99 閑話~魔女と使い魔とその下僕(その2)~
主人公サラと、男爵様の私設執事兼主人公からのスパイと、スラムのボスの話です
目線はクソを使った肥料で農業をやらされているスラムのボスです
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アマン商会会頭のサラと男爵家の執事が悪だくみをしている
スラムのゴロツキの頭をしているオレの目の前だから違和感がありまくりだ
本当はやめて欲しいんだが言えない
実際にオレは下僕なんだからな
こちらからちょっかい出して返り討ちにされた
そして誰もが嫌がるクソまみれの仕事を押しつけられた
・・・本当に下僕だよな
現在はさらに酷くなっていたりする
あれはちょっと前のことだった
魔女がある日訪ねてきた言った
「あなた方、今日から市民よ」
「は?!」
間抜けな声を出したオレは悪くない(はずだ)
なにせ魔女からのお仕置きがなかったからな
・・・魔女に無礼を働いたらその場で処分で人生がオシマイなんだよ
お仕置きをされる代わりに目の前に羊皮紙が付きつけられてた
見ると本当に市民になっていた
それも部下共々だ
スラムの人間が市民になるなんてありえないだろう
文句を言いたい
いや言わないけどな
ここで言えるのは自殺志願者だけだ
まあ金があればどうにかなるとの噂がある
だが部下共々だとどんだけ金を使ったのかと言いたい
オレ達には多分一生かかっても無理な金額だぞ?
請求されても払えないからな
魔女曰く、
クソを使った農法を御貴族様の領地で実施するために『大地の歌(SOE)商会』を作ったそうだ
オレはその会頭、そして部下達はその商会員
スラムの人間は他嶺にいけない
でも市民ならば堂々と大手を振って行ける
「これで国中で仕事できるわね」
と魔女が笑って言った
どうやらそのための市民らしい
だからこちらに請求はこないらしい
・・・こないよな?
さらに話を聞くと ~正確には決まったことが通達されるだけだが~ 他領のスラムの人間を集めて使うことになっているそうだ
クラクラクラ
眩暈がした
オレ達SOE商会(以下、大地商会)は他嶺の御貴族様の部下の部下の扱いだそうだ
クラクラクラクラクラ
さらに眩暈がした
スラムの人間が御貴族様の部下?
冗談も大概にしろと言いたい
いまだかつて聞いたことが無いぞ?
スラムの人間をクソを撒く畑がある村に住まわすための家を作れ?
クラクラクラクラクラクラ
さらに仕事が増えていた
そういえば臭いが身体に付くという苦情があったわよね?お風呂を作っても良いわよ、と丸投げもされた
クラクラクラクラクラクラクラクラクラ
いっそのこと殺してくれと思った
ここで風呂と言うのは蒸し風呂だ
貴族のようにお湯を張った風呂はさすがに無理だ
だから金がかからないように地面の下を大きく掘って大きな甕で水を焚く
湯気が上の小屋に充満する
そして十分に暑くなったら近くの川や池に飛び込むやつだ
この国ではほとんど見かけないタイプだな
いや実際にオレもみたことがない
スラムの人間は川に入って水浴びだ
だが王都の近くの村でクソ撒いて畑を豊作にした時のことだった
あの時あまりの臭さに苦情が殺到したんだよな
村人とか商人とかから
実際いスラムの人間もオレの部下も酷い臭いだった
近寄ると臭いで鼻の奥がグーパンチされたように痛かった
そりゃ苦情の一つでも言いたくなるというものだ
そこで魔女が言い出した
遠い異国の風呂を作りましょう
言うのは簡単だが作る方は大変だった
なにせ見た事も聞いたこともないものを作るのだ
半信半疑
でも魔女が直接出向いて指示するので誰も逆らえない
・・・逆らったらその場で死ぬからな
でも使ってみると結構気持ちが良かった
臭いも取れたしな
オレも使ったのは秘密だ
でも薪をかなり使うんだよな
その確保は大変だった
山の方にしか木はない
そして木を切り倒してもすぐに薪にできるわけではない
半年くらいかけて水分を飛ばさないと火が付かないんだ
家を建てる木材も同様だ
手に入れるとなると足元を見られるだろう
以前風呂を作った時にどれだけ苦労させられたかを思うとクラクラしてきた
仕事がドカンドカンと山積みになったのだ
泣いてもいいだろうか
もっともオレの苦労なんてそっちのけで、魔女が男爵の執事に言っていた
「貴族との交渉をお願いできるからしら?」
魔女は表に出ないつもりらしい
「あの方々からの依頼は受けないとのことでよろしいですか?」
男爵の執事が言う
「ええもちろんよ」
魔女が答えた
「「ふっふっふっ」」
二人して嗤っていた
・・・スラムのオレの拠点で悪だくみをするなと言いたい
どうやら魔女には敵がいるらしい
そして『旅人(の葉)』をそいつらに売っていないようだ
嫌がらせというやつだ
直接言われてはいないが、今までの会話からそうなんだろうと思う
そしてそいつらは今回の農作物倍増計画からも外されるようだ
嫌がらせのために国レベルの政策を自費で立ち上げるとは呆れて物が言えない
いっそのこともう国にとり入って仕事をすればいいんじゃないかと思う
まあ魔女は貴族を放逐されたらしいから無理だろうがな
しかしこんなのを手放すとか貴族はバカでないないだろうか
国レベルの背策ができるだけではなく、年単位で復讐ができる
敵に回すと厄介すぎるだろうにと、貴族達の方を心配した
まあ、実際には自分の心配の方が先なんだがな




