零章 いつものように
暗闇の校舎の中で、一つだけ。
煌々と明かりの灯る部屋があった。
夕日が沈み、暗闇に浸かった校舎の中で、一人黙々と作業をする少女が一人。
「はぁ…」
目の前に積まれた画用紙の束は、到底彼女一人に処理できる量では無いように思える。
少女は、数時間前のクラスメイトの言葉を思い出す。
「え!?この絵の期限明日まで!?どうするの!?」
「と、とりあえず残って終わらせるしか…」
「でも私今日予備校が」
「部活が」
「病院が」
「あ!たしか猫屋敷さんって絵が上手かったよね!悪いんだけど、人集めてやっといてくれないかな?」
「ほんとにゴメン!今度ジュース奢るからさ!」
「え…あ…」
なし崩し的に決められた当番。膨大な労力と時間を費やすであろう作業に協力しようなどと言う物好きや聖人は、クラスには存在しなかった。
たった一人で終わりの見えない作業。ある意味では拷問にも類される苦痛。
が、その作業は既に終わろうとしていた。
積み上げられていたのは、作業済みの画用紙の束。
「出来ちゃうから、任せられるんだよねぇ…」
そこに悪意があるのならば、彼女も怒ることは出来る。しかし、彼等が持つのは期待、信頼、信用など。
「彼女ならやってくれるだろう」と言う純粋な思考で、任せているのである。
だが、『出来る』事と、『苦もなく出来る』は=では結ばれない。
「もう、嫌になるな…」
その言葉はクラスメイトに向けたものか、自分に向けたものか、はたまたこの世界に向けたものなのか。
最後の一枚を仕上げ、荷物をまとめて家路につく。
そんな彼女をつける影が一つ。
明確な悪意の具現が、忍び寄っていた。
ヒタヒタと、ギラギラと。




