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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
これ、本当に乙女ゲームか?
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ただのロリコンじゃ無かったんだ?

ハント先輩に案内されて着いたのは、ワンフロアぶち抜いたような広い作業場だった。

ソコでは大勢の先輩達が、必死に魔法薬を大量生産していた。

よくクリスマス頃に見る、おせち作りに追われる料亭を取材した番組を思い起こさせる忙しさだ。


「ココが魔法薬系の作業スペースだよ。彼ら、入学式一ヵ月前から、ずっとポーションや治療薬創らされてて、なんか切ない」


どうやら入学式で怪我人や魔力切れを起こす人達の為に、一部の魔法科の生徒達と錬金術科のポーション系を得意とする生徒は、それぞれの学科棟にある作業場で、魔法薬の大量生産をさせられているそうだ。


「沢山作っても、お金に成るわけじゃないからタダ働きなんだよね。なんか切ない」


「え? 創ったポーションって売るわけじゃ無いんですか?」


「うん売らない。完成品は先生達が全部回収して行っちゃって、ちゃんと効果の有る物か、失敗していないかを確認した後に治癒室に納品されるんだよ。そもそも学院内では、それがどんな物であっても生徒間での売買は禁じられているからね。なんか切ない」


え・・・・・・。学院内での売買が禁じられてるって・・・。

じゃあ、ゲームのウルシュ君が学院内でアイテム売ってたのは、規則違反だったってことか?


ゲームのウルシュ君って、確かゲーム上では『ラブ☆マジカル』の学院内でアイテムを売ってくれる、サポートキャラだったのよね。

なんか色々有りすぎてゲーム知識が薄れて来てるんだけど、ウルシュ君については思い出せるわよ。


ウルシュ君は攻略やイベントに有利なマジックアイテムを、ミニゲームで稼いだポイントか課金で、売ってくれるキャラクター。定位置と言う物が無くて学院内を徘徊している為、見つけたらすぐに捕まえてアイテムを購入しないといけなかったのよ。

徘徊しているのを捕まえられなかった場合、イベントに装備が間に合わなかったりするから、皆うっかり買い込みすぎてたわね。

当時は、運営も考えたなって思ってた。


ちなみに学院の売店もあったんだけど、品ぞろえが微妙に違ってて、高額かつ効果の高い物は、ウルシュ君からしか買えなかった。

売店は、ポイントで回せるガチャや、ポイントで買えるアイテムの取り扱い。

ウルシュ君の場合は、ポイントで買えるアイテムも有るけど、それは売店で買うよりも高くて、取り扱っている商品の殆どが課金アイテムや課金ガチャ。と言う風に、課金勢しか用が無いキャラだった。


ちなみに、前世の私はウルシュ君に固執するあまり、チュートリアルの時しか売店を利用していない。

売店で買うのは、ウルシュ君への裏切りだと思っていたから、売店より高いけど、ウルシュ君の所でポイントアイテムの購入をしていた。


ゲームウルシュ君。ほのぼの癒し系キャラだと思っていたのに、超あこぎな裏商売やっていたんだね。

学院内を徘徊していたのも、裏取引の為かよ。見た目と喋り方で完全に騙されてた。

絶対ゲームウルシュ君、ラッキースケベなイベントが発生しても、動揺せずに『わぁ。ごめんねぇ~』って言って、困った風な表情浮かべるだけで済ませるだろうな。

私の横で耳を赤くしているウルシュ君を見習え。


元となった人物モデルが同じとは言え、育ち方でこんなに変わるものなのだろうか?

いや、よく考えたら、私と出会わなければウルシュ君は、あの豚の頭の呪術具を創る予定だったと言っていたから、道を踏み外す可能性もあったわけか。人生って、何が分かれ道に成っているか分からなくて怖い。


