154 ウオリック兄弟(その9)
ウオリック兄弟兄目線です
男爵様の名前が決まりました
ということはこれから不幸の嵐に翻弄されるわけですね
・・・御愁傷様?
------------------------------------------------------------
「キャンメル男爵、どういうことです」
子爵夫人が跪いている男爵様と男爵夫人を叱責していた
それを見ているオレ
どうしてここまで大事になった、と言いたい
いや大事にするつもりだったがココまでとは思ってもみなかった
それもこれもすべて男爵家の使用人が嫌がらせのためにオレの帽子を盗んだからだ
とりあえず隠して困らせてやろう
外に出ているうちに返しておけばバレないだろう
そしていつも通り泣き寝入りするだろうとつい軽い気持ちでやった
そんなところだと思う
男爵家の使用人には今までいろんな嫌がらせをされてきた
御貴族様から貰った物を盗まれる
「貸してくれ」と無理矢理持っていく
「嫌だ」と言うと腹パンだ
一度は男爵夫人に相談した
男爵夫人の叱責により謝罪と盗まれた物は帰ってきた
もっとも「告げ口しやがって」と後で絡まれて殴られたんだけどな
自分で盗んでおきながら「告げ口しやがって」という始末
男爵家の使用人達の根性は腐りきっていた
だから徹底的に叩き潰す事に決めた
敵は容赦なく叩き潰せ
下町の常識だ
まずやったのは盗まれても泣き寝入りすることだ
こちらが何も言わないから調子に乗ってドンドン盗んでいきやがった
最初はタイピンやカフス、指輪なんかの無くなっても判り難い小物
次はシャツなんかの大物
ジャケットや靴まで手を伸ばしたのには嗤ったけどな
お前ら調子に乗り過ぎだろう
でも調子に乗った男爵家使用人どもは歯止めがきかなくなっていた
とうとう子爵夫人から送られた帽子に手を出した
・・・世の中には手を出してはいけない一線というのがある
この場合は男爵家の寄り親の子爵家だ
わざわざ子爵家に行くために着替えている直前に盗んでいった
いや男爵夫人相手に腰を振っていた夜のうちかもしれん
おかげ?で帽子ケースを開けたら中に入っていなかった
驚くとともにやったね、と思ったな
今まで我慢に我慢を重ねた甲斐があったというもので
もちろん他の帽子を被って子爵家に行った
子爵家に行く時は子爵夫人から送られた服を着る
それがマイルール
お気に入りの人間が自分が送った服を着るなら気持ちが良くなるというものだ
今まで何回もやっていたので子爵夫人のマイルールにもなっていた
ところが今回、愛玩動物がお呼ばれされたら帽子が違っていた
まあ服とおそろいなので違っていたらすぐに気が付くわな
もっともすぐに判らせるためにできるだけ似あわない帽子を選んだだけどな
もちろんそんなワザとらしいことしなくても子爵夫人は判る
子爵夫人の勘は侮れない
そう言う事
そんな訳で一目でバレた
もちろん俺は謝った
「なくしてしまい申し訳ありません」
それで解決する訳はない
なにせ子爵夫人から貰った物は丁寧に丁寧を重ねて扱っていたからな
綻びが出来たらすぐに繕う
常に綺麗になるように細心の注意を払っていた
なにせ着心地が良い高級品だ
雑に扱うなんてことは平民の常識にはない
いや雑に扱ったら後悔しそうだ
それを知っている子爵夫人はオレが帽子がなくなるなんて不手際をするはずがない
トラブルがあることをすぐに見抜いた
「どういうこと?」
速攻で聞いてきた
もちろんすぐにゲロった
嘘をつくのは悪手だ
正直が最高の選択肢だ
・・・もちろん男爵家使用人一同様を嵌めるためでもある
もちろん子爵夫人は怒った
そりゃそうだ
男爵家の使用人風情に子爵夫人の贈ったモノを盗まれたのだ
貴族はプライドだけで生きている
それに泥を塗られたらどうなるか?
結果は火を見るより明らかだ
速攻で男爵とその夫人を呼ぶように激が飛んだ




