135 ヘッドアッシュ劇場(その13)
大地の歌商会の副会長の目線です
今日も元気に主人公サラのスパイしています
-----------------------------------------------
「今年は豊作だから羨ましいかぎりだ」
訳:儲かっているんだから国王派に払うモノ払え
と国王派の貴族が言うと
「そうですね、これも領民の努力のおかです」
訳:大勢の人間が働いているんだから金なんて余っていないんだよ!
と貴族派の貴族が反論する
それを見ているスワンプラット男爵は無表情だ
しかし内心では
「もういい加減にしてくれ」
と思っていることだろう
それを見ている大地の歌商会副会長の私、リカルドは笑いが止まらなかった
貴族が困っているのを見るのはなんでこんなにも楽しいんだろうな!
心の底からそう思う
なぜこんなできの悪い三文芝居に付き合っているのか?
そして嗤っているのか?
現在、襲撃犯のことについて話し合いをする場が開催されているのである
場所はスワンプラット男爵の客間
出席者は
国王派の貴族数名
貴族派の貴族数名
主催者?のスワンプラット男爵
被害者?の大地の歌商会の会長と副会長の2名
である
なお、犯人(予定)のマクフィアンナ子爵の次男は欠席である
居るだけで墓穴を掘りまくるバカは国王派の貴族によって強制送還されたらしい
・・・役に立たないゴミは回収された
最初は
原告のスワンプラット男爵と
被告のマクフィアンナ子爵
の二人で始まった話し合い
ところが利権が絡んだためドンドン参加者が増えて行った
早い話、マクフィアンナ子爵の失言のせいで国王派が窮地に落ちた訳である
人が損するのは喜ぶが、自分が損するのは許せないというのが貴族である
国王派の貴族がスワンプラット男爵の所に押し掛けるのも当然のことである
そしてその対策として貴族派が押し掛ける
かくして辺境のちっぽけな男爵領で代理戦争が始まった、という訳だ
もちろん大地の歌商会の人間も呼ばれている
出番があるかどうか判らないがとりあえず平民は呼び出す
という貴族の傲慢のせいだ
毎回呼び出される商会長は呼び出しが入る度に
「いい加減にしろやっ!」
と叫んでいる
平民はお話し合いが行われる半日の間ずーっと壁際で立ちっぱなしなのだ
おまけに金も支払われないという無料奉仕
怒るのも当然だ
もっとも副会長の私、リカルドは大歓迎である
なにせ貴族が困るのを見るのが三度の飯よりも好きなのだ
男爵が出先の土地で平民に手を出して生まれたのがオレだ
庶子の貴族というのは何かと生き難いため性格が曲がっている自覚はある
まあだからといって貴族の困り顔を見る趣味は止めようとは思わないけどな
あと、魔女のサラへの報告するためというのもある
魔女はオレよりも歪んでいる
どこかの貴族が困っているとの報告を受ける度に喜んでいるらしい
そして自分が撒いた種で貴族が困っていると聞くとさらに大喜び?
本当に歪みまくっているもんだ
これもどこかの貴族のボンボンに婚約破棄された上に結構な屈辱を与えられたせいらしい
・・・本当に貴族ってロクなことをしないよな
そんな魔女は復讐の真っ最中らしい
そんでもって一人目の復讐をやり過ぎたらしい
終わった時点で他の復讐対象に警戒されてしまったせいでなかなか復讐が進まないんだとか
おかげで最近はイライラしているそうだ
連絡係をしている人間がぼやいていた
・・・自業自得である
近くによると八つ当たりで殺されるかも?
ということらしい
・・・辺境でのクソ撒きの仕事で良かったと思ったな
そんな魔女の最近のお気に入りはスワンプラット男爵でのトラブルである
なにせ自分が手配した餌にバカな貴族が掛ったのだ
喜ばないはずはない
いや実際に大喜びらしい
おまけに王都の国王派の貴族まで釣れたのだ
いろんな所に手配したスパイからの報告を受けるのが楽しくて仕方なないらしい
そんなスパイの一人が副会長の私である
「細大漏らさず報告しなさい!」
との命令が来ている
おかげ?でこの貴族間のお話し合いが終わったら
貴族が言った台詞を一字一句間違いがないように書いて魔女に送る
という仕事がある
最初はそんなことができるのか?
と思ったんだが結構できるもんなんだな、と感心した
まあそれだけ貴族の愚行は印象的であると言う訳だ
御貴族様はどれだけ愚かなのか、と呆れたけどな




