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はかいし えらび

墓石選び



実家の墓石は私が小学生の頃一度変えている。


古めかしい岩を削りました、という墓からよく見るタイプのツルッとした□色のピカピカした墓石になった。


なぜ墓石を変えることになったのか。

子供の頃は聞いてもはぐらかされていた。

高校の頃は「まあ色々ねー」の一言で察せ、という無茶な扱いであった。


そして今。

「アンタ、嫁に行った先の墓石の色を見るんだよ。〇色や昔のうちのタイプだったら変えるようにうまく持っていきなさい。

自分が還暦、出来れば五十、うーん、欲を言えば四十になる前に」


嫁に行く前、と言うよりは高校を卒業したあたりの私に母が言った。


「なんで〇色だめなの」

「〇〇で絶える。見ててごらん、きっとアンタが死ぬくらいになれば分かるよ。

これは自分の子供だけ、他の人には言うんじゃないよ」


私は元々嫁に行くつもりがなかった。

姉は田舎の自営業を継ぐつもりはない、と進学した先の都会から戻らないと宣言しているのだ。


対して私は昔から続く屋号を生かしてまた少し別な商売をするつもりで家から通える専門学校を選んで進学した。

見合いでもいいし、当時の彼氏でもいい、婿を取るつもりでいた。


そう宣言しているにも関わらず「嫁に行ったら」などという。


それから何年経っただろうか。

嫁に行ったら、発言から三年と経たず私は嫁に行き、子供を産んだ。


(後で知ったが)聞かされていない姉はまだ嫁に行かずにいる。

母はまだ姉にこの話をするつもりは無いのだという……



そして、言うなと言われた「色」と「原因」をぼかして書かせてもらったこの話。

今のところ「絶える」は大げさだが血縁者の死因にピタリと当てはまっているのだから恐ろしい。


血縁者から「実は〇〇で、」とカミングアウトがあると、ドキリとする。


生家と、母の実家、母方の祖母の実家、そして祖母の姉の家の墓以外の親戚の墓石は、

母の言葉を信じるならばアウトな〇色なのである。


閉鎖的な東北の田舎町。

働き者の嫁なら、みなとから。

美人な嫁なら〇〇から。

と具体的な嫁取りの言葉が昭和まで生きていた土地ですから、墓地にはあちこち親戚だらけ。

墓参りに行けばあちこち親戚の墓だらけなので、親戚の墓にも数本ずつ線香を供えて歩く。


母の言葉と、その墓参りで一度気づいてしまえばなんとなく恐ろしく感じてしまうものだった。


けれどなぜ自分の子供以外に言ってはダメなのか。

それを聞いてもいいのか迷っているうちにこの年になった。


ちなみに、嫁姑の関係にあたる私の母と祖母は少し遠いが親戚どうしである。

そして祖母の従妹は私の成果の隣に嫁に来ており、

祖母の姉も近所に嫁に来ている。


生家の近隣は、働き者の嫁より美人の嫁を欲していたようだ。




地域や血筋限定の言い伝え(?)なのかもしれない。しかし「〇〇」の疑いで再検査を受けに行き、結局なんでもなかった、とけろりとしている母と「〇〇」ですぐに亡くなっていった人たちを見ると

ただの戯言であると一蹴するのもしにくいものでありやはり何かあるのではないかと思ってしまう。



遺伝的なものを避けるまじないなのか、と思っていた。



しかし、嫁に行った先の墓石の色と、夫の母が「〇〇」で早死し、夫の祖母も今その〇〇であるという事実を知った時の私はなるべく早く墓石の色を変える方向に持っていきたいと思った。



たまたまだ。そう言い切ってしまいたい。

墓石の色と死因の調査を誰かして貰えたなら、是非ともその結果を私に教えて欲しい。


もちろん、その一家から一つの死因しか出ないーーそんな訳はないのでただの偶然だと言い切ってしまいたいのだが、実体験を伴うなんとも言えない気味の悪さがあり、

笑って知らなかったことにして良いものかと悶々としている現状である。

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