147 ウオリック兄弟(その2)
金貸し兄弟の兄目線です
地獄のような日々を送ってきました
エピソード0ってやつですね
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「汚らわしい」
通りすがりに侍女長が吐き捨てるように言ってきた
だったら夫人に直接言ってみろや
今なら言える
だが当時はただの子供
下を向いて唇をかみしめるだけだった
そんなオレ達兄弟を見て嗤う侍女長
いや侍女や執事、下男まで嗤っていた
引き取られたといっても男爵夫人の性のおもちゃとして、だった
人間以下の存在だと言えた
そんな奴を使う男爵夫人は更にクズだと言いたい
だが言えない
子供は身体が大きい大人に逆らうことはできないのだ
食事はきちんと出た
嫌がらせで味がまったくない野菜を煮込んだだけのスープ
ぼそぼその酸っぱい黒パン
それだけだったがな
使用人は賄いを使用人用の控え室でとることになっていた
だがオレ達兄弟は嫌われているために控室に入ることができなかった
入ると
「なに入ってきているんだよ!」
って殴られたな
後、風呂に入ることになっているんだが一番最後のために冷めていた
まあそれはいい
オレ達兄弟は新人で使用人の底辺だからな
だがワザとお湯にゴミを入れて入れないようにしてやがった
おかげで真冬でも水で身体を拭いていた
「最後なんだから綺麗に洗っておきなさい!」とかも言われたな
他人が汚した浴槽を、だ
おまけに綺麗に洗っても
「まだ汚れているわよっ!」
と何度も洗わされた
ああそう言えば歩いていると後ろから蹴られるってものあったな
転んで痛がっていると
「ああ見えなかったぜ」
とか言われた
もっともニヤニヤしていたからわざとなのは丸判りだった
生き地獄
まだ腹をすかせて隙間風が吹き込む孤児院の方がましだったかもしれん
それでも隣に弟がいたから耐えられた
こうしてオレ達兄弟は二人で地獄のような日々を耐え忍んだんだ




