121 スワンプラット男爵の苦労(その6)
スワンプラット男爵目線です
村に視察にきています
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「この風呂はいい、そう思わないかね」
隣に座っている大地の歌商会の会長に話しかける
「・・・はい」
どうやら戸惑っているようだ
すまないね
仕事の邪魔をして
いや一緒に風呂にはってもらって
まあ災難だと思って諦めてくれ
何かあったら力を貸すからな
なんで男爵なのに大地の歌商会が村に作った風呂に入っているかというと風呂のせいだ
こんないい風呂を独り占めというのは如何なモノだということだ
初めて視察に来た折、風呂を見つけたんだ
貴族でもめったに入らないものがある
入るだろう
貴族だからといって毎日風呂に入れるってものでもないんだよ
薪代だってバカにならん
男爵は割と貧乏なんだ
貴族だからといって誰もが贅沢している訳ではないんだよ
ところが視察に訪れてた村では毎日風呂に入っていた
クソを撒くと臭いが身体に沁みつく
あと病気になりやすい
だから綺麗にする
・・・もはやどこからつっこめばよいのやら
ヘタな貧乏貴族より優雅じゃないか
もちろん大地の歌商会の会長の一番風呂にお邪魔した
まあ風呂と言っても蒸し風呂だったがな
なるほどと思ったな
これならお湯が汚れることもない
おまけに蒸し風呂だから一度に多くの人間が入れる
感心したぞ
風呂に入った後は川に飛び込んだ
熱い身体が冷やされて良い気持ちだ
貴族より良い生活しているじゃないか
風呂に入っておかげで肌がつやつやになった
視察が終わって館に帰ったら大変なことになった
メイド長の目がクワッと見開いていた
目力が凄かった
そして尋問が始まった
ツヤツヤの肌になった理由を吐け
・・・男爵って一番偉いはずだよな
その後は
風呂に(私達メイドも)連れていけ
だった
他のメイドはいつも通りの澄ました顔でメイド長の後ろに控えていた
だが無言のプレッシャーが凄かった
最初は
週一で視察にいくから数人を連れて行くよ
だったが最後は
毎日連れて行きますから
になった、いやさせられた
・・・女性の美に対する執念を見たような気がする
男爵って一番偉いんだよね?
まあそんなわけで商会長には迷惑をかけてすまんと思っている
でも男爵が入らないとメイドが入れないんだよ
一度
「メイドだけで村に行けばいいんじゃね?」
と言ってみたんだが
「男爵を差し置いてお風呂には入れません」
と叱られた
まあ身分社会だからな
おかげで連日通うことになった
あれ子爵次男か忘れているような気がするのは気のせいか?




