200 ネックホールダ―男爵家の小ネズミ狩り(その4)
遠くで木の枝を小剣で削って即興の矢を作っているのが見えましたわ
わたくしなど不出来な矢で十分?
あるいは矢を作りながらでも十分に殺せるかしら?
・・・どちらにしても舐められていますわね
もっともこんな森の中で命がけで追いかけっこなんてわたくしの方が絶対に不利ですわ
わたくしは貴族の娘ですのよ
あんな下賤な人とは違いますわ
・・・はっきり言って絶対絶命かしら?
舐められるのも当然ですわね
でもわたくしは理不尽には負けませんわ
舐めているなら結構
矢を切りだしている間に遠くまで逃げますわ
そして逃げ切った後には、しっかり復讐までしてさしあげますわ
・・・どんどん森の中に入っていっているような気がするのは気のせいしら?
人に遭うどころかその気配すらありませんの
絶対に道を間違えてますわよね?
でもこのまま行くしかありませんの
なにせ後ろにはわたくしを殺そうとする殺人犯がいますもの
・・・そんな訳で3日ほど逃げ回りましたわ
わたくしは結構がんばったと思いますわ
褒めて頂いてもよろしくてよ
それなのに誰にも会いませんでしたわ
誰かに遭う
わたくしが男爵令嬢と判り謝られる
無事に家に送り届けられる
殺人犯に罰を与える
といったわたくしの完璧な計画がダイナシですわ
そう思っている時もありましたわ
4日目の昼間に彼らと遭うまで、ですが
「に、にいちゃん、おおんなだ、げへへへへ」
と頭が悪そうな青年に遭うなり言われましたわ
人類の半分は女性ですわよ?
そうツッコミそうになりましたわ
でも言いませんでしたわ
だって女性に縁のなさそうですもの
真実を言うのが正しいとは限りませんのよ
・・・現実逃避をしている場合ではないのは判ってましてよ
でも後ろからはわたくしを射殺そうとする殺人鬼
前には頭の悪そうな強姦犯(推定)
思わず現実逃避をしてしまうくらい許して下さいまし




