検索して貰う事にしようか?
防御壁を囲うように居た魔術師の人達に、ポーションを予備用も配り歩いてウルシュ君の元へと帰り着くと、アリスちゃんが泣きながら立っていた。
「ふえぇぇ・・・ベラちゃん。やっと会えましたぁ。クリス様と王宮まで行ったのにベラちゃん達が居なくてぇ、クリス様と一緒にベラちゃんを探しに行こうと思ったら、王宮の人達にクリス様が連れて行かれちゃったのですぅ」
まぁ、第二王子だしね。
一晩いなけりゃ当然王宮の人達も探し回るわな。
きっと、騒ぎが落ち着くまでは王宮から出して貰えないだろう。
「私も、そのまま王宮に居させられる所だったのですが、城壁を乗り越えてベラちゃんを探しに来たですぅ」
6歳の令嬢に越えられる王宮の城壁に思うところはあれど、まぁこの騒ぎだし、騎士達も出払っていて手薄だったのだろう。そうだろう。
決して、アリスちゃんが爆撃魔法で、制止する近衛騎士を蹴散らして来たのでは無いと信じたい。
「いっぱい引き留めてくる人達が居たのですがぁ、前にベラちゃんから教えてもらった『もえきゅん』とか言うので逃げてきたのですぅ」
違った。爆撃魔法じゃなくて魅了魔法のほうだった!!
魅了魔法って本来は足止めに使うものじゃ無いんだよ!!
確かに一番初めにそう言う使い方をさせたのは私だけど、それ、そう言う魔法じゃないからっ!!
色々と気になる事はあれど、それ以上に疑問に思う事があるので、先にその疑問を解消するため、アリスちゃんに問いかける。
「ところで、アリスちゃんの後ろにギースが居るのは何で? 」
そう、アリスちゃんの後ろにギースがついて来ているのだ。
ギースは少し不安そうな表情で、アリスちゃんの袖をつまんでいる。
「城壁を越える前に会ったのですわぁ。彼、発動中の魔法をけんさく? とか言うのが出来て、調べる事が出来る『魔道辞典』と言うスキルを持っているそうなのですぅ。だったら、豚さんの乗り移る禁術もそのスキルで分かるかと思いましてぇ」
それを聞いてギースの方に視線を向けると、彼は黙って頷いた。
さすが攻略対象、やっぱりチートスキルを持っていたのか・・・
ところで、城壁を越える前に会ったのなら、ギースも城壁を乗り越えた事になるのだけど、アリスちゃんはともかく彼はどうやって越えて来たんだろう?
「ねぇ、アリスちゃん。ギースを連れて、どうやって城壁を超えたの? 」
「ふえ? ベラちゃんが前にやったみたいに、『よいしょ』って投げたのですわぁ。ちょっと重たかったですぅ」
城壁の向こう側に向かって投げたのか。
しかも馬車とかの入れ物に入った状態ではなく、そのまま生身の状態で放り投げたらしい。
その時の事を思い出したのか、ギースは涙目になって震えている。
「アリスちゃん、昔はフォークとティーカップより重たい物が持てなかったのに、成長したんだね。頑張ってるね」
アリスちゃんの涙ぐましい努力に、少しジンと来てしまう。
これなら、クリス様は中々アリスちゃんのレベルを超えられないだろう。
まぁ、クリス様のスキルが《傲慢王》に変わった事により、常時発動はしないのだけど、念のためってやつだ。
さて、お喋りはこの程度にして、ヒルソン子爵の方を片付ける事にしよう。
周囲にどんどん魔術師団や冒険者ギルドから派遣された、魔術師たちが増えて来ているので、防御壁の持続時間の心配が減ってきたとは言え、そろそろ街中が活動しだす頃だ。
いつまでもここら一帯を封鎖している訳には行かない。
だけど、ここまで大掛かりかつ大人数に成ってしまうと、好き勝手に動けなくなるのよね。
誰か、状況を指揮してくれる大人が居てくれれば良いのだけど・・・
あと、私にも指示が欲しい。
私はリーダーシップに向かない特攻部隊系令嬢だから、上手に動かしてくれる司令官が居てくれたほうが助かるんだ。
普段はウルシュ君が手綱を引いてくれるけど、私達だけならともかく、この大所帯では6歳児の指示を聞いてくれる訳もなく。
とか考えていると、背後から頭のてっぺんを誰かに捕まれ、持ち上げられる。
ジタバタともがきながら、地面から引き離される私は、手の持ち主の正体を暴こうと背後に意識を向けた。
あ、ヤバイ。この背後から感じる怒りの波動に心当たりが有りすぎるっ!!
頭を片手で掴まれたまま抵抗するのを止め、ブラブラとぶら下がりながら、おそるおそると視線だけで背後の様子をうかがっていると、私を持ち上げる男、近衛騎士団所属の我が次兄、ダイモン兄様が低く唸るような、怒りで絞り出されるような声で問いかけて来る。
「ベラ、お前はクリストファー殿下を巻き込んで、一体何をしているんだ?」
ひいぃぃっ!!
