20 王様の苦悩
「こちらが今回の報告書です」
宰相から渡された書類を見て王様は絶望した
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フォーマルハルト子爵支出
金貨1000枚
内訳
金貨200枚
貴金属63点(金貨100枚相当)
家宝1点(金貨5枚相当)
その他、金貨695枚
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「ぐぬぬぬぬ・・・」
思わず声が出た
サラへの賠償金なのじゃがとんでもない額になりおった
子爵家から金貨1000枚の支出なんて絶対むりじゃ
当然、足りない分は今回の黒幕の王妃、つまり王家が出すことになる
それがこれ(金貨695枚、6950万円相当)じゃ
王妃は国王派の貴族に乗せられた形ではあるが黒幕は黒幕
しっかり払わねば派閥としての形が崩れる
だから一部を焚き付けた貴族に分担させるが、大半は王家が払うしかない
王家としては高くはないが安くもない手痛い出費
これもバカ息子が(サラと)婚約破棄しなければ出なかった出費じゃ!
おまけに盗まれた物の補填だからお金を払っても返ってくるものがない
つまりノーリターン
サラを嵌めようとして、逆襲されたわけじゃな
通常の貴族の言葉遊びでの浮沈 ~責任をとる~ ならば問題がなかったのじゃ
田舎で謹慎とか誤魔化せば良い
そんなものなら、なんとでも辻褄が合わせられるわい
ところが今回サラのとった仕返しは他国からの商品の紛失の補填じゃ
あきらかにウソと判ってるがの
大体金貨1000枚の薬草なんてものを個人の商会が持っているはずがないわい
そうは言っても証拠となる売買契約書がある
そんなものを証拠として出されたら払わない訳にはいかんのじゃ
なぜそんな証拠がある?
不思議以外の何ものでもないわい
おまけに商国からは次々に
『採集者との取引の証拠』
『輸送の証拠』
『輸送時の護衛への支払い証言』
など次々に証拠があがってくるのじゃ
ここまでくると払わなければならないわい
・・・一度バカな貴族が払わなかったら仕返しでされて商品が入ってこなくなりおったわい!
おまけにスゴイ嫌がらせが付いてきた
「ユーリ!なんであの家宝が金貨5枚なんじゃ!」
あまりのことに王としての体裁をかなぐり捨てて幼馴染の宰相に噛みついたわい!
「商国が『割ってみないと良品かどうかわからものに高値は付けられない』だそうです」
首を左右に振ってどうしようもないと言う
仮にも貴族家の家宝がたったの5枚
とんだ嫌がらせじゃわい!
大人しい娘と思っていたがとんでもないものに化けたものじゃ
あのまま息子の妃となっていれば有事の際には強力な手ゴマとして働いてこの国は安泰じゃっただろうに
今となっては仕方がないことじゃが・・・