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133 ヘッドアッシュ劇場(その11)

スワンプラット男爵目線です


寄り親のヘッドアッシュ伯爵の思惑が少しわかりました


伯爵様はただの我儘なクズ野郎ではありませんでした


人間言われないと判らないものですね


--------------------------------------------------------


「寄り子を守るのは寄り親として当然だよ?」


ヘッドアッシュ伯爵がどや顔で言った


それを聞いて男爵わたしは思った




クズなんて心の中で罵っていてごめんなさい、と














もちろん男爵おれが伯爵のことを心の中で


「このクソ野郎!(意訳)」


と罵ったのには訳がある





寄り親であるヘッドアッシュ伯爵は1か月に渡って男爵家に泊まり続けているのだ


精神がガリガリ削られて堪らない




もちろん言いがかりをつけてくるマクフィアンナ子爵対策であるのは重々承知だよ?


なにせこの世の中、男爵は子爵に勝てないようにできているのだ





子爵の地位を盾にせっかくの証拠である襲撃犯を無理矢理奪うことなんて朝飯前である


いや過去を振り返れば何千何万回と繰り返されてきた定番のイベントと言って良いだろう


・・・この国の貴族はクズばかりだな






そのために立ちあがったのが寄り親の寄り親であるヘッドアッシュ伯爵様


まあ貴族派のためというのが第一で、男爵おれは『おまけ』あるというのはお約束だな!


もちろん知っていても口には出さない





「お骨折りありがとうございます」


ときちんと頭を下げた


・・・オレも大人になったものである






そんなわけで強力なはくしゃくさまを手に入れたおかげでマクフィアンナ子爵の横やりをやり過ごせた訳だ


そこまでは良しとしよう


いや良くはないんだけどな






寄り親のアッシュ子爵くらいにして欲しかったというのが男爵おれの本音である





隣の領地であり同じ下級貴族の子爵


中級貴族の伯爵様


どちらが一緒にいて心理的負担が少ないかは明白だ





実のところ、最初の数日は頑張ったんだよ?


しかしさすがに伯爵様に連泊されると音をあげた





使用人?


なんか遠い目をしていたな






まあ使用人はさておくとしよう


男爵おれの方がダメージ大きいからな





大体2ランク上の存在はくしゃくが同じ家にいるのだ


普通に生活していると普通に遭遇する


廊下を曲がったら伯爵様がいたというのは心臓に悪いイベントである


・・・本当に心臓が止まりそうになったのは笑えないけどな






男爵領の統治の仕事は普通にある


領内の治安から、物資の流通、税の徴収と国への支払い


朝から晩までやっても終わらない




思わず


「領内の橋の修理が~」


と仕事に気をとられて独り言を言っていたら廊下で伯爵様と出会った時には気まず過ぎた




だれかこの凍った空気をどうにかしてくれと思ったな








もちろん忘れてはならないのが牢屋に入れている犯罪者達の管理だ


ここで死なれたら大切な証人かねずるが無くなる


いや伯爵様が怒り狂うだろう


それなりに気をつけないといけない





なんの生産性もないのに金が出て行くというので悔しすぎである


だから


「大事な領民なんだから食費等を出せ!(意訳)」


とマクフィアンナ子爵に責め寄って金を分捕った男爵おれは悪くない




・・・余計な仕事をしたせいで余計に忙しくなったけどな







当然のことながら心身共に疲れ果てた


ついでに睡眠時間も削られた




そんな訳で伯爵様の滞在が1カ月を過ぎた頃に限界が来た


・・・よく一カ月もガマンできたと自分自身を褒めたい






心身共に限界なので伯爵様に


「おそれながら伯爵家のお仕事は大丈夫でしょうか?」


と言った男爵わたしは悪くないと思う


・・・悪くないよね?





そうしたら


「親戚を呼んで任しているから大丈夫」


との返事が来た




・・・それを聞いた途端、絶望したな







「いややはり代理では問題があるかもしれませんし・・・」


と足掻いてみた






そうしたら伯爵様に笑われた


「ばっちこい(意訳)」





何か損害でも出たらマクフィアンナ子爵に責任をとって貰おうじゃないか


金か?


それとも何らかの譲歩になるのかな?


嬉しそうに嗤っていた






・・・性格悪すぎる


正直な感想だ






息をするように人を陥れるその発想にドン引きだよ!


外道だ!


ここに外道がいる!



そう思ったな






絶望してる男爵おれに向かって


伯爵わたしがいるから子爵が、いや国王派が男爵きみに手を出してこないんだぞ?」


と伯爵が言ってきた




「いや知っています(意訳)」


そう言ったら


「国王派は大打撃を与えるきっかけとなった男爵家おれを逆恨みしているよ?(意訳)」


と逆に言われた





なにそれ?


怖い!?


マジで震えた





でも伯爵わたしがいるから手出しができない


だから男爵おれのところ暗殺者も冤罪もきていない


そう言われた






なんですと!?


そんなの聞いてないっ!


いや初めて聞きましたぜ?!




パニックになった


顔面蒼白になった男爵おれに向かって伯爵が言った言葉が冒頭のものだった




だから男爵おれは言った


ありがとうございます?





・・・こんな時の受け答えはなぜ疑問形になるのだろう?

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