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139 大地の歌商会のお仕事(その2)

大地の歌商会会長サード目線です


新たな人間が魔女サラから送り込まれてきました


さしずめ拷問担当


--------------------------------------------------


「交渉担当のオーティスだ


仕事中は副会長の次の位置になるから憶えておくように


何か質問は?」


ウチの商会の陰の実力者の魔女サラから送られてきた新人が偉そうに自己紹介をした






両足を肩幅ほど広げて立つ姿勢


手を後ろに組む態度


そして歯切れのよい言葉


背後には陰のように付き添ってる手下が二人





どんな人間か一目で判る


関わっちゃいけない人種だ





もちろん判ったのは会長おれだけではない


部下も、だ


その証拠に誰ひとり目を合わせていない





台風と一緒で首を竦めて通り去るのを待つだけが唯一の対策法だ





もっとも会長おれはそうはいかない


会長せきにんしゃだからである


・・・なぜオレは会長なんだろう








じゃなくって!


上から三番目とか初めて聞いたわ!


会長のオレが知らないってなんだんだよ!


と叫んだ




もちろん心の中で、である





だって直接は言えないからな


大地の歌商会の真の支配者サラが送ってきた人間だ





文句を言ったら魔女サラから


「わたくしの決めたことに文句があって?」


とか言われそうだ


そして次の朝にはいつのまにか居なくなっている





・・・ブルブルブル








なお自称新人様自己紹介が終わった後、スパイ達を閉じ込めている家に直行した





この村には牢屋なんて上等なものはない


だから物置として作ったあばら家にスパイ達を押し込んで外に見張りを置いていた






会長オレ


その後を付いて行ったぞ?





だって付いていかないといけない空気だったからな


いや危険人物を放置して置けないということになるんだろうな





もっとも付いていかなければよかったと後で後悔した


気が付けよ会長オレ!、と言いたい






・・・どうやら最近危機感知能力が低下しているようだ


これは生活が安定しているかもしれん


要反省だ








なにせ新人オーティスは家に入ったと思ったらいきなりスパイを蹴り飛ばしたんだ


手を前に縛られ床に座っていたスパイは腹を蹴られて悶絶していた





もちろんスパイは


「グッ」


っと床を転げまわった




そりゃそうだ


だって手加減なしで腹を蹴られたんだ


皆が痛そうに見ていた





それでも平然としているオーティスに会長オレはドン引きだ


こいつには血も涙も無いらしい






「おいおい腹を蹴られたくらいで大げさだな」


呆れていた





いやお前の頭の中ではスパイはどんな存在なんだ!、と言いたい





どんな拷問でも口を割らないタフガイか?


いつのまにか縄抜けをして脱出する奇術師か?





・・・ろくな存在でないことだけは確かだな







オレ達は元スラムの人間だが、それでもココまでやらないぞ!と言いたい





スラムの人間は荒んでいるから人を傷つけるのに躊躇しない


それは本当だ


生きる快感の前には全ての事がゴミだからな





だがそれでもここまで躊躇なく無差別に傷つけることはしない


ある程度の筋道はある


たとえば因縁をつけてから殴るとか、だな




オーティスのように問答無用で蹴るようなことはしない




こいつはヤバい


そう思った




もっともその思いはすぐに覆された


その後の拷問が酷かったからだ





戦場に駆り出されオトリとして見殺しにされるのは無駄死にだろう?


あるいは貴族の馬車に轢かれて死ぬでもよい


だがそれらが真っ当な死に方だと思える程の拷問だった





どんな拷問か?


いや言いたくないんで勘弁してくれ


口に出すだけでもおぞましい




その場にいた人間全てが思ったはずだ





オーティスは天性の加害者だ


会長オレは確信した





なにせ拷問を受けているスパイが


「オレは貴族に命令されただけなんだ!!」


とか


「いっそのこと殺してくれ」


とか全面降伏していたからな




たとえ死ぬことがあってもアレだけは嫌だ


皆がそう思ったことだろう


いや死んでいないんだけどな







「ちょっとやりすぎじゃないか?」


会長オレは思わずそう言ってしまった




「甘い、甘いですな」


逆に叱られた





「こいつらは薄汚いコソ泥だ」


『助けてくれ~』という拷問されているスパイの声をBGMに拷問担当オーティスが言い切った




あのBGMを聞いても平然としている貴方オーティスの方が酷いと感じるのは気のせいだろうか




だが


「こいつらに食事を与えていますな?」


と逆に責められた




そりゃそうだ


大事な証人だからな


何に使えるかわからないから1日1回粗食を与えている




「食事の無駄ですな、口を割らない人間は処分しましょう」


それを聞いた残りのスパイがおののいた





どうやら大地の歌商会おれたちは舐められていたようだ


捕まっても殺されない、と




たしかに商会おれたちは甘かったようだ






「オレは貴族が嫌いだ


そしてその貴族の手下となる平民も嫌いだ


オレの楽しみはそんな貴族と手下どもを痛めつけることだ」


オーティスが言い切った





・・・さすが魔女さらが送り込んできた人間だ


あらゆる意味で凄かった





おかげ?でスパイ達がおののいていた


そして口ぐちに自分の正体やら雇い主の不正を暴露していた




そりゃそうだ


いまココで死ぬか


許されて解放されるか


の瀬戸際なんだ





生き残るためならなんでも喋ることだろう








・・・しかし、どうして魔女が送りこんでくる人間は副会長のリカルドといい交渉担当のオーティスといいまともな人間がいないんだろうな?

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