100 閑話~魔女と使い魔とその下僕(その3)~
主人公サラと、男爵様の私設執事兼主人公からのスパイと、スラムのボスの話です
目線はクソを使った肥料で農業をやらされているスラムのボスです
今回のボスは一味違います
さすが主人公(の一人と思われている)だけのことはありますね
本当は主人公の下僕@作者の設定 なんですけどね
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「53の貴族家からの依頼をはねつけて悔しがらせましょう」
オレは自信満々でそう言った
スラムのボスであるにもかかわらず魔女にドヤ顔で言い放つ
オレはこの瞬間世界で一番勇敢な人間になったと思う
・・・あるいは一番の大バカ者?
オレ、大丈夫だよな?
粛清されないよな?
心臓がバクバクしてきた
いやね、オレはタダの下僕なんだけどね
目の前で魔女が手下の男爵家と悪だくみしていてもただ立って聞いているだけ
そうしたら
「あら、ボーっとしていて暇そうね」
いきなり魔女が言ってきたんだ
「大丈夫です!
ちゃんと聞いてました!」
ビシッと直立不動になって答えた
もちろんちゃんと聞いていたとも
魔女を目の前に気を抜くはずがない
山で熊に出会ったら死にもの狂いで逃げるだろ?
それと同じだ
魔女の機嫌を損ねただけで死ねるからな
だから
「私の方も53の貴族から声がかかったらはねつければよろしいので?」
逆に提案してみた
ココだけの話、魔女は自分の命令のまま動く部下が好きだ
たとえば言われるままクソを集めて畑に撒くヤツとかだ
オレ達が(イヤイヤ)働くのを見てすごく良い顔していた
・・・天性のいじめっ子だよな
でも最近になって判ってきたことがある
魔女は自分から動く部下はもっと好きだ、と
まあ目の前の執事のことだけどな
魔女に救われたらしく、忠誠心がハンバない
底辺の生活していたはずなのに貴族のマナーを身につけて男爵家の執事をしているらしい
執事をしながら得た情報を元の魔女に向かって提案をするんだ
アノ伯爵は使えそうですから使い潰しましょう
あの家の娘が30も年上のジジイに嫁ぐを嫌がっているので『月の雫』を高値で売り付けてやりましょう
あの家の男どもは女好きの下種野郎ばかりですから『うさぎ狩り』をやって取り入りましょう
・・・絶対に四六時中、貴族を陥れることを考えてやがるよな
言うたびに執事は優遇されていくんだ
そりゃ見習わなければ損するというものだ
だからオレも逆に提案をしてみた
だって魔女には敵がいるらしく、事あるごとに足を引っ張っているからな
隠していないから提案は楽勝だ
魔女は結構気前がいい
言うことを素直に聞く従順な下僕には金やら女やら酒やらが振舞われる
まあクソを撒いた畑の農作物の半分を分捕るんだ
金は腐るほどあるだろう
・・・今までの倍以上の収穫があるからときっちり半分を持って行く魔女
このままクソを撒く範囲が国中に広がると、今の国の収入と同額以上を手に入れることになるのではないかと思っている
そりゃ今から金払いもよくなるだろう
でも今のままだとなんかあると切り捨てられるのではないかと思っている
なにせ魔女にとってオレ達はケツを拭く紙みたいなものだ
使い終わったら捨てられる
後腐れなくしっかり処理されるだろう
これは日頃の言動からそう予想しているんだが結構正しいと思っている
だって貴族が破滅しても少しも可哀想とか思ってなかったからな
・・・絶対に血の色は緑だよな
使い捨てられるなんて冗談じゃない
だから捨てられないように頑張ることにした
・・・実は部下達と酒を飲みながら話し合ったんだよ
ちなみに酒を飲んだのは魔女の恐怖に対抗するためだ
シラフのままだと魔女に気後れして全然アイデアが出なかったんだよ
反抗する気があると思われたら、みんなまとめて処分されるせいだからな
魔女の反応を見るとどうやら正解だったらいい
頑張った甲斐があったというものだ
なお敵を完膚なきまでに叩き潰すのはダメらしい
前に魔女が直接手をまわして一人完全に潰した後に言っていた
「あっさり潰したから気が晴れないわ」
・・・魔女の報復に限度というものがないらしい
だからイヤガラセの提案をした
この後、オレは大地(の歌)商会の会頭となり国中にクソをまき散らす予定だ
作物の収穫量を倍にする予定とも言う
当然のことながら魔女の敵である53の貴族はその恩恵から外される
するとどうなるか?
「うちの領地で(クソを撒いて収穫量を倍に)やってみせよ」
と貴族が上から目線で言ってくる
絶対に言ってくる
貴族と書いて『子供同然のわがまま者』と読むからな
自分が損をして人が得するのをガマンできない人種だ
偉そうに命令してくることだろう
その命令を拒否して悔しがらせようというわけだ
そしてその顛末を聞いた魔女が喜ぶ
・・・性格が悪すぎだよな
え?
スラムのボスなのに情けない?
いいんだよ
人生、生きていればどうにかなるというものだ




