37 王妃様の驚愕Ⅱ
王妃様視点に戻ります
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「あんなのは私達に嫉妬した只の言いがかりですわ!」
クラッ
「王妃様、アレは自分の至らなさを私たちの責任にしているだけですので信じてはいけません」
クラクラッ
「わたくしたちに何の恨みがあるというの?逆恨みもいい加減にしてほしいですわ!」
クラクラクラッ
目眩がしてきましたわ・・・
国王派の今年二回目の夜会が行われました
しかし大半の貴族が出席しないというまさかの展開でしたわ
主要な貴族はいる
居ないのは主に下級貴族達
一体どういうことなのか!
思わず問い詰めました
しかしいつもわたくしの周りにいる者は皆、顔を見合わせて不思議がるばかり
そこに近寄ってくる者がいました
私の近く ~といっても取り巻きがいるのでその外側にですが~ に寄ってきた後、目線と頭を下げ、私から声をかけられるのを待つ姿勢になりました
貴族の社会では目下の者が目上の者 ~つまりわたくし~ に声をかけるのは許されませんからね
たしかこの者は
「ナウウエル、リバーミッド、アイランド子爵夫人?」
間違えないように名前を確認しながら声をかけます
するとスカートの両側を摘み、返礼をしてきました
名前が合っていたようで良かったわ・・・
たしか建国以来、続いている家の者で、身分は低いものの代々王家に忠誠を誓っていたはず
代々堅実を旨とし、今代も実直さが取り柄のはず、でしたわね
「何か知っているようね、話すことを許します」
そう言うと今回のことの顛末を話し始めました
クラクラクラクラ
思わず目眩がしてきましたわ
聞きたくはなかった事実の数々が!
ところが名差しで非難された者達の反応は冒頭のようでした
自分達の悪行がばれたと言うのにすごい言いようです
聞いているだけで頭がおかしくなりそうですわ
『わたくしの20余年を返して!』と言いたいですわ
あまりにも酷い性格をしていたので長い年月をかけてまともにしたつもりでしたが、無駄だったようです
わたくしは隣国の王女でした
正確には隣国の隣国、つまり隣隣国ですわね
昔、といっても30年ほど前でしょうか
国同士の関係が微妙に悪くなっていました
ですからお互いの王族や上位の貴族での関係を密にすることで争いを回避しようとの動きがありました
早い話が婚姻外交ですわね
お互いに身内を預け合えば下手なことはできない
もしもやったならば身内を犠牲にしてと非難される
そんな一環としてわたくしはこの国に嫁いできました
この国に来て思ったのが『貴族達の底意地の悪さ』です
自分が損をするのは許さない
他人が得をするのも許さない
楽をしたい
身内であっても他人への優しさがない
できる者がいれば足を引っ張る
その他、考えつくかぎり、いえ、考えるのも見るのも嫌になるくらいの酷さでしたわ
わたくしの生まれた国では、上は貴族から、下は平民まで笑って暮らしてしました
困ったときはお互い様
助け合うのが普通です
ところがこの国では、同じくらいの国土、同じくらいの人口、同じくらいの生産物であるにもかかわらず大半の貴族がおかしかったですわ
・・・少数でしたが貴族にも立派な者はいるのが救いでしたわね
これでは国同士の仲が悪くなるのは当然です
ですからわたくしはできるかぎり貴族の態度を改めさせることにしましたわ
時には王族の権力を振りかざしましたわね
その甲斐あってか、近年ではようやくまともになりました
おかげで近隣の国同士の仲も良くなってきましたわ
苦労が報われた
そう思っていましたがわたくしの目に見えるところだけだったようです
陰では昔通りの無法と無体が横行していました
いくら王妃様がほかの国から嫁いできて立場が弱いのでとりまきをつくったとしても
それで建国以来の家系をないがしろにしたとしても
息子がバカやって金の卵を産む鶏を手放したとしても
香水が少なくて割り当てが0同然でもガマンしてきました
それは国王派の要だから
でもとりまきは別です
王族の後ろ盾をイイことに遣りたい放題の見下し放題
建国以来と、中興の貴族にしてみればたまったものではありません
今までの先祖の分と自分の分の忠誠はなんだったのか
そう言うのも当然です
そして見限って離れていくのも当然です
現在は国王派と貴族派が対立しています
大抵はどちらかの派閥に入ります
寄り親、寄り子の関係で自分の意思に関係なく、ですわね
でもどちらかに入らないと貴族として(物理的に)死んでしまうというわけではありませんわ
となれば、国王派から離脱するのも当然です
国に対しての義務は納税と式典の出席だけです
どこにも国王のとりまきにならないといけないとは書いてありません
早い話が中立の立場になる、ですわね
何代か昔にも似たようなことがありましたわ
若くしてお亡くなりになった国王の年若い息子と、国王の弟のどちらが即位するかで国が二分しました
そして見難い争いが起こり、ついには死人がでる始末
そこで良識ある者達が両者から離れ、中立派としてまとまり、内乱になるのを抑えたとか
今回も良識ある者達が事態の収拾のために同様の行動を起こしたようです
・・・国王派、いえ、わたくしはどうすればいいのでしょう
途方にくれましたわ




