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138 大地の歌商会のお仕事(その1)

大地の歌商会の会長サード目線です


騒動が治まりようやくまともに仕事ができるようになりました


・・・などという展開にはなりません


魔女サラに係った人間にまともな生活が出来る方がおかしいんです


---------------------------------------------------------------- 



ザワザワザワ


風が吹いたことにより音が立つ




その音が次々に重なっていき最後には


ザーーッ、ザーーーーーッ


と重なった





「歌だ、歌が聞こえる」


と誰か言った





まさにその通りだ





良く実った畑とその周りの牧草地が見渡すかぎり広がっている


そこに風が吹けば音がでる


たしかに大地が歌っていると言っても良いだろう






去年、はじまりの村で大地の歌商会全員おれたちも同じことを思ったからな





寂れた畑が実り良い畑に


今まで草一つ生えていなかった土地が草原に


見違えるように変わった


クソを撒くことによって、だ




まあクソ撒くことは省略しよう


いままで散々愚痴を言ってきたからな




だが大地の歌商会のことは別だ


これについては一晩中でも愚痴を言いたいからな





クソ撒くためにはスラムの人間を使う


クソ撒く村の所有者の領主様から収穫物の半分を分捕る


その他イロイロな理由から商会が必要になったそうだ


魔女サラが、である




だからと言って元スラムの人間を平民にするなと言いたい


そして商会を経営されるな、とも言いたい


あの後本当に大変だった(遠い目)





その際のドタバタにまぎれて商会の名前を押しつけられた


いや勝手に決められていた





その時どうして『大地の歌商会』なのか?


全員が疑問に思ったな





普通に『サード商会』でいいんじゃないか?


トップの名前+商会、だろう


そう思った





しかし誰も言わなかったぞ


言った途端死んでいるかもしれないからな





「わたくしが与えた名前に不満があって?」


そう言われた瞬間に死んでいるのが目に浮かぶからな


・・・言えるというなら言ってみろ、と言うぞ?






話がずれたので元に戻そう





ここはスワンプラット男爵領の村の一つだ


それも元寒村




そこに


スワンプラット男爵


その使用人達


汚物を運んで撒いていたスラムの人間達


村人達


関係者全員が勢ぞろいしていた





なにせ大豊作の上、おまけに牧草地まで広がっているのだ


一度見ておこうと男爵様が思うのも当然だった


・・・なにせ豊作なら金が入るからな





そして皆が驚いた


元寒村が見事に立派な村に変わっていたからな




・・・スラムの人間や村人は毎日見ていただろうとツッコミたい


まあしみじみ見たことがないからと言われればそうかもしれん





そこに風が吹いた


そしてその場にいた全員が商会の名前に理解した瞬間だった





そして


「この村に恵みを連れてきてくれてありがとう」


商会会長おれに口ぐちに感謝していた







とまあここまでが良い話だ





光りがあれば陰がある


昔の人は良く言ったものだ





・・・元スラムの人間が何偉そうな事言ってる?


よくもそんな格言を知っていたな?






そりゃそうだ


スラムにはいろんな人間がなだれこんでくるんだ


政争に敗れた御貴族様とか、な





まあそんな訳でうちのしょうかいが得をしようとすると足を引っ張る人間が出てくるのは当然のことだった


早い話、大地の歌商会うちのクソ撒く技術を狙ってスパイが大量に送り込まれてきたわけだ





ただクソ撒くだけでは作物は育たない


スラムの人間でも判る常識だ


そんなんで草が生えるくらいなら汚物だらけのスラムは今頃大草原だ




なのになぜオレらだと上手く行くのか?


腕だよ、『うで』




・・・魔女に言われるまま育てて撒いただけなんだけどな




でもなぜ魔女は誰も知らない技術を知っていたのか疑問だよな


聞きたいが聞けない


ちょっとイライラするな





まあそんな訳でウチの商会はガッポガッポと儲かったわけだ





人が得するのをガマンできないのが御貴族様というものだ


Q:金儲けが上手く行っているオレ達を見てどうするでしょうか


A:ありとあらゆる手を使って技術を盗もうとするでしょう






ある時はクソ撒くスラムの人間を買収してクソを盗ませようとした


ある時は物を運んできた商人の下働きに手下を紛れ込ませてクソを盗もうとした


またある時はウチの商会員から話を聞き出そうとした


と言った感じで手当たり次第してきた





もちろん大地の歌商会一同おれたちは頑張った


もしもやり方が盗まれでもしたら魔女サラに殺されることだろう


いや絶対に殺される




「お願いだから殺してくれ!」


と懇願するような酷い目にあってから殺されるだろう





・・・オレ達、よく今まで生きてこれたな





そんな訳で俺達は頑張った!


本当に頑張った!


睡眠時間を削って頑張った!


ついでに賄賂も使った!


情報を持ってきたら金貨1枚だ!






・・・やりすぎだよ


なにやっていたんだろうな





まあおかげで捕まえた人間は20人を超えた





・・・捕まえたオレ達が凄いのか


ここまで執拗にスパイを送り込む御貴族様が凄いのか?


どっちだろうな






まあそれはそれとして、意気揚々と男爵様に報告に行ったんだよ


そしてスパイを引き渡そうとした


そしたらスワンプラット男爵から断わられた




「もう勘弁してくれ(意訳)」


と言われた


どうやらこの前の事件が尾を引いているようだった






だからと言って捕まえた人間を放つ訳にはいかない


こちとら舐められたら商売あがったりだからな




スラムでは舐められたら終わりだ


だからボコボコに殴って相手に上下関係を叩きこむ




もちろん商会も同じだ


舐められたらどんな損害を被るか判らない


無罪放免なんてしたらこの地はスパイで溢れるだろうな






しかし男爵様に断わられてしまったのでどうするべきか?


と手下と共に頭を抱えた


・・・あまり頭を使わない人種だから仕方がないというものだ






困っていたら副会長が言ってきた


魔女じょうしに丸投げしましょう」




・・・さすが魔女の紹介でウチの商会に来ただけのことはあると言える


その大胆さと無謀さに皆が度肝を抜かれた





確かにいい案かもしれん


だが誰が言いに行くんだと言いたい





「無能」


そう言ってその場で殺される場面しか思い浮かばないぞ?




もちろん手下ども、いや商会の部下達も同じ思いのようだった


言いに行くのを皆が嫌がったからな




当然言いだした副会長に押しつけた


平然と連絡をしにいった姿はちょっと感動したな





勇気があるな!


正直な感想だ





・・・そういえば副会長は貴族が不幸になればなるほど嬉しい変態だったな






この前、男爵、伯爵その他イロイロの貴族が不幸になったんだが副会長は楽しそうに嗤っていた


おそらく普通の人間と頭の構造が違うんだろうな


そう思う





だから魔女とも平気で会話ができる


ある意味尊敬するな




・・・と思った時もあった





そのおかげ?で、とんでもない奴らが送り込まれてきたとなれば別だ


あの性格破綻者達をどうするんだ!、と言いたい


いや、責任を持って面倒をみろ、かね?

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