もし私が入学式で記憶を取り戻して居たら、今みたいにウルシュ君を好きに成ってたか疑問な所だな。

だってゲームのウルシュ君、知れば知る程なんかヤバそうなんだもん。

どんなウルシュ君でも大好きだよって言いたいけど、駄目だ。今のウルシュ君が良い。今のウルシュ君の方が好きだ。

もしも今、私の前にゲームウルシュ君と、今のウルシュ君が現れたら、私は確実に今のウルシュ君を取るだろう。


そんな事を考えていたら、ハント先輩は作業場の端に在る階段を、降りて行っていた。

慌ててウルシュ君と先輩の後を追い駆ける。


「この下の階が小型の持ち運びが出来るマジックアイテムを創る作業場だよ」


ハント先輩が階段を降りながら説明をしてくれる。

てっきりハント先輩の話す全ての語尾には『なんか切ない』って付くんだと思っていたけど、どうやら違うらしい。今回は切なくない様だ。


ハント先輩の説明によると

B1:魔法薬系の作業場

B2:小型、持ち運び型マジックアイテムの作業場

B3:中型マジックアイテムの作業場

B4:大型マジックアイテムの作業場

B5:小型~中型の武器・兵器系マジックアイテムの作業場

B6:大型の武器・兵器系マジックアイテムの作業場


と地下深くなるにつれて、開発されている物の危険度が増すらしい。


「上に立っている建物は、座学用なの?」


「ううん。あれは張りぼての様な物だよ。他の学科も地下に大事な施設が有ると思うよ。入学式や体育祭や文化祭のたびに壊されるからね。なんか切ない」


今回は切なかったか。

と言うか、この学院そんなイベントごとに破壊活動してるのかよ。ちょっとワクワクして来たぜ。

今回は完全に巻き込まれだけど、生徒に成ったら参戦できるんでしょ? なんか楽しそう。


「ところで大型になるほど、階下の方に在るけど、どうやって表に出すの?」


「卒業生が開発した転移装置で地上に出すんだよ。近距離しか転送できないけど助かっているよ。一応地上に出す為の昇降コンテナもあるけどね」


「へぇ。転移装置って有るんだ。私のお父様の部屋には、手紙を送れる程度の小さい転送装置が有ったけど、大型の物も開発されていたのね」


「君の横に居る、スネイブル商会の坊ちゃんのお母さんが、在学中に創ったんだよ」


「えっ?」


思わず横にいるウルシュ君を見上げると、ウルシュ君は苦笑いを浮かべて頷いた。

どうやら本当らしい。


「それホント? あの人ただのロリコンじゃ無かったんだ? 」


あ、しまった。ウルシュ君の母親をロリコン呼ばわりしてしまった。お義母様に成る予定の人なのに。

でも実際、はた迷惑な幼児趣味だしな。

彼女は目を離すとすぐ、幼女をどこからともなく拾って来るので、屋敷からほぼ監禁に近い外出禁止が出ていて、外出時もスネイブル商会職員から総力をあげて監視されている様な人だ。

彼女がなかなか姿を見せない理由は、表向きには虚弱体質だとか産後の肥立ちが悪いとか、いろいろ言われているが、一部の人間には彼女の困ったぶりは知られている。


だからかウルシュ君は、私のロリコン発言を気にした風も無く、話し始めた。


「だいぶ前にウチの母親が、イザベラがまだ幼い頃、イザベラを追いかけ回していた事が有ったでしょぉ?」


「うん。その所為でディアナ王国まで逃げるハメに成ったのよね」


ウルシュ君のお義母様は、幼女の頃の私をいたく気に入って、私の監禁騒ぎにまで発展する所だったのだ。

古龍捕獲用に開発途中だった檻を用意するなど、本気が過ぎてドン引きした覚えがある。

私が公爵令嬢という立場もあって、スネイブル家やウルシュ君のお父様は、私の監禁を阻止しようと躍起になっていた。

だけど、彼女の興味の対象は美形の幼児に限るらしく、我が子のウルシュ君に対して無関心を貫いていたので、それに対して腹を立てた私が、ウルシュ君を連れて国を飛び出したのだった。


ウルシュ君は子供の頃、母親と会えない理由や、会っても話も無く接して貰えない理由を、産後の肥立ちが悪い為だと周囲に聞かされていたらしいが、察しの良いウルシュ君が気付かない訳も無く、『あの人が悪いのは「産後の肥立ち」じゃ無くて「さんごのひだち」。一緒にしたらまともな妊婦さんに悪いよ』と皮肉気に言っていたのを覚えている。


だからだろうか。将来お義母様に成る予定とはいえ、正直苦手なんだあの人。

ゲームで見たウルシュ君が実は歪んでいるのは、あの人が原因の一端になっているんじゃないかと、少し疑っている。


「ディアナ王国から戻った後に、イザベラがウチの母親に『そんなに幼女が好きなら、自分が幼女に成れば良いじゃない!!』って滅茶苦茶な理論振りかざしながら怒ったの覚えてる?」


・・・ごめん。覚えて無い。何言ってんだ過去の私。暴論が過ぎるだろ。

なんか凄く怒った覚えはあるけど、何言ったかまでは覚えていなくて、返事はせずに視線を泳がせていたら、察したウルシュ君が話を続けてくれた。


「覚えて無いんだねぇ・・・。でも、それ聞いて母さん、本当に幼女に成る薬開発して、今、八歳位のお人形さんみたいな見た目に成っているんだぁ・・・。そんな感じで、興味の持ったものに関しては凄い実力発揮する天才型なんだよ、あの人」


まじで幼女になったのか。私の方は言った事すら覚えていないのに・・・

でもその薬、凄い代物なんじゃないかな・・・


「それって、ある意味若返りの薬だよね? そんな物創った事が知られたら、色んな所から狙われるんじゃないの?」


「『若返りの薬』じゃ無くて『幼女化の薬』だよぉ。三日で効果が無くなるから、その度飲まないと幼女の見た目をキープ出来ないんだぁ。それを飲むと、どんな筋肉質なオジサンだって三日間は幼女に成っちゃうんだよねぇ。だから若返りとは別物。悪用されそうだから、商品化はしないみたいだよぉ」


それ、応用すれば男に成れる薬も創れるって言う事だよね。スパイとか凄く欲しがりそうだ。

スネイブル商会のポールさんも、変装で色んな姿に成れるけど、身長的に幼女にまではなれない。

出回ったら本当に厄介な代物だと思う。

私、そんな薬が開発できる凄い人だったとは知らなかったとは言え、大変な事を言ってしまったのかも。


ダイジェスト化していた色々あった事は、こんな感じで時々思い出話として出て来る予定です(覚えていれば)

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