8時限目 雪菜先生とコンプライアンス
今回は少し長いです。若干シリアスっぽいです。
部室では
「 今日は品川さんお休みですか」俺は雪菜先生に聞いた。
「そうね。クラスの子との約束があるって言ってたわ。中野君。もしかして気になるの?」雪菜先生は紅茶を飲みながら答えた。
「まあ、気にならないと言ったら嘘になりますがクラスの人間関係も大事ですからこういうこともありますよ」
「そういえば、横須賀さんは?どこへ、行ったんでしょう」俺は話の流れで聞いた
「シノンちゃんなら魔術士協会での集会があるからって帰ったわよ」
「先生、そういう理由でよく部活を休むのを認めましたね」
「シノンちゃんは校外のお友達と用事があるからって言いたかったと思うから特に止めなかったのよ」
「うちの部活は、基本強制じゃないから楽でいいけどみんなそろう時と来ない時の差があるわよね」真希は数学のプリントを熱心に解いていた。
「そういえば先生。うちの部活って人文社会科学研究会って立派な名前あるのに遊んでばっかりですよね」俺は、前から聞こうと思っていた質問をしてみた。
「まあ、文化祭とか季刊誌出してるからいいんじゃない。神田くんと真希ちゃんはどう思う?」
相変わらず雪菜先生はゆるく答えた。
「僕は特に不満も無いですし季刊誌のレポートをけっこう楽しみなんですよ。テーマが自由なのでみんな面白いテーマ選ぶから見ていても面白いですね」神田は先生の方向いて笑顔で応えた。
神田は、けっこう物事を突き詰めて考えるのが好きだ。この間は幼なじみか年上のお姉さんかで議論をして白熱したくらいだ。ちなみに神田は幼なじみ派だった。
「私は、このくらいがちょうどいいと思います。バイトと帰宅部で過ごすつもりだったけどそれだけじゃ物足りないなって。アニメとかマンガで見るゆるい部活ライフもいいと思ったんですよ」真希は、実は隠れオタクなのだが部室ではオープンだ。
「2学期には文化祭あるから夏休みにはテーマ探しもかねて合宿とか考えてるから楽しみにしててね」雪菜先生は楽しそうに言った。
「こんなところにいたんですか?三鷹先生」
「先輩、あ、学年主任。どうされました」
「いや、今年度の予定表の作成をパソコン入力してもらいたいんだけど頼めますか。あと、会議の議事録の作成もついでにしておいてください」
「申し訳ないですが部活の顧問としての業務があるので他の方に相談されては如何でしょうか」
「でも、三鷹先生。組織の一員として物事を考えてください。この仕事が学校運営に不必要な仕事だと思いますか?」
「必要な仕事であることは理解していますが職務の性質上管理者が行う物だというものであればそれは管理者が担当するのが適切ではないかと考えられます」
「業務中については上司の指示が優先されるんだから私の担当部署にいる三鷹先生は私の指示に従ってもらう必要があります」
「仰られていることは分かりかねます。しかし、一部の職員に仕事が集中する現状でさらに負担が増えることは職員のメンタルヘルス上良くないのではないでしょうか」
「いいから、細かいことはいいから片付けてください。勤務成績に影響しますよ。話はこれでおしまいです」
「恫喝ですか?」
「先輩はいつからそんな自分勝手な人になったんですか?」
「昔はあんなに熱心で理想の教育をしたいんだって言ってたのに」
雪菜先生は悲しそうに言っていた。
「何を言っているんですか?」
「私は、職務上必要だから言っているわけでそれを恫喝というのは言い過ぎなのではないですか」
「それに昔のことを蒸し返すなんてくだらないですよ」
「本郷先生いくら何でもそれは苦しい言い訳ではないですか」
突然部室の入り口に教頭先生が現れた。
「学生時代の先輩後輩の関係を利用して頼みやすいという理由で自分の仕事を他の誰かに肩代わりさせて楽をしたいだけではないですか?」
「実際評価するのは私たち管理職と人事権を持った理事会です」
「パワーハラスメントが悪いことだと社会的にも認知されているのに生徒の前でよくそんなことができますね」
「申し訳ありません。返す言葉がありません。」本郷先生はすぐに頭を下げた。
「本郷先生。ご自身の発言と行動には十分気を付けてください。職階が下だと言って自分の命令を聞いて当然で何をやっても許される訳ではありません。相手は人間なんです。対等な人格を持った存在だということを忘れないで接してください」
「三鷹先生には辛い思いをさせてしまい申し訳ない」
教頭先生の話が終わると本郷先生は下を向きながら苦い顔になった。
「分かりました。以後気を付けます」平静を装いながら本郷先生は教頭先生に返事をした。
「私は、職員室に戻ります」
教頭先生は本郷先生を連れて職員室へと戻っていった。
「タイミングよく現れたわね。隆先生。教頭先生になってもかわらないなー」雪菜先生は小さく呟いた。
「教頭先生よく来たわねー。ちょっとすっきりしたわ。あと若い顔してたわね。とても40代には見えなかったわ」真希はとりあえず感想を言っていた。
「偶然にしては出来すぎてるな」俺は少し含みを持った言い方をした。
「見ていれられなかったので私が呼びました」
「あ、板橋先生。いつの間にいたんですか?雪菜先生が少し驚いている」
「あの、わりと始めの言い合いのところからですね。ちなみに隣の教室の内線を使いました」
「毎回できるわけではないですがこれで少しはマシになるといいです」
「さすがに教頭先生が注意したんですから大丈夫でしょう」俺は無事終わってよかったと思った。
「いえ、私がサラリーマンをしていた頃はこういったことがよくあって、その腹いせに嫌がらせしてくる輩がいます」
「ただ教頭先生は理事会の有力者のご子息なので本郷先生もひどいことはできないと思います」
「大人になっても大して変わらないですね。力を振りかざして気にくわないことは排除していく自分の事しか考えられない人達は。神田は目を細めて言った。
「話は変わるけど今の社会だと特に会社といった営利組織になってくると利益を上げる人が優秀だと評価されて出世していくんだよ」
「そして、出世するにはどうしても競争に勝たないといけないんだ」
「競合会社だったり、同僚や社内の人間だったり、他人を蹴落としてでも上に行きたいって人が今の社会は出世しやすいんだよ」
板橋先生は苦い顔をしながら言った。
「つまり、自分さえよければ他の事はよくて他人を平気で利用するし、場合によっては蹴落としても心が痛まない人が今の社会で評価される人材かつ出世して権力を持つってことになるかしら」
雪菜先生は言いづらそうに言った。
「あんまり生徒には聞かせたくなかったけど多かれ少なかれこういった理不尽があるってことなんだよ」と板橋先生はまとめた。
「だけど、そんな人には一時的には成功するかもしれないけど長い目で見てその人の人生が幸せかどうか。仕事以外の大切なことや時間が持てるのかは分からないわ。私達もまだ分からないことが多いわ」と雪菜先生は言った。
少なくとも俺は大人になるってことが我慢と妥協の結果にはなって欲しくないと思った。
カラオケ店にて
では同志諸君報告して頂きたい。
同志委員長の声が響く。
続く
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回からまた赤くなります。




