169 ウオリック兄弟(その23)~魔女からの提案~
兄弟の長男目線です
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「大体最近の貴族令嬢というのはクズばかりだ!」
思わず吐き捨てるように言ってしまった
思わず言ってしまった俺が悪いのか
言葉巧みに言わせたアマン商会会長の話術が巧みであると褒めればよいのか
どっちだろうな
・・・俺は魔女の方があくどいと主張したい
大人になってからは体裁を取り繕うことばかりだった
世間の常識とやらに合わせるため自由に物を言うことすらできなかった
・・・お貴族様の少女を借金を盾に奪い去ったとか、寝室に連れ込んで弄んだというのはこの際置いておく
あれはほんのちょっとの息抜きだ
全体からすると0.0001%くらいだからノーカウントだと言いたい
孤児院に居た頃はそんなことはなかった
楽しければ笑い
悲しければ泣く
実に人間らしい生活をしていた
・・・貧乏だったけどな
それが男爵夫人と関わり合いになってからは本音を隠す日々が始まった
夫人の股の間を舐めさせられるという屈辱の日々
それでも母親を思わせるため逃げるに逃げられなかった
・・・平民には貴族から逃げるという選択肢はないとも言う
自分も薄々判っていた
無意味な努力だ、と
誰も幸せにならないし幸せになれないというストレス漬けの日々
だからと言って逃げる訳にはいかない
逃げる先なんてないから
絶望の日々を送っていたと言ってよい
そんな鬱屈した内面を本人よりもはっきり認識していたアマン商会会長
「本音を言って嫌われたとして、今と何が違いますの?」
ド直球で聞いて来た
・・・変わらないな
そう思ってしまう自分が居た
元平民
似非貴族
平民と貴族の間を行ったり来たりする蝙蝠野郎
金に汚い守銭奴
男妾風情が調子に乗りまくっている
等々、陰で言われまくっている
・・・ちなみに高位の貴族だと面と向かって言ってる
元平民で金貸しで貴族女の男妾で少女にしか欲情しない変態
これ以下にはならないくらい最底辺
何やっても下がることはない存在
最低オブ最低
まさに目から鱗だった
我慢しても改善されないなら我慢しなくて良いのね?
そういうこと
よしもう誰にも遠慮しないぞ
そう心に決めた
そして冒頭に戻る
・・・人はこれを洗脳と呼ぶ
そんな簡単なことに気が付くのはかなり後の事




