145 大地の歌商会のお仕事(その8)
ウオリック兄弟の兄、ヒューイットの護衛目線です
某御貴族様の御令嬢ですが、借金のカタに働かせられています
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「あっ・・ダメ・・ンッ・・・」
扉の向こうから声が聞こえてきます
幼い少女の純潔が変態により穢されようとしています
グッ
わたくしは唇を噛み締め、手を握って耐えることしかできませんでした
わたくしは某子爵家の三女として産まれました
厳しい父と優しい母、そして仲の良い姉妹達に囲まれて幸せな生活を送っていました
ところがある日、借金のために破産してしまいました
まあよくある天候不順と戦争のせいです
こればかりは真面目に生活していてもどうしようもありませんわ
お父様は寄り親の貴族や親戚に借金をお願いしたようですが断られましたわ
みな同じようにお金がないのですから当然です
返済のために奔走する毎日が続いたある日、一人の貴族が我が家を訪ねてきましたの
それが悪徳金貸しと名高いヒューイット様でした
わたくしがヒューイット様の所で働くならば利子はとらない
借金の支払いはある時払いで構わない
そう申し出されました
いつの間にか我が家の借金はすべてヒューイット様の手の内でした
まあ当然ですわね
我が家では借金を返せそうもない
このままでは踏み倒される
それならば5掛けでヒューイット様に売った方が良い
そういうことでした
・・・隠さずにきちんと説明をしたヒューイット様を褒めれば良いのか、守銭奴と罵れば良いのか、どちらが正解なのでしょうね
貴族の令嬢が平民の商会で働く
普通なら妾か愛人になれ、ということですわ
話を聞いたお父様もお母様、姉達は顔色を変えました
私も身体がガクガクと震えました
そんなわたくしたち一家を見てヒューイット様はおっしゃいました
「令嬢には指一本触れないから安心してください」
目の前が真っ暗になりましたわ
手を出さないと言って安心させる
でも実際は手を出す
使い古された常套手段です
気が遠くなり気を失いましたわ
・・・当時のわたくしを殴りたいですわ
今ならその台詞が本当だと判ります
当時のわたくしはデビュダントを終えて婚約者を探していました
つまりすぐに結婚できる年頃
そんな年増に変態が手を出す訳がありませんでしたわ
・・・手を出されないと判ると逆に屈辱だと思うのはなぜでしょう?
嬉しいはずなのに嬉しくありませんでしたわ
もっとも変態の下で働くということの意味を知れば別でしたわ
穢れをしらない少女が汚されるのを真近で見る苦行
どちらが良かったのか?
答えは永遠に出そうもありませんわ




