31 ワンブリッジ家バトラーの災難(その3)
学園でサラをいじめていたホークマスター子爵家令嬢の元婚約者(ワンブリッジ家)の執事バトラーの話の続きです
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「素直にナインス家に新作の香水を届けて、ウチへの妨害を取り消すと言えばいいんだよ!」
いい加減、焦れてきたのでオレ(執事)は思わず叫んだ
そうしたら商会長のサラはハトが豆鉄砲を食らったような顔をした
オレが大声を出したこともあるだろが、自分の根回しがすべてバレていると気がついたのが大きいようにみえる
しかし、元は貴族令嬢なのに使用人(執事)同士が裏でつながっているのを知らなかったようだ
サラの驚いた顔を見て『そろそろ潮時か?』、そう思った
いやがらせとしか思えない『のれんに腕押し』による膠着状態が長いからな
一体何回、アマン商会(サラが会長をやっている商会)に出向いたと思っているんだ?
最初は香水が入らない元凶がサラだと判った時だったな
その後はいやがらせ(香水が入手できないようにしている)を辞めるよう説得するために毎日通いつめた
・・・あれ?
何回、王都の下町のココ(アマン商会)に来たんだ?
昼は執事の仕事をしながら、時間を作ってサラの説得
夜は情報収集
本当にオレは頑張った!
もっともその代償は大きかったけどな
眼の下にクマができるは、疲れ果てて身体はボロボロだ!
おまけに執事仲間には貸しが5件ほどと、奢った酒代(自腹)が凄いことになっている
ああ、ちょっとだけ説明しよう
良い執事は夜、主人の夜の食事が終わってひと段落すると酒場へ向かう
酒を飲むためではなく執事同士での情報交換だ
まあ、酒も飲むが、それは会話の潤滑剤としてだな
ちなみに悪い執事は昼は横領に励んで夜は寝ているぞ?
執事仲間に話を聞くとともに、調査を依頼したことで今回の全体が判った
サラの香水を下級貴族に分配するのがナインス子爵
まあ、上の貴族のお気に入りで、言わば筆頭子爵だな
そこの執事からの証言から、今回の絵を描いたのはサラだということがわかった
もちろん子爵様に要求したわけでも、交換条件というわけでもない
ただ、香水の納入量が前回よりも減った原因について答えただけ
「貴族派の中に学園で私をイジメていた者がいることが判った。おかげで魔法に集中しにくくなって生産量が減った」
細々としたことは絶対に言わない
貴族派ほのめかすだけ
責任?
なにソレ?
美味しいの?
そんな感じ
後は子爵様の忖度
某家、いや一族への香水の割り当てがなくなった
その噂を聞いたサラからジャコウとかいう新作の香水が贈られた
某家の令嬢が婚約破棄された
その噂が出た後で某商人から子爵様へキンモクセイという名の試作品の香水が贈られた
どっからみても黒幕は丸わかり
「もちろんタダでとは言わない。香水が手に入ったらその金額の3割を直接商会に払おう」
要は帳簿に載らない形で払うので税金を払う必要はない、だな
バレそうになれば証拠隠滅する特典付き
「望むならば御用達(の商人の看板を与えて)も良い」
相手が貴族以外ならば無理が通る ~通行の優先権や荷物の検査を拒否できる特権あり、早い話が密輸をし放題~ だな
「望むならば領地のモノ(小麦とかの農産物)の2割までなら許そう」
販売の特権の一部を譲渡しよう
貴族としての謝罪?譲歩?としては破格の条件を出した
ところがサラの返事は
「破格の条件ですが、私は関係がなくて何もできないので受け取りません」
だった
「こちらが下手に出ているから調子に乗っているのか?分をわきまえるのも必要だぞ?」
ここまで譲歩したのにもかかわらず手を払うわけだから、タダで済むとは思わないで欲しいぞ?
ココまで譲歩したにもかかわらず拒絶されたと言えば賛同する貴族もあるだろう
貴族にはそれなりの暗部があるからな?
毒殺とか謀殺とか闇に葬るとか兵糧攻めとか
わかっているだろうな?そう思いながら睨みつけた