修羅が来たっ!! 私が一番苦手な鬼が来たっ!!
「ち、違っ!! 私は巻き込んでないですっ!! クリス様とは、アンデッド騒ぎの最中に偶々出会いまして・・・ そのまま合流をっ」
「その後、王宮に帰せば良いものを、そのままクリストファー殿下を引き連れて中央地区から出て行っていたのはお前だろうがっ!! 」
「うっうぅぅぅ・・・・・・はい、そうです。申し訳ありません」
私が謝ると、ダイモン兄様は大きくため息をつき、屋敷に戻ったら躾と称して訓練させるぞと脅した後、私を地面に降ろした。
躾と称した訓練って何だよ怖い。
「そう言えば、クリストファー殿下が王宮に帰館後、騎士団長のご子息と近衛騎士達を引き連れて王宮内を大捜索されているが、一体何を探しているんだ? お前宛に、王宮内の棺の捜索は自分に任せて欲しい、と伝言を預かったが、お前が殿下に何か言ったのか」
あぁ、クリス様。王宮内から出られないから、王宮内で出来る事を引き受けてくれたのか。
そしてブライアンも手伝ってくれているんだね。有難う。
「その防御壁の中で暴れている、ヒルソン子爵が奥さんの魂が閉じ込められた棺を王宮内に隠しているの」
「ん? ヒルソン子爵は最近離婚して、元奥方はディアナ王国で再婚したんじゃないのか? 」
どうやら王宮内の近衛騎士団には、まだ情報が行き届いていなかった様だ。
ダイモン兄様にこれまでの経緯を簡単に説明し、これからどうすれば良いかの指示を要求する。
「よし、分かった。とにかく奴は陛下達がいらっしゃる王宮に、絶対に近づけるな。俺は近衛騎士だから街中については管轄外だ。俺は今すぐ戻って王宮の警備の強化と、棺の捜索を続ける。既に騎士団や冒険者達が集まって来ている様だから、彼らと協力しながら対応策が見つかるまでとにかく押し留めてくれ」
そう言うとダイモン兄様は、近くに集まって様子を見て居た騎士団員と憲兵に、公園から王宮までの直線距離の封鎖と避難誘導に行くよう声をかけて、王宮に戻って行った。全力ダッシュで。
ダイモン兄様、ココまで走って来てたんか。馬に乗れよ。
走り去って行くダイモン兄様の背中を見送った後、ウルシュ君とアリスちゃん、そしてギースに視線を向けて提案する。
「じゃあ、今の時点で出来る事として・・・。まずはギースの《魔道辞典》とか言うスキルに、”血縁者の魂を食べては、その体に乗り移る禁術”と、その対応策を検索して貰う事にしようか? 」
ギースは頷くと、口を開く。
「僕がこれまで目を通して来た書物に載っていれば、検索できますが、そうでなければ出て来ませんので期待はしないで下さいね」
《ステータス》
人族:ギース・ネイ・トーランド(6) Lv:17
HP:21/21
MP:78/80
身分:
ロゼリアル王国 トーランド伯爵家 長男
ロゼリアル王国 伯爵家嫡子
ロゼリアル王国 魔術師団長 子息
《職業スキル》
[魔術師][剣士の卵][呪術師]
[薬師][治癒士][神官][魔道学者]
《特殊スキル》
[魔道辞典]▽
《固有スキル》
[氷属性魔法][雷属性魔法][聖属性魔法]
[HP消費緩和][HP回復強化]
《スキル》
[魔力精密操作][魔力察知][火属性魔法][火属性耐性][水属性魔法][水属性耐性]
[風属性魔法][風属性耐性][光属性魔法][毒耐性]
[調合][速読][忍耐][持久力][採取][集中力][探索]
《称号》
[植物マニア][魔術マニア][動物マニア][魔獣マニア]
[魔物マニア][魔道具マニア][隠れモフモフ狂い][歩く図書館]
[魔道辞典]▽
一度目を通した書物を記録し、必要時に検索・閲覧する事が出来る。
情報の真偽は関係無くそのまま記録されるため、検索結果を参考にするかについては使用者の判断に委ねられる。
情報の上書きは出来ず、同じ物に対する情報でも内容が違えばそのまま記録されるため、検索内容の絞り込みが必要となる場合がある。
魔道辞典と有るが、記録される物は魔道に限らない。
あともう少しなんですけど、今年中にカラーズコレクター編終わらせられなさそうです。
正月休み中には何とか!!
今回のギースの鑑定結果から、スキルのレベル表記が消されています。
理由は、HP・MPに上限がないのに、スキルだけレベルの上限があるのはおかしいと思ったので。
生涯現役で行けば、どんな高みにも昇れるはず。老師とか最強の老騎士とか好きなのよ。
暇があるときにでも、今まで投稿分のステータス表記の修正を行います。いずれ。