天誅を与えなければならない」
騎士団長の次男様がオレの方を見ながら言った
「その通り!」
これは、とりまきその1
「よかったな!これで一人前だぞ!」
「名誉が転がり込んでくるな!羨ましいかぎりだぞ?」
「見事にやり遂げたら認めてやるぞ!」
順にその2、3、4の言
いつの間にかオレがパヒュームを殺すことになっていた
「ちょ、ちょっと待って下さい!いきなり天誅とかダメでしょう!?」
そう抗議したものの
「あ”、なに言ってるんだ?」
(騎士団長の)次男様に凄まれた
「ここで尻ごみするとは情けない」
「ここはオレがやりますって自分から言う所だろ?」
とりまきが口々に文句を言ってくる
いくらウチが男爵だからって、これはヒドイ
犯罪者になれと強制されているのだから
元はといえば、次男様が王子様とバカやったせいだ
その報復で、騎士への取り立てが何回か潰れた
昇格は1年に1回だからこれは痛い
同い年どころか、見下していた年下で格下の家の見習いが騎士になったのだから荒れに荒れたな
オレなんか憂さ晴らしのために訓練と称してボコボコにされた
下手に模疑剣を避けると『なまいだ』と全員がかりで叩きのめされた
・・・性根が完全に腐っているのが騎士になれない理由だと思ったな
まあ、完全な逆恨みが件の元令嬢に行った
最初は正々堂々と乗り込んで断罪する予定だったらしい
でも現騎士団長の家長様に却下されたそうだ
・・・親はまともなんだよな
ところが、それでは腹の虫が治まらない次男様
夜中に店もろとも焼いてしまえばよい、となった
もちろん予めザックリ始末した上のこと
なぜだか汚れ役がオレに回ってきた
いや、判っていたんだけどね
見下されているって
所詮は使い捨ての駒だって
でも他の貴族の家が刺客を送って返り討ちにあった上、その死体が広場に晒されているのが現実だ
よっぽどの用心棒が付いているらしい
一説によると共謀している商国の商人が付けた凄腕の傭兵だとか
あるいは誰も護衛の姿を見たことがないので伝説の暗殺者が護衛だとかいう噂もある
そんな所にノコノコ出て行ったら次の日には葬式だ
でも次男様も他のとりまきも知らないらしい
多分言っても
「怖気づいてホラ吹いている」
くらいかな?
自分に都合の良いことしか耳に入らない人達だ
あるいは、都合の悪いことは聞こえなくなるか、無視する人達だから
しかしどうしたらよいのかね?
このままいけば王都に火付けをしたとして問答無用で犯罪者として処刑が待っている
でもやらないと逆になんかかんか理由を付けてイジメ殺される
どっちを選んでもロクな未来がないな・・・




