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悪役令嬢は、庶民に嫁ぎたい!!  作者: 杏亭李虎
カラーズコレクターと七大罪スキル
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あの人・・・何してるの?

本日2回目の投稿。読む順番にご注意下さい。

んーー。ギースのステータスを見た感想。

スキル《魔道辞典》は確かに凄いと思うけど・・・・・・


正直、前に見た姉のルーシーのステータスの方が凄かったぞ?


将来に期待するとしても、実際問題ギースがルーシーの年齢に成った時に、ルーシーに追いつけるかと言うと疑問。

確かにルーシーが言うように、ギースには魔術の才能があると思うけど、それはルーシーにも言える事だ。

さらにルーシーは、女性でありながら当主として認めてもらいたい気持ちが有ったため、血反吐を吐くような努力もしてきたらしいし(トレヴァー兄様談)


成る程。自分の方が実力が上だったからこそ、ルーシーは当主の座を諦め切れなかったのか。


まぁ、いいわ。

ルーシー問題は置いといて、ヒルソン子爵だ。


防御壁ごしにヒルソン子爵を見ては、スキルで検索をしているらしいギースに声をかける。


「ヒルソン子爵の禁術について何か分かった? 」


「それらしい禁術の名前と、その術者を倒す魔術の名前だけなら出て来ましたが、それが正しい情報かは判断がつきませんね。たとえ、それが正しい情報だったとしても、分かるのは名前だけです。その魔術の具体的な効果や、行使するための詳しい方法は載っていません」


ギースは残念そうに言うが、名前だけでも分かれば調べやすくなるだろう。


そして、ギースが検索した禁術の名称は・・・


魂喰い(グラトニー)


まんまかよっ!!

っていうか、それ、ヒルソン子爵の称号に載ってたよ!!

私、すでに答え知ってたんじゃねーか!! なんか悔しい!!


あれ? そういえば『グラトニー』って『暴食』っていう意味じゃなかったっけ?

豚のマスクが『魔力喰らいのマスク』別名『暴食の豚』だったり、やたら暴食関係出てくるな。

そういえば、『魂の牢獄』に必要な樽も『怠惰の棺』とか、七大罪系がちらほらと・・・


もしかして、『魂喰い(グラトニー)』に対抗する魔術も、七大罪系かしら?

そう予想して聞いた、『魂喰い(グラトニー)』の術者を倒す魔術の名称が・・・


地獄門(ヘルズゲート)


残念、七大罪系じゃなかったわ。

なんか七大罪系よりも物騒な名前の魔術だった。


名称を発表した後も、しばらく検索を続けていたギースだったが、残念そうに首を振って顔を上げる。


地獄門ヘルズゲートでも検索しましたが、詳しい内容は見つかりませんでした。僕が今まで見て来た書物には、載っていなかったようですね」


魂喰い(グラトニー)』と『地獄門(ヘルズゲート)』の情報が記載されていた書物は、過去に存在されたと言われている失伝魔法について書かれた本らしく、ほぼ神話や伝説みたいな物で、本当に実在したか怪しい魔法も多く記録されている物との事。

そんな実在したのかすら怪しい魔法を探し出すのは、難しいんじゃないだろうか?


でもなぁ~。なーんか聞き覚えが有るんだよなぁ『地獄門(ヘルズゲート)

前世で聞いたのかな? いや、今世? どっちだ?

なんかの映画か漫画のタイトルだっけ?

いや、そう言うのでは無かった気がする。なんだっけ?


