二章 暗闇の中で
奇妙な女性は語り出す
「ええ。お願いします。」
頭の中で何かのスイッチが切れた音がした気がします。
躊躇なく頷き、大太刀を受け取ります。
刹那、身体の中を何かが駆け抜け、蹂躙される感覚があった。内側から強烈な不快感と異物感、そして嘔吐感が膨れ上がり、身体の中身を全て吐き出してしまいたい衝動に駆られたが、彼女はその全てを無視して受け取った。
「え…は?」
混乱しているのはむしろ、持ち掛けてきた女性の方ですね。
「いえだから、お願いしますって」
「え〜…ごめんちょっと待って君予想外だよ…普通ならここで、悩むようなら首くらい斬り捨てて、『君には現世は向いていない。来世で頑張れ!』ってなるか、大太刀に触れた時点でさっきの人みたいに人斬りゾンビになるはずなのに…君何者?」
「花の女子高生ちゃんですよ〜…ってか、確信犯かつ常習犯ですか。しかも生還する選択肢ないし…さっきの人も貴女が?」
「変に冷静だし…さっきまでの取り乱してた君はどうしたのさ。あんなの、普通ならトラウマレベルの体験でしょうに」
「分かっててやったんですか。相当悪質ですね。いやもうなんか超常現象過ぎて一々戸惑うのがめんどくさくなったと言いますか」
「やっぱり只者じゃないよね君」
「人の事は言えませんよね」
「まあ、適合者が出たのはいい事か…な?取り敢えず、約束通り『君にあった世界』に案内してあげるとしよう」
「詳しい説明お願いしていいですか?具体的には私が切りつけられた理由の辺りから。」
「ほんと神経太いね…」
「JKに『太い』とか禁句ですよ」
「あー、はいはい。えっとまず、君が切りつけられた原因は、『そこに居たから』です。」
「理不尽にも程がありません?」
「そういうものだから仕方ないの!」
「んじゃ次です、私が生き残った理由は?」
「ここは説明長くなるから省くね。」
ふざけた事を抜かすので、取り敢えず太刀を首筋に肉薄させてみました。
「あ、うんちょっと待とうか。それは私にも効いちゃうから。ストップストップ」
「で?なんですって?」
「えっとね、人が死ぬ時って、魂が消滅し始めてから完全に消えて無くなるまでの間に、若干タイムラグがあるの。その瞬間に、一部消滅した魂の隙間を埋めるように、周りに浮かんでた分霊が入り込んで、魂の消滅を食い止めたってわけ!」
めっちゃ早口でまくし立てられた。ほんとに怖いらしい。
「実際良く分かりませんが、まあ説明をした事実は認めます。」
太刀を離すと、ひどく大きな溜息をついていました。冷や汗凄いですね
「君さ、適応速すぎない?何でそんなに人斬り包丁の扱いに慣れてるのさ」
「最後に」
「あ、無視ですか」
無視も何も、私にも理由が分からないのだからどうしようもありません。強いていうなら、『身体が勝手に動いた』としか。
「貴女は何者ですか?」
「お!やっと聞いてくれた!」
本気で嬉しそうですね。
「私こそはかの有名な女神であり全てである*******その人にゃんだよ!」
興奮しすぎて若干噛んでます。と言うかなんて言いました?
「え…何その『誰?』見たいな微妙な反応…普通に傷つくんですけど」
「いやほんとに誰です?って言うか聞き取れないんですけども」
「え!?……あっちゃー…この世界には伝わって無いのか…」
本気でガックリしてます。
「えっとまあ、『女神様』って解釈でいいんですかね?」
「うん…名前は…こっちの世界に直すと『アリュラス』であってると思うから…」
「それにしてもこの軽薄そうな人が女神ですか…」
「軽薄そうとか言うなー!こう見えてもちゃんと有能なんだからね!」
「『こう見えても』って、自覚あるじゃないですか」
「うるさーい!」
若干涙目になってます。この辺りで止めておきましょうかね。
「質問は以上ですよ。ありがとうございます。」
「はぁ…それじゃおくるからねー」
なんか投げやりですね
「◆△◇△◆○▲□□▽□□▽▲◆▲□□◎■▼□▽〇」
おお、何かそれっぽいです。全然聞き取れませんけど。
視界がモノクロになり、ぐるりと廻る。それが私がこの世界で見た最期の光景になった。
移ろう世界は泡沫の如く




