123 ヘッドアッシュ劇場(その1)
舞台になっているスワンプラット男爵の寄り親のアッシュ子爵の寄り親の貴族様がヘッドアッシュ伯爵がお出ましです
早い話、係長、課長、部長の部長ですね
いつの時代も階級社会は健在です
男爵様目線です
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「マクフィアンナの次男は元気だな」
ヘッドアッシュ伯爵様が椅子の背もたれに寄りかかり、足載せ台に片足を載せ、パイプで旅人の葉を吸いながらリラックスした姿勢でそう言っていた
・・・スワンプラット男爵の家なのだがまるで伯爵家のように寛いでいるのをみるとなんだかな~、という気になってくる
まあ伯爵様からすると男爵なんてカスなんだ
目に入っていないだろうがな(涙)
気にいらないとプチっと潰せる程度の存在
居ても居ないのと同じメイドと同じ存在だろう
・・・人生ってなんだろう
当然子爵様も同様だ
その庶子と男爵家当主のどちらが上か伯爵様に聞きたくなるな
いや空気だから下か?
「・・・はっ、伯爵様におかれましてもご健勝のようでお喜び申し上げます」
言われたバードは微妙な返事だった
まあ庶子の元平民だからこんなものだろう
でももう少しウイットに富んだ貴族の会話を学ぶべきだと思う
まあそんなバカなんだからミエミエの罠にかかって男爵領にコナかけてくるんだろうがな
いや、騎士団系の貴族のマクフィアンナ子爵だから脳筋なのは仕方ないのかもしれない
・・・そういえばどこかのバカは婚約破棄騒動の時に無実の令嬢を床に抑えつけていたな
大体、ヘッドアッシュ伯爵が被護している大地の歌商会に手を出すなんてバカだとしか思えない
男爵領でクソを撒いて農業をするから男爵が相手だと勘ちがいしたのだろう
うちは子爵家だから格から言って負けるわけがない
大体そんな所だろう
目に見える分しか見ない
いや自分の見たい景色しか見ない
典型的な貴族
本当に愚かだな
まあだから男爵家に前触れもなく訪れて
「襲撃犯を寄越せ」
なんて言えるんだ
犯人がなければどうにかなる
所詮はそんな所だろう
まあ庶子とはいえ子爵の看板を盾にされたので男爵は手も足も出なかったしな
普通ならば負け一択
だからオレは逃げた
勝算はなかった
ただ逃げ出しただけ
でもさ逃げ出して判ったことがある
誰が文句をいうのか、と
いや子爵様の庶子は文句を言うよ
でもそれだけ
罪を断罪できるわけはない
男爵は子爵に負ける
それは摂理だろう
でもどうやって、と自問してみた
精々夜会とかで会って子爵様にイヤミを言われるくらいか?
噂が出回って肩身が狭くなる?
まさか国王から断罪されるとかはないだろう
・・・なんだいつも通りじゃん
火のない所から煙が出るのが貴族の日常茶飯事
そう思うと大したことはない
だから嫌なことから逃げてみた
なにせ犯人はこちらの手の中だ
やれるものならやってみやがれ
いざとなったら犯人を消して証言をねつ造だ
文句を言ってきたら国中に正義をまき散らしてから来やがれと言ってやる
そんな気分だった
そうしたらなぜだか寄り親の寄り親の大貴族であるヘッドアッシュ伯爵様が男爵家に来た
「もう少しで着くよ(意訳)」
ときちんと前触れまで出して、だ
訳が判らないけど出迎えると
「時間稼ぎ御苦労」
と意味不明の労いの言葉を貰った
・・・一体男爵が知らない所で何が起こっているんだ?
問いただしたい気もちで一杯だ
意味が判らんがそこは腐っても伯爵家
いや腐ってなくて有能と名高いけど
問いただすことはできなかった
・・・誰か説明してくれ
そう思うが言えない男爵
訳も判らず歓待して伯爵様が男爵邸に泊まるからとバタバタしていた
そしたら伯爵様はなぜか子爵様次男との話し合いに参加していた
椅子にふんぞり返って旅人をスパスパと吸っていた
・・・男爵はどうしたらいいのか教えてくれ
それと一体何が起こっているのか教えてくれ
大声で文句を言いたい気分で一杯だった
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男爵様はあまり聞かされていないようですね
完全に情報不足でふりまわされていますね
御愁傷様です




