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128 ヘッドアッシュ劇場(その6)

スワンプラット男爵目線です


伯爵様の思惑がわかりました


いやだからと言って不幸が減る訳ではないですけどね


---------------------------------------------


「あ~この蒸し風呂というのもいいものだな」


なぜだかヘッドアッシュ伯爵が村の風呂に入っていた


・・・どうしてこうなったのか?、とスワンプラット男爵わたしは言いたい



いや伯爵様と二人っきりで風呂に入るのは罰ゲームでしかないと大声で言いたい


・・・面と向かって文句言ったらそこで人生が終了するからいえないけどさ







話しを数時間戻そう



バード=マクフィアンナ子爵庶子が再び文句を言いに来たのは今日の朝のことだった


意気揚々と客間に入ってきたバード殿


ところが客間にいたヘッドアッシュ伯爵をみた途端固まった


・・・顔は知らなくても雰囲気と着ているもので子爵じぶんよりも上位だと気が付いたらしい




それはそうである


今まで子爵じぶんよりも位が低いからと男爵わたしをイジメ抜いてきたのだ


貴族根性に凝り固まっていれば伯爵じぶんよりうえのそんざいはさぞ恐怖だろう


・・・ちょっとだけざまあみろと思ったのは内緒だ





もっとも子爵庶子バードどのはその後も固まったままだった




いや


「あ~その・・・」


とか何か言おうとして言えない状態が続いた


・・・それが5時間ほど続いたのには勘弁して欲しかった




まあ面白いから男爵わたしは黙っていたんだけどな


子爵様に口出しするのは恐れ多い


そんな顔して手助けしなかったのは秘密だ


・・・まあ子爵庶子様にはバレていたと思うんだが、もしも問い詰められたら伯爵様と子爵様を前に男爵風情が何しろというんだと開き直るつもりだ





格下の男爵わたしからは庶子とはいえ子爵家を背負ってきている人間に意見することはないと地蔵状態だが、伯爵様は黙って『旅人の葉』をパイプでスパスパと吸っていた


・・・この伯爵ひとは何しに来たんだと言いたいが、居るだけでバード殿にプレッシャーをかけているのでツッコめないのが実情だ





バード殿は最後には


「&%$#”=」


と意味不明な言葉を叫んで逃げていった




早い話伯爵様のプレッシャーに耐えきれなくなったんだな


まああそこまでやられたら逃げ出すのも当然だ




・・・何やったか?


伯爵様が怖くて言えません(汗)








その後、腹がへったとの伯爵様の要望で遅い昼食になった


・・・依り子だからと言って伯爵様が男爵の家にたかるのはどうかと思う




それと従者共々泊まるのもどうかと思う


ここは直接の寄り子で妹の嫁ぎ先のアッシュ子爵の館に泊まるべきだと声を大にして言いたい


・・・言えないけどな





男爵や子爵は下級貴族


伯爵や侯爵は中級貴族


住んでいる家や生活のランク自体が大きく違うのだ






だから男爵家で伯爵様の御世話をしようと思ったら非常に大変なのである


気軽に男爵家に来ないでくれと言いたい


・・・まあ本当に忙しいのは男爵わたしではなく家臣なんだがな





家臣一同が走り回って伯爵様に相応しい御馳走を用意した


・・・これが本当の御馳走だ(笑)




いや後で家臣達にフォローしておかないといけないな


なにせ皆先代の頃から勤めていて年上なんだ


あとで思いだしたようにチクチクと教育と言う名の嫌味を言われることだろう


・・・男爵おれの周りの家臣は皆年上なんてどんな罰ゲームだと言いたい、いやこちらも言えないけどさ





遠慮する気配なんて一切なく伯爵様は食べて飲んだ


・・・せっかくの御馳走だというのに伯爵様と同じテーブルというだけでまったく味が判らなかったな(涙)





食後のパイプを楽しんだ伯爵様はおっしゃった


「さあ風呂に行こうか」


・・・なぜ村にある蒸し風呂を知っているのかと問いただしたい






いや伯爵様が村の風呂に入る時点でダメだろうと言いたい


中級貴族が平民の娯楽をしていいのかと言いたい


・・・低級貴族の男爵おれでさえギリギリアウトだと思うんだけどな




「あ~いい気分だな」


蒸し風呂に設置した床几に横たわりゴロゴロする伯爵様


・・・風呂には伯爵様と男爵わたししかいないから思いっきりだらけていた





寝転がれる床几を用意させられた大地の歌商会の人間の目は虚ろだった


一生会うことが無いと思った雲の上の伯爵様に会った上に、だらけたいからと床几を用意させららえたんだ


天災にあったような気になったことだろう


実に御愁傷様なことである


・・・迷惑かけられ仲間が増えたと思うとちょっとだけ気が晴れた





「あ~水に浸かるというのは気持ちが良いものだな」


蒸し風呂に入りすぎて暑くなった伯爵様は風呂場の近くの川に飛び込んでいた


・・・蒸し風呂の後は川に飛び込むのはたしかに気持ちがいいが中年男性はくしゃくさまの裸は勘弁して欲しかった





いつまで男爵おれの苦労は続くのだろう?


誰かに教えて欲しかった


・・・大抵誰も教えてくれないんだがな












たかだか男爵領でのトラブルになんでわざわざ伯爵様が出てくるのかが疑問だった


そして出張ってきてもろくに対処せずにダラダラグダグダしている


一体何がしたいのだろうと思ったら、それが顔に出ているようだった




「不思議かい?」


伯爵様が夜の寝酒を傾けながら言ってきた


・・・結局は朝から晩まで伯爵様振りまわされた上に男爵家の書類仕事がまったくできなかった




問いかけられた問いに『はい』と答えられたのは奇跡かもしれん


気力体力がほとんで0だったからな




そうしたら流石に迷惑をかけ過ぎたと思ったのかちょっとだけ教えてくれた




今回の一件、負ける気はない


伯爵じぶん男爵領ここまで出張させた費用


伯爵じぶんの手を煩わせた費用


男爵家の応接間の家具を八つ当たりでダメにした費用


ああもちろん対応した男爵の手間賃も忘れてはいけないな


それと悪人を牢に入れた際の警備の費用その他もろもろ


全部一切まとめて負けた子爵に請求しよう




簡単に言うとそういうことらしい


だから長引けば長引くほどこちらは得だ


あと男爵領ここにいると伯爵領の統治が疎かになるからその分の迷惑費も追加だね



伯爵様が笑って言っていた




・・・人間のクズがいた



ただ単に貴族の階級が上の人間は偉いと思っていた男爵じぶんを殴りたい


上に行くほどロクでもない存在なんだと気が付いた




そりゃ男爵わたしが迷惑をかけられるのも納得だ



貴族と言うのは天性の加害者を意味するものなんだ


実感した

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