36 とある子爵の最後の忠誠
国王派のパーティの続きです
前回は王妃様視点でしたが、今回は別の視点にしてみました
そちらの方が面白いから?
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「一体どういうことですの!?」
王妃様が叫んでいます
それはそうでしょう
国王派のパーティだというのに半分しかいないのですから・・・
事の起こりはパヒューム(サラ)から納入されるはずの香水が半分しかなかったことです
なんでもどこかの家の執事が香水を寄越せと押し掛けたのが原因だとか
店を訪れ、首を縦に振るまで帰らないというのを連日繰り返す?
香水を作る魔法を使う時間がなくなれば当然、香水は手に入らなくなります
そんなことも判らないとは・・・
自分のところの執事にそんなことをやらせた貴族は、早晩、潰されることになるでしょう
物理的にではなく精神的にですが
まあ、貴族派内のゴタゴタですから私達国王派には関係がありません
勝手に潰しあってくれ、です
問題なのはその後です
香水の量が少なくなると当然のことながら貴族派から国王派に渡される量も減ってきます
そうなると割を食うのは私達弱小貴族
王妃様はトップですから優先的に香水が割り当てられます
そこまではガマンできます
王族あっての派閥ですから
取り巻き達が残りの香水を独占していることにもガマンしましょう
100年後になっても(子孫が)憶えていて、権力がなくなった頃にネチネチと利子を含めて取り立てくれることでしょう
貴族ですから、恨むのも、恨まれるのも日常茶飯事
だから下級貴族は皆、ガマンしていました
いずれ仕返しをしてやる、と心の中で思うのが唯一の抵抗です
でもその後がいけません
前回のお城で行われた国王派の集会でのことです
王妃の取り巻きのバカ達がやらかしました
自分の家や親族が原因で金の卵を産む鶏を取り逃がした
その後も、下手打って怒らせて、復帰する目を潰した
その他色々やらかして今の現状を作った言わば戦犯一派
それにもかかわらず自分達で独占しておいて立場の弱いものには、ろくに香水を渡さない
下手したら割り当てが0というところもある
なにせ香水が以前の半分しか手に入らないのですから
仕方がなく、昔ながらの方法 ~花を乾燥させたものと一緒にドレスを保管したり、香木を燻して匂いをつけたり~ を使う下級貴族達
でも手軽な上に匂いが強い香水には程遠いです
それなのにそんな苦労も知らずに「古臭い」とイヤミを言ってました
あるいは自分よりも低い爵位の娘を仲間で囲んで貶しまくる
それが前回の王妃様が主催した国王派での集まりの見えないところで起きた事件
まさにやりたい放題
香水が割り当てられなかった家の娘に向かって、香水の匂いをプンプンさせた娘が「なんか臭くないか」と
言う
明らかに見下した態度
いつものありふれた風景でしょう
言っているのが戦犯の一族でなければ
貴族にとっては耐えることも生活の一部です
だからといってどこまでも耐えることはできません
限界があります
婚約破棄の一件
香水の一件
ギリギリまで不満が高まっていました
そんなところに最後の一撃です
こいつらと一緒にいてもこの先意味はない
そう思われたら人心が離れます
たとえ今の当主ができた人だとしても子供が、親族を御せないという一点でおしまいです
下級貴族はすべて離れていきました
王妃様はそのへんを知りません
とりまき達が隠すようにしていますからね
では王族に対する最後の忠誠といきましょうか
たとえ他国から嫁いできたとしても王族は王族です
建国以来、この国を微力ながら支えてきたナウウエルリバーミッドアイランド子爵としての最後のご奉公です
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