思い出せずに、ウルシュ君なら知っているかと聞いてみる。


「うーん? 『地獄門(ヘルズゲート)』。聞いた事ないねぇ・・・。ところでイザベラ、なんかヒルソン子爵の様子がおかしくない? 」


ウルシュ君に言われてヒルソン子爵を見ると、防御壁に攻撃を加えるを止め、頭を抱え込む様にして上半身をお辞儀をする様に激しく上下に振っていた。

耳を澄ませると何かをブツブツ唱えているが、低くてうまく聞き取れない。


「ウルシュ君、あの人・・・何してるの? 」


「さぁ・・・僕にもよく分からないねぇ」


「ふぇ・・・怖いですぅ」


アリスちゃんの呟きに、ギースが無言で頷き同意を示す。


周囲に集まっていた魔術師や冒険者達もヒルソン子爵の行動を警戒し、固唾を飲んで見守っていた。


しばらく上半身を上下に振っていたヒルソン子爵は、頭を抱えたまま前屈姿勢で動きを止める。

そのまま微動だにしなくなった子爵の様子に、周囲がざわめき出した。

動かない子爵に困惑しながらも、彼が次にどんな行動に移るのかを見張り続け、そのまま10分程経過。

周りの人間の緊張が緩んできた頃、頭を抱えていた子爵の腕がブラリと落ちた。


もしや、つぎの身体に移ったのではないかと疑っていると、ヒルソン子爵は操り人形の様なユラリとした動きで上半身を起こす。

そして緩慢な動作で、頭にまとわりついていた豚マスクの残骸を剥ぎ取った。


表情は抜け落ちているが、ギラギラしたままの瞳を保ったヒルソン子爵の顔が露わに成る。

マスクに覆われていなかった部分が土埃で汚れ、まだら模様みたいに成った顔を気にする様子も見せず、彼は豚マスクの中に手を入れ、マスクの頭頂部に付いていた砕けた魔核を引き千切った。


残ったマスクの残骸を捨てると、彼は魔核を素手で握り潰し・・・・・・それを飲み込む。


「あ、イザベラ・・・なんか嫌な予感がする。少し防御壁から離れた方が良いかもぉ」


ウルシュ君の発言に聞き返す前に、ヒルソン子爵に変化が訪れる。

皮膚の色素が白く、薄くなってくると同時に、全身の血管がまるで透けて見えるかの様に浮き上がり、水分が抜けて行くかのようにやせ細って行く。


その変化を呆然と眺めていると、両腕を広げ、上半身をぞららせる様にして天を仰いだヒルソン子爵が咆哮ほうこうした。


ヒルソン子爵の咆哮に空気が震え、防御壁が振動し、防御壁を張る魔術師達の表情が歪む。

いつまで続くか分からない長い咆哮に、魔術師達が脂汗を流しながら、防御壁の保持しようと踏ん張る。


呆気に取られていたが、ウルシュ君の呻き声に我に返り、私も防御壁の強化の為に魔力を注ぎ込む。

防御壁が強化され、少しずつ振動が収まってきた頃、ヒルソン子爵の咆哮がピタリと止んだ。


周囲がホッとしたように息を吐く。

同時に、皆が口々に喋り出し、ザワザワと騒がしくなった。


「おいおい、今のなんだ? 」


「知らねぇよ、悪あがきじゃねぇか? 」


「おいっ!! 今のうちに魔術師連中にポーション配るぞ。ほら頑張れ」


「アイツ、魔核を喰ったぞ? なんだアレ、どうなるんだ? 」


「魔核を食べた人なんて、初めて見たから知らないわ」


「気ぃ抜いてんじゃねぇぞっ!! 警戒を怠るなよ?! 」


周囲のざわめきを聞きながら、自分の動悸を聞いていた私に、配られたポーションを飲み干したウルシュ君が真剣な声色で、話し始める。


「イザベラ、多分これで終わらないから戦闘準備していてねぇ。出来ればアリス嬢とギース様も、王宮へと続く道への進路妨害を準備してくれるかなぁ」


「ふぇ・・・。もしかして出て来るですかぁ」


アリスちゃんの言葉に、ウルシュ君が頷いた時、周囲から声が上がる。


「おいっ!! アイツ笑ってやがるぞっ!! また何かする気だっ!! 警戒態勢を取れっ!!」


誰かの声が言い終わらぬうちに、ヒルソン子爵は顎が外れそうなほど大きく口を開けると、深く息を吸い始める。

蜃気楼の様に空気が、空間が揺らぐように彼の口に吸い込まれて行く。

それは少しずつ強さを増し、渦巻くように、防御壁に込められた魔力と、それを保つ魔術師達のMPをごっそりと喰らって行った。


防御壁を強化していた私も、一緒にMPを吸い取られて行く。

朦朧とする意識の中で、バタバタと倒れて行く魔術師と、ウルシュ君の姿が視界に入った